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聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥/セクレタリーの“ヒショヒショ話”

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第18回:聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥

 ある時、役員会議で、私が必死に議事録を取っている最中、会議に参加していた誰かが私の名前を口にした。そして次の瞬間、私は参加者全員の視線が自分に注がれていることに気付いた。あまりにも突然で、議事録を取ることに気を取られていた私は、皆が何について話しているのか全く分からなかった。

 議長である上司のスティーブが、次の議題に進むために急いでいるのが分っていたので、私はあえて聞き返すことなく、後で確認すれば良いと思って何もアクションを起こさなかった。

 会議の後、スティーブのオフィスに呼ばれ、「どうして会議で物事を聞かれて、答えずにただ微笑んでいたのか」と怒られた。「私は議事録係で会議の参加者ではないし、自分が状況を把握していないからといって会議を止めて質問を始めたら、会議が遅れてしまうので、後で確認しようと思った」と、私は答えた。





 「あの場所で微笑むのはふさわしいことではない」と、どうやらスティーブには、私が無意識に見せた「日本人のごまかし笑い」がとても無礼に映ったようで、「わからないことがあったら、徹底的にその場で確認すべきだ」と強く言い切った。

 再び、カルチャーの違いのよる見解であった。日本にも、「聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥」という言葉があり、スティーブが言ったことは正しい。ただ、会議の途中で進行を止めてまで質問をするのは、良いことなのか?「他人に迷惑を掛けてはいけない」という教えの日本文化と、「自分の理解する権利」を主張するオーストラリア文化。金融庁において、唯一の日本人で「マイノリティー」である私にとって、長いものにはある程度巻かれることも必要なのかもしれないと思った出来事の1つであった。

ミッチェル三枝子

ミッチェル三枝子

高校時代に交換留学生として来豪。関西経済連合会、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に勤務。1992年よりシドニーに移住。KDDIオーストラリア及びJTBオーストラリアで社長秘書として15年間従事。2010年からオーストラリア連邦政府金融庁(APRA)で役員秘書として勤務し、現在に至る





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