ロウイー調査で政府の対中政策については賛否半ば
豪中両国の外交・経済関係が悪化しているさなか、シンクタンクのロウイー・インスチチュートが毎年行っている豪中関係に関する国民の意識について世論調査結果を発表した。
6月23日付シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH、電子版)が伝えた。
この調査では、回答者の半数以上が両国関係の悪化の原因を中国側にあるとしているが、オーストラリア政府の対中政策を支持することもないという結果になっている。
オーストラリア政府は、中国の人権問題やいくつかの国家安全保障問題で公共通信事業でのファーウェイ排除その他の決定で中国政府を怒らせており、さらに武漢でのコロナウイルス発生過程を国際機関で調査することをEUと共同で提案して決定的になった。中国政府は、オーストラリア産の大麦、牛肉、棉花、石炭、木材、ワイン、ロブスターなどに輸入停止や高率関税を課するなどしてオーストラリアを経済的に屈服させる戦術に出た。
スコット・モリソン保守連合連邦政権のこの対中国政策に対して、国内では労働党のペニー・ウォン影の外相が、モリソン政権は意図的に国民の豪中関係危機感を煽っていると批判してきた。
ロウイー世論調査で、回答者の56%が豪中対立の責任は中国側にあると答え、38%が双方が同じくらいの責任と答えている。オーストラリア側に責任があると答えたのは4%に過ぎない。
しかし、豪中関係に対するオーストラリア政府の手際については「10点満点で平均的な5.6点」と評価している。
「習近平主席は国際問題で正しいことをする」といくらかでも信頼している回答者は10%程度で昨年の半分になっている。また、「中国が国際的に責任ある行動を取る」と少しでも信頼しているのは16%で、3年前の52%から大きく後退しており、中国をオーストラリアの経済的パートナーと見る回答より国家安全保障上の脅威と見る回答の方が上回るようになった。
同インスチチュートのナターシャ・カッサム世論調査部長は、「中国がオーストラリアに対して貿易関税を課してきたことが過去1年間に中国に対する信頼感の下落の最大の原因になっている。オーストラリアを経済的に痛めつけて中国の言いなりにならせようとする中国側の攻撃は、オーストラリアが政治家も国民も不退転の決意を固める結果に終わっている」と分析している。
中国に対する信頼がどん底に近づいている一方で、米中武力対立が起きた場合に中立を保つべきとの回答者は57%、アメリカを支援すべきとの回答者は40%程度、中国を支援すべきと答えたのは1%に過ぎない。
また、台湾を巡る米中対立が軍事衝突に発展する脅威と捉えている回答者が52%と過半数を超えている。2020年にはわずか17%だった。
先週のシドニー工科大学(UTS)独自の調査でも67%の回答者が、「オーストラリアにとって中国が国家安全保障上の脅威」と感じている。また、SMH紙・エージ紙が委託して行った世論調査でも62%が、「オーストラリアは最大の貿易相手国からの報復措置があってもオーストラリアの価値観を堅持すべき」と考えている。
ロウイー世論調査は3月15日から29日までの間に2222人を対象に実施しており、許容誤差は2.1%。
■ソース
Most Australians blame China for poor relations but ambivalent about government’s approach: poll