5,000万用量の契約は「国家機密」扱い
7月5日付ABC放送(電子版)の記事によると、オーストラリア連邦政府がアストラゼネカ社と結んだ契約では、5,000万用量を超える量の一部がアストラゼネカ社から供給され、残りはメルボルンのCSL社でライセンス生産することになっており、億単位の金が動いているが、その詳細は、「国家機密」扱いになっている。
連邦政府とアストラゼネカ社との間の契約文書は、「公表されると国家安全保障に現実的かつ重大な危険を及ぼす」ために、国民の眼の届かないところに隠されている。
イギリス、アメリカなどの国はアストラゼネカ社との契約文書のかなりの部分を公開しており、オーストラリア政府が同契約を国家機密扱いとしており、ABC放送の時事番組「7.30」も契約の内容の閲覧を「国家機密」として拒否されたと報じている。
国内ではいくつかの州でコロナウイルス・アウトブレークが起きたため、3日から2週間のロックダウンを発令しており、連邦からのワクチン供給が遅れていることや優先順位が大きく混乱し、連邦管轄の高齢者介護施設職員が接種を受けないまま勤務していたり、州政府が連邦の肩代わりで実施している海外帰国者のホテル隔離でウイルスが漏洩して度々アウトブレークを起こしていること、連邦政府が運営する予定だったワクチン接種所の設立が大幅に遅れたために州政府が肩代わりする結果になるなど、連邦政府に対する州政府の不満が募っている。さらに、アストラゼネカ・ワクチンが血栓症を起こす危険があるため、医学専門家は同ワクチンを「60歳以上に限ること」と勧告したにもかかわらず、スコット・モリソン連邦首相が突然「40歳未満にもアストラゼネカ・ワクチン接種を」と発言するなど混乱が続いている。
連邦政府は複数のワクチン・メーカーと50億ドルを超える供給契約を結んでいるが、アストラゼネカ社との契約は秘密に包まれている。
連邦保健省のCOVID-19 Vaccine Taskforce担当事務次官補が、「この契約が公開されると他の国の政府に両者の契約内容が知れ渡ることになり、製造・供給取決めが損なわれる結果になりかねない」としている。
世界的に透明性の高い政府を求める提唱団体Open Contractingのギャビン・ヘイマン理事長は、「他の国と比べてオーストラリア政府が包括的に契約内容を極秘としているのは異様だ。ワクチン供給契約を国家安全保障論議にするのは当を得ていない。むしろ、国民の信頼を築くことこそが国家安全保障に益することになる」と語っている。
■ソース
Australia is paying hundreds of millions to AstraZeneca for COVID-19 vaccines. But the deal is a ‘national security’ secret