「マーガレット・コートと同じ勲章は受けられない」
2016年にオーストラリア勲章(OAM)を受けたキャンベラ在住の医師が、2021年のオーストラリア・デーにマーガレット・コート氏がOfficer of the Order of Australiaから、Companion of the Order of Australiaに昇格することになったと知り、抗議のため、OAMを返上することを決意した。
ABC放送(電子版)が伝えた。
元テニス・チャンピオンのマーガレット・コートは引退後ペンテコステ派の聖職者になり、同性愛者や性転換者を悪魔呼ばわりするなどの言動で知られている。また、同性結婚合法化国民郵便投票時にも合法化に激しく反対する言論を展開した。そのため、テニス界を含め広く一般社会からメルボルン市のコート氏の名を冠したテニス・コートを改称するよう求める声が挙がった。
キャンベラのクララ・タック・メン・スー医師は、長年、LGBTコミュニティで医療活動を続けてきたことを顕彰され、OAMを受けた。
スー医師は、「コート氏の言動はLGBTに対する差別を助長するもの」として抗議の意を明らかにしているが、コート氏の昇格は、2人の州首相やLGBT団体からも批判の声が挙がっている。
スー医師は、デビッド・ハーリー連邦総督に宛て、「オーストラリア勲章受勲者を決めるCouncil for the Order of Australiaは、マーガレット・コート氏昇格を支持しているようであり、私が同Councilの価値観を支持しているように見られることは望まない。今回のコート氏の授勲昇格は、この数年、彼女がLGBTIQコミュニティに対して行ってきた否定的で人を傷つける発言を支持しないまでも許容することになる」として、勲章返上の考えを明らかにしている。
コート氏は自分の発言を「宗教的信条に基づいた見解であり、自分の発言は言論の自由にとっても重要だ」と擁護している。これに対してスー医師は、「コート氏の授勲は、LGBTコミュニティに対する差別と偏見を助長することになる。トランスジェンダーの若者の間では自殺率が非常に高い。その問題を是正するためにはジェンダー選択、ジェンダー意識を是認することが重要だが、コート氏のような発言はトランスジェンダーの若者を苦しめるだけだ」と語り、さらに、「受勲者選出に際しては特定分野での業績だけでなく、広く社会的な影響についても考慮すべきだ」と述べている。
■ソース
Canberra doctor returns OAM in protest against Margaret Court 2021 Australia Day honour