周囲の忠告にも自分の誤りを認めず、政府が釈明発表
5月13日、中国と台湾の関係について、スコット・モリソン連邦首相が、「一国二制度」と発言したため、連邦野党労働党から批判が出ており、サイモン・バーミンガム金融相が、「台湾に関してオーストラリアの公式見解に変化はない」と発言した。
ABC放送(電子版)が伝えた。
オーストラリア連邦は長年にわたって、台湾に関して「一つの中国」政策を取っており、「自治地域台湾」を国家とは承認していない。北京の中国政府の主張する「台湾は、本土政府に反抗する中華人民共和国の一省」を承認しつつ、台湾が国際機関に参加することを支持しており、このあいまいな立場を取ることでオーストラリアは台湾との貿易や留学、外交関係を続けている。
しかし、3AW放送に出演したモリソン首相が台湾について質問され、「オーストラリアは常に中国と台湾に関して一国二制度と理解しており、外交政策もすべてそれに基づいている」と発言した。
過去10年以上にわたって、中国政府は、「香港に適用したのと同じ一国二制度を台湾にも適用できる」と主張しており、モリソン連邦首相の3AWでの発言は中国政府の立場を認めたことになる。
台湾では主要政党はいずれも北京の中国政府の立場を認めておらず、オーストラリアはこの部分をあいまいにして、台湾が国際的な場で独自に活動することを支持している。
オーストラリア政府部内では、モリソン首相の発言はオーストラリア政府の公式見解ではないと指摘する声が挙がっているが、5月12日付SBSのニュースでもモリソン首相は発言の誤りを認めることを拒んでいる。
3AWでの放送の後、ABC放送は、外交官、省庁官僚、連邦議員らにも質問したが、いずれも、台湾と中国に関してオーストラリアの公式見解は変わっておらず、モリソン首相がなぜそのようなコメントをしたのか理解に苦しむと発言している。そのため、ある古参外交官は、「モリソン首相は間違ったがそれを認めたくないのではないか」と推測している。
結局、5月13日朝に連邦政府が公式声明を発表し、「先週の3AWラジオ出演でモリソン首相の発言は誤りだった。オーストラリア政府の一つの中国方針に変更はない。しかし、オーストラリアは、貿易や経済で重要なパートナーである台湾とは今後とも緊密かつ建設的な非公式関係を続けていく。首相の『一国二制度』は、香港についての発言だった」との釈明を行っている。
野党労働党のペニー・ウォン上院議員は、「モリソン氏は我が国の台湾外交政策を大幅に書き替え、50年の台湾との関係を打ち切り、中国政府の立場を受け入れてしまったようだ。それとも、単に誤りを認めようとしないだけなのか? モリソン氏の日頃から判断して後者だと考えている」とツイートしている。
■ソース
Scott Morrison draws fire for ‘One Country Two Systems’ comment in relation to China and Taiwan