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過熱するシドニー・ラーメン最新事情④

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過熱するシドニー・ラーメン最新事情

札幌ラーメンを代表する製麺所「西山製麺」
西山隆司社長・来豪インタビュー

 2018年9月、シドニー中心部、ワールド・スクエアにある人気ラーメン店「ずんど」が3日間限定で「西山ラーメン」に衣替えし、連日1時間待ち以上の大行列を作った。シドニーのラーメン・ファンの間に衝撃を与えた「西山ラーメン」は、北海道、札幌で世界30カ国・地域に麺やスープを輸出している北海道の有名製麺所・西山製麺のポップアップ店で、本場・札幌ラーメンを世界に広めることを目的としているという。そして今年、チャッツウッドにオープンした「ずんど」の2号店「ずんどサッポロ」では西山製麺を使った札幌ラーメンの提供を開始。視察に訪れた西山製麺、西山隆司社長を直撃した。
(聞き手:馬場一哉)

――西山製麺では、札幌ラーメンの普及をミッションに、日本国内だけではなく、シンガポール、アメリカ、欧州6カ国、アラブ首長国連邦、フィリピンなど、海外でラーメン作りの指導やラーメン店の開業支援を行っていますが、その背景にはどのような狙いがあるのでしょうか。

「うちが海外で最初に作った現地法人はドイツで、次がアメリカ、それもロサンゼルス、ニューヨークなどの大都市ではなくワシントンDC。そして3番目の現地法人を本年1月シンガポールに設立しました。多くの人に西山さんは展開が通常の日本のレストランと逆だねと言われます」

――確かに一般的には市場が大きいアジアから始めるのが戦略的に良さそうです。

「ええ、ですがまずうちは量を求めていません。単純にコストや味がどうということではなく、ラーメンの歴史や伝統、文化的価値も含めて本物を提供したいと考えているオーナーさんに協力したいと考えています」

――市場規模よりも熱量を重視されているわけですね。

「そういうことになりますね。弊社ではそういう情熱がある方には、ラーメン店開業に向けた全面的な支援を行っています。そのため、社内にはラーメン店と同じ特別な厨房を設けています。本気でラーメン作りを習いたい方に向けて、その厨房を使ってスープの取り方、麺の取り扱い、調理の仕方などを丁寧に教えます。そうした修行の行程を経て初めて本物のラーメン作りを修得できますし、技術だけではなく歴史なども含めて海外にラーメン文化を輸出できるようになると考えています。市場の開拓が一般と異なるのはそれらを重視した結果です」

――日本でも全国展開されておりますが、そもそも海外に目を向けた理由はどこにあるのですか。

「本物のラーメンという言い方を先ほどしましたが、実はラーメンというのは何を入れても良いんです。バリエーションの広がり方で言えば日本食の中で一番でしょう。すしの場合も、カリフォルニア・ロールなどいろいろとバリエーションが広がりましたが、ラーメンはもっと広がると思います。というのも、ラーメンは現地の食文化と融合できるからです。初期のラーメンは今から300年ほど前、江戸の末期に長崎の出島から入ってきました。そのため、日本の最古のラーメンは長崎ちゃんぽんだと私は考えていますが、江戸末期の段階ではラーメンは塩と豚骨をベースにしたチャイニーズ・ヌードルのままです。しかし、その後、横浜や神戸などに中華街ができ、そこで日本の和の職人と中国の職人とのマッチングが生まれました。それによって日本の食文化であるしょうゆがラーメンに取り込まれました。しょうゆラーメンの誕生です。その後ラーメンが全国に広がる中、札幌で味噌ラーメンが生まれました。今後はこのような進化・融合が海外で起きていくと考えています」

――ただ、そのためにはまずは「本物」のラーメン文化がベースになる必要があり、そのための指導が必要だというわけですね。

「その通りです。私の中でラーメンは4つに分類されます。日本のラーメンをしっかりと知り尽くしている『本物系』。ラーメンという名は語っていても日本人からすれば到底ラーメンとは呼べない『なんちゃって系』。そして、演出重視でお洒落な『フュージョン系』。今海外で流行っているラーメン店にはこの『フュージョン系』が多いですが、日本人が食べるとやはり違和感を感じる味も少なくありません。そして4つ目として私が注目しているのが『進化系』です。日本で味噌ラーメンや醤油ラーメンが生まれたように正当な進化を果たした、日本人もおいしいと感じるラーメンです。例えば既にローマでは『カルボナーラ・ラーメン』を出している店がありますが、なんちゃってではなく、日本人が食べてもめちゃくちゃおいしいものに仕上がっています。ローマは保守的ですから、麺と言えばやはりパスタです。そんなプライドもあって、パスタの要素をラーメンに融合させたのです。この分野はますます広がっていくと思いますし、僕はこのゾーンを増やしたい。最初に開業を支援したドイツのお店は『本物系』からスタートして、その後『進化系』を目指したいという思いを持っていました。私も同じ思いを持っていたため、お付き合いを始めたという形です。しっかりと思いを共有できたため、うちも投資を行ったわけです」

オーストラリア市場への開業支援

――現在、西山製麺の麺をオーストラリアで使っているのはチャッツウッドのずんどさんのみですが、今後は他のラーメン店にも提供していくお考えはありますか。

「『本物系』のラーメンを提供し、将来的にはオーストラリア人が誇りにしている食文化も取り込んだ『進化系』のラーメンをやりたいというような、熱意ある人との出会いがあれば、うちもどんどん支援させて頂きたいと考えています。ただ、うちは店舗展開やコストなどといったいわゆるビジネス的な相談は受け付けておりませんのでその点は悪しからず」

――おいしいものを提供したいという熱い思いを持っていることが大切なわけですね。

「はい。札幌に来て頂ければおいしいラーメン店の食べ歩きから、実際の指導まで行わせて頂きますし、いろいろ食べ歩いた上で、どういうラーメンを作りたいかディスカッションを行い、その味をうちの厨房で一緒に試行錯誤しながら再現していきます。私たちには経験がありますので『あのお店は多分、隠し味に○○を入れていると思う』などという推測などもアドバイスできます。そこでベースをマスターできれば、あとはお客様の方で進化させていくことができると思います」

――ずんどさんでは西山製麺の麺を使って札幌ラーメンを再現しているわけですが、食べられてみていかがですか。

「札幌とは素材も違いますし、水も違いますが大変おいしく頂きました。試行錯誤を繰り返すことで、オーストラリアの風土にマッチした更においしいラーメンに進化していくのではないかと期待しております」

――オーストラリアのラーメン市場をどのように捉えておられますか。

「実は5年ぶりくらいにシドニーに来たのですが、ラーメン店の数はかなり増えましたね。ただ、勢いがあると言ってもオーストラリアではまだシドニーだけという印象です。加速度的に勢いを増していくのはこれからだと思いますが、大きなポテンシャルを秘めていることは間違いありません」

――西山製麺では300種類ほどの麺を作られているそうですが、特徴的なのはやはり卵がしっかりと練り込まれ黄みがかった中太のちぢれ麺だと思います。また、加水率が高くつるつるとした食感も印象的です。

「麺づくりで大切なのは水なんです。同じレシピであっても水が違うと仕上がりが違います。アメリカの西海岸で製麺したことがあるのですが、水が硬いのでどうしても同じものは再現できませんでした。北海道の雪解けの伏流水のような、柔らかい軟水で加水率が高い麺を作ると、麺に粘りが出て麦の香りが出ます。うちの麺は札幌でしか作れないことが分かったので、今は現地製造はやめて札幌で作ったものを輸出しているわけです」

――なるほど。小売りでは東京マートさんでも売られていますし、札幌で作られた特別な麺をここシドニーでも食べられるのはありがたいです。最後に記事を読まれているラーメン好きの読者にメッセージをお願い致します。

「西山製麺は、日本国内で質を重視した麺を製造すると同時においしいラーメンをお客様と一緒になって広めるという使命を持っています。よりおいしいラーメンがオーストラリア全土に広がっていくように一生懸命頑張って参りますのでこれからもご期待くださいませ」

――本日はどうもありがとうございました。
(2019年6月4日、チャッツウッド、ずんどサッポロで)





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