分子クランプ法技術で既に複数の候補を開発
QLD大学の研究室は世界に先駆けてコロナウイルス・ワクチンの開発を進めていたが、分子クランプ技術にヒト免疫不全ウイルスHIVの一部を使ったため、エイズ検査で偽陽性と判定されることがあることが判明、ワクチンの有効性は確認されていたが、その時点で開発を中止した。ただし、使われていたのはHIVの本体ではないため、エイズ感染することはない。
QLD大学の分子クランプ技術はmRNA技術などと比べると従来型の技術で、現在はHIV以外の分子クランプを採用することで前回のような偽陽性問題を避けながら、将来的に有効かつ安全なワクチンの開発を目指している。
4月26日付ABC放送(電子版)が伝えた。
研究チームはすでに2種の「有望な候補」で開発を進めているが、「オーストラリア国民への接種ができるようになるのはいつ頃になるかまだ分からない」としている。
最初のワクチン候補は、HIV中の2種のタンパク質の断片を用いてSARS-Cov-2ウイルスの基幹部分だけを保持し、免疫系がこの基幹部分に免疫反応を起こすように仕組んであった。その後、2020年末までに第I相試験に進んでいたが、その段階でHIV偽陽性判定を引き起こすことが判明した。
プロジェクトを共同指導するポール・ヤング・ウイルス学教授は、「QLD大学研究チームはまだコロナウイルス・ワクチン開発を諦めていない。これまでもHIVタンパク質に代わる分子を20種類試してきた。クランプは以前のままで、偽陽性判定を引き起こさないような分子を探して、2種のタンパク質が有望と判断した」と語っているが、その2種のタンパク質がどのようなものかはまだ明らかにしていない。
ヤング教授は、「まだ初期の段階でどうなるか分からない」と語っているが、「ランセット」誌に掲載された最初のワクチン候補の第I相データで、分子クランプ安定化ワクチン技術は安全で効力もあることが示されていた。RMITのワクチン研究者、カイリー・クィン氏は、「QLD大学チームがコロナウイルスのスパイクタンパク質を分子クランプで安定させる考えは正しかった。必要なのはHIV偽陽性のような問題を起こさない最適なクランプを見つけることだけだ」と語っている。
QLD大学チームは、開発した技術が将来的に他のウイルスのワクチン開発にも使えることを確信している。
■ソース
University of Queensland COVID-19 vaccine still in redevelopment, but won’t be available soon