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温泉にワイン、休日は心弾む楽しみの宝庫へ──メルボルンから車で1時間ほどのモーニントン半島

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日当たりの良いぶどう畑が広がるワイナリー「Montalto」

 メルボルン市内を出発し、ハイウェイを乗り継いで南下することわずか1時間強。そこに広がるのは、メルボルン市民に とっての、なくてはならない行楽地モーニントン半島(Mornington Peninsula)です。色濃い海に囲まれたユーカリが生い茂る広大な森に、とっておきの休日を満喫しに分け入ってみましょう。(執筆=原田糾、協力=ビクトリア州政府観光局)

ワクワクしながらハイウェイを南下

広大な施設内に数十もの天然温泉の露天風呂があり、34~42度に調節された湯船に浸かれる「Peninsula Hot Springs」

 美しいポート・フィリップ湾(Port Philip Bay)の東側を囲むように横たわるモーニントン半島は、東岸をウエスタン・ポート湾(Western Port Bay)、南岸をバス海峡(Bass Strait)に面する細長い半島。その大きさは鹿児島県の奄美大島ほどあります。

 マリン・スポーツやキャンプなどさまざまなアクティビティーが楽しめるフィールドが数多くあるだけでなく、州を代表する上質なワインの産地であり、また、多数の露天風呂がまるで日本の温泉の里を彷彿とさせる、国内でも珍しい温泉地としても知られています。

 子どもたちの学校が休みとなるスクール・ホリデーはもちろん、休日が重なるロング・ウィークエンドや、天気の良い週末は、この半島を舞台としたメルボルン市民のお楽しみのひと時となります。自転車からカヌー、サーフボードにボート、ダイビング道具、キャンプ道具、ゴルフ・セットに馬まで、さまざまな遊び道具を搭載した車が我先にとハイウェイを南下。各々の目的地へと続く出口でハイウェイを降り、森の中へと消えて行きます。

バス海峡を臨むゴルフ・コース「Flinders Golf Course」

 ハイウェイを降りた先に待っているその濃密な森に入ると、更に気分はグッと高まります。優しい木漏れ日が差すユーカリの大木のトンネルを目的地に向かってひた走れば、退屈になりがちなドライブもワクワクとした心弾む時間に変わります。

 途中、コアラ横断注意、カンガルー横断注意の標識がある地域を通る時はヒヤヒヤすることも。彼らが道路に現れるのは昼間よりも夜間の方が多いようですが、動物たちが暮らす森に分け入るのだから、油断は禁物です。

Peninsula Hot Springs

■住所:140 Springs La., Fingal, VIC
■営業時間:クリスマスを除く毎日5AM~11PM、11PM~2AM
■料金:大人$35~、子ども$25~
■Tel: (03)5950-8777
■Email: info@peninsulahotsprings.com
■Web: www.peninsulahotsprings.com

地元のビーチ・カルチャーに溶け込む楽しみ

ビーチ・ハウスが立ち並ぶマウント・マーサ(Mount Martha)の海でSUPを楽しむ

 半島の先端の街、ソレント(Sorrento)まで続くポート・フィリップ湾に面した西の海岸線には、夏の日差しが似合う可愛らしい海辺の街が連なります。長い砂浜には、ビーチ・ハウスと呼ばれるカラフルな小屋が立ち並び、その前は日光浴を楽しむ家族の姿でいっぱいです。

 メルボルンの夏は気温40度を超えることもしばしばですが、空気はカラッと乾いていてとてもさわやか。白い砂浜にビーチ・タオルを敷いてボーッと寝転んだり、火照った体を冷やすために冷たい水に飛び込んだりして、地元の人たちに溶け込んで海水浴を楽しみましょう。

 波穏やかな湾内ならではの海では、カヌーやスノーケリング、ダイビング、最近流行りのスタンドアップ・パドルボード(SUP)、風のある日にはヨットやウインド・サーフィン、カイト・サーフィンなど海辺のアクティビティーが楽しめます。

オーストラリア沿岸部にのみ生息するタツノオトシゴに似たシードラゴン

 長い海岸線から沖に向かって長く突き出た桟橋では、多くの人が海風を感じながら歩いていたり、子どもたちが元気に海にダイブしていたり、アングラーたちが熱心に釣り竿を投げ返しています。そのアングラーたちが一斉に釣り竿を畳み始めたら、魚を捕食しにイルカやアザラシがやって来たのかもしれません。運が良ければ、悠々と泳ぐイルカの群れや、デッキの上で日向ぼっこを楽しむアザラシに出会えるでしょう。

 桟橋の足元に目を向ければ、ダイビングやスノーケリングの絶好のスポットとなっています。シードラゴンやレザージャケット(かわはぎ)などの色鮮やかな魚たち、可愛らしいポートジャクソン・シャークや大きなエイと一緒に泳ぐことができます。

 ちなみにサーフィンを楽しむなら雄大なバス海峡を臨む半島の南海岸を目指すのがベスト。潮位や風向きがタイミング良く合えば、常に押し寄せる外洋ならではの荒波が、サーフィン上級者をも唸らせる美しいチューブ波に変わります。腕に自信のあるサーファーはぜひともグンナマッタ(Gunnamatta Beach)という1級ポイントを目指しましょう。

アウトドア派が通うべき場所

Cape Schanck の岬のボード・ウォーク

 オーシャン・スポーツ以外に目を向けると、この半島はゴルフやキャンプなど、その他のアウトドア・アクティビティーがいろいろと楽しめます。

 特に、何キロにも及ぶ平坦な海岸線沿いのコースの他にも半島内に張り巡らされたワインディング・ロードは、適度のアップダウンが続き本格的に自転車を楽しむサイクリストには打って付けです。放牧された牛や羊がのどかに草を食む牧草地、ぶどうやオリーブ、りんごやいちごといった肥沃な土地で栽培される果物畑などの美しい景色を眺めながら、飽きることなくペダルを踏み続けられます。

 トレッキング好きにも、お薦めのウォーキング・トレイルがたくさんあります。半島の南先端ケープ・シャンク(Cape Schanck)からポートシー(Portsea)の名所ロンドン・ブリッジ(London Bridge)までの30キロのルートでは、外洋の荒波、貝殻が細かく砕けてできた砂浜、干潮時に岩場に現れる自然のプール、岸壁に広がる低木地帯の壮大な景色が楽しめます。

ポート・フィリップ湾の一大パノラマが楽しめるケーブル・カー「Arthurs Seat Eagle」

 また、半島の標高の最高地点、アーサーズ・シート(Arthurs Seat)にも人気のトレイルがいくつもあります。この場所へはまず市内から続く高速道路をドロマナ(Dromana)の街で降り、街の裏手にそびえる305メートルの山の頂上、アーサーズ・シートまで続くケーブル・カー「イーグル(Eagle)」に乗り換えます。頂上のトレイルからの景色はもちろんすばらしいのですが、このケーブル・カーからのパノラマが特にお薦めです。

 ケーブル・カーが上昇するにつれて目の前には、陽光が反射して光り輝く雄大なポート・フィリップ湾、右手には遥か彼方に見えるメルボルン市内のビル群、そこまで延々と続く半島の森と海岸線の街並み、左手には半島の先端のソレントの街までの海岸線、そしてバス海峡の水平線が一望できる一大パノラマが広がります。約時速5キロというスピードでのんびり進むケーブル・カーに身を任せ、このまま天まで登るのではという夢見心地を味わってみて下さい。

Arthurs Seat Eagle

■住所:1085 Arthurs Seat Rd., Dromana VIC
■営業時間:火~金10AM~4PM、土~月10AM~5PM(※6月19~23日はメンテナンス作業のため休業)
■料金(往復):大人$29.50、子ども(4~16歳)$18.50 、家族 (大人2人、子ども2人)$79.50
■料金(片道):大人$22、子ども(4~16歳)$14 、家族 (大人2人、子ども2人)$59
■Tel: (03)5987-0600
■Email: info@aseagle.com.au
■Web: aseagle.com.au

クールクライメイト・ワインの里を巡る

モーニントン半島産のピノ・ノワールはエレガントな風味と複雑さのある味わいで有名

 この半島はクールクライメイト・ワインの一大産地として全国にその名を知られているほど、半島内にはワイン用のぶどうを栽培するぶどう畑が広がっています。クールクライメイト・ワインとは、近年、世界的に人気を集めているワインの種類で、海風が吹くような冷涼な地域で造られるワインのこと。その黒ぶどうの代表格がピノ・ノワール、白ぶどうの代表格がシャルドネやリースリングなどです。

 「涼しい」と言っても、必ずしも1年中セーターが必要なような気候を意味するのではなく、ぶどうの実が育つ夏季、夏らしい暖かさのある日中と気温が低下した夜間の温度差が大きいことが肝要です。西側と東側の両側を湾に挟まれたこの半島は、さわやかな海の空気がすぐ近くにあることで温度差が大きく、夜間にぶどうの木が休息し、ぶどうの成熟プロセスを伸ばすことができるそうです。成長期が長くなることで、アルコール度数の増加とは対照的に、エレガントな風味と複雑さのある味わいを持つ、特徴的なワインが生み出されるという訳です。

 半島には200を超えるぶどう畑、60以上のワイナリーがあります。この内、セラー・ドアを持つ50のワイナリーでは、テイスティングをしながらお気に入りのワインを購入することができます。そして、上等なワインに合う上質な料理を味わえるファイン・ダイニングを併せ持つワイナリーも、有名な「モンタルト・ワイン」を始め多数あり、週末はウエディングに利用するカップルにも人気です。

 半島を訪れる際には、ぶどう畑を吹き抜けるおいしい空気を料理の一部としても味わえる、ワイナリーでの食事というのも観光の大きな目的の1つになるでしょう。

「Montalto」ではテイスティングで好みのワインを見つけられる

Montalto

■住所:33 Shoreham Rd., Red Hill South VIC
■営業時間:月~金11:30AM~4:30PM、土・日11AM~5PM
■Tel: (03)5989-8412
■Email: hello@montalto.com.au
■Web: montalto.com.au

オーストラリアの固有動物たちと触れ合うチャンス

「Moonlit Sanctuary」の園内では野放しのカンガルーやワラビーが間近かに

 最後にご紹介するのが、ムーンリット・サンクチュアリという、70種以上のオーストラリア固有の動物たちが飼育されている動物園です。過去に何度もツーリズム賞の受賞歴のある同園ですが、その特徴は何なのか訪れてみれば一目瞭然。カンガルーやコアラを始めとした動物たちと触れ合う際の、その物理的な近さが普通ではないのです。

 まずは、入り口で草や木の実が詰まった動物用の餌を購入します。動物たちは、その餌を人間がくれることを知っているのでしょう。餌を持って1歩足を踏み入れると、園内で自由に過ごしている小型カンガルーのワラビーや、カンガルーの子どもたちがぴょんぴょんと跳ねながらやって来ます。それだけなら可愛いものですが、驚くことに人間の身長ほどある筋肉隆々の親カンガルーまでが人に近づいて餌をねだって来ます。その様子を撮影しようとカメラを構えていると、近づき過ぎたカンガルーの顔はファインダーに収め切れず、その鼻息を頬に感じられるほど近づくので、驚きを通り越して怖いくらいです。

 その他、コアラには直接触れて記念写真を撮ることができますし、家族連れに人気の動物ショーでは、人によく慣れたディンゴの芸達者ぶりがとかく必見です。くりくりとした黒目が可愛らしいフクロウが観客の頭上を悠々と飛び回り、ムササビが合図をするたびに木の上から翼を広げて空を飛んでくれます。

 夕方、だんだんと陽の光が弱まり始めると、1日の終わりを告げるように鳥たちが一斉に鳴き始めます。そして空が鮮やかな夕焼けに染まるころには、動物園を囲むユーカリの森はまるで鳥たちによるオーケストラの会場と化し、この半島には人間以外の野生動物が数多く暮らしていることを実感できるでしょう。

 夜行性の動物たちをスタッフによる解説付きで観察できるツアーもあるので、夕方から夜にかけて訪れるのがお薦めかもしれません。

コアラに直接触れて記念写真を撮ることができる「Moonlit Sanctuary」

Moonlit Sanctuary

■住所:550 Tyabb-Tooradin Rd., Pearcedale VIC
■営業時間:クリスマスを除く毎日9:30AM~4PM(入場:~3PM)、ナイト・ツアーは要問い合わせ
■料金:大人$29、子ども(4~17歳)$15、幼児無料、ファミリー(大人2人、子ども2人)$79
■料金(ナイト・ツアー):大人$60、子ども(4~17歳)$36、幼児無料$22、ファミリー(大人2人、子ども2人)$175
■Web: moonlitsanctuary.com.au
■Email:  bookings@moonlit-sanctuary.com


■第1回
「人生を変える1杯」をコーヒー文化の首都で味わう──オーストラリア最大都市メルボルンでカフェとアートを堪能

■第2回
温泉にワイン、休日は心弾む楽しみの宝庫へ──メルボルンから車で1時間ほどのモーニントン半島

■第3回
絶対訪れたい! メルボルンのお薦めナイトスポット─歴史的な6つの劇場、話題のレストラン「ビクトリア」

■第4回
ビッグ・イベント目白押し! スポーツ天国メルボルンに行こう─競馬G1レース、テニスのグランドスラム、F1グランプリ、国際マラソン大会





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