保守連合政権内自由党に要望突きつけ
10月24日付シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH、電子版)は、スコットランドのグラスゴーで開かれる温室効果ガスの二酸化炭素排出量ネット・ゼロを目指す会議に向けてオーストラリア政府の態度を決めなければならないが、連邦政権のスコット・モリソン自由党に対してバーナビー・ジョイス国民党が排出量ネット・ゼロには難色を示していたが、モリソン自由党に要望を突きつけ、同日、ようやく国民党も二酸化炭素排出量ネット・ゼロを「原則支持」すると発表したことを伝えている。
これにより、10月31日から11月12日までのグラスゴーのCOP26で、オーストラリア政府は2050年までに温室効果ガス排出量のネット・ゼロを公式に約束することになる。また、出発までにクリーンな燃料、電気自動車、再生可能エネルギーなどの政策を編成することになる。
モリソン政権は、水素エネルギー技術への投資や農家の排出オフセットに対する報奨などの政策をまとめることになる。この政策のパッケージは、モリソン一行がローマのG20会議とその後のグラスゴーでのUN気候サミットに向けて出発する10月28日より前に発表されることになる。
一方、保守連合政権副首相兼国民党党首を務めるバーナビー・ジョイス氏は、2050年までのネット・ゼロに原則同意するまでにモリソン首相からどのような同意を取り付けたのかを明らかにすることを拒んでおり、また、その同意への交換条件のコストについても閣僚会議で排出量ネット・ゼロの目標を決定してからでないと発表されないことになっている。
気候変動問題の政策に関しては国民や企業でも2050年までのネット・ゼロ達成を政策として確定し、安定した見通しを求める声が高まっていた。そのため、2年あまり前には電気自動車の普及を主張した労働党を攻撃していた保守連合政権も、今回、保守連合も労働党の政策を取り入れることになると予想されるなど、気候変動政策では政府内部で大きなシフトが進んでいる。
農村部や炭鉱地帯などを選挙地盤に抱える国民党は、炭鉱を経済の柱にする選挙区の意向を受け、国内農村部に対する政策的譲歩を求めてきた。国民党内の中心グループはネット・ゼロ・ターゲットには反対していたが、目標には一定の支持があり、ジョイス党首もモリソン連邦首相と協定を結ぶことになった。
25日の報道では、国民党は、2050年ネット・ゼロ政策に批判的なキース・ピット国民党資源相を閣外から閣内大臣に昇格させる成果を得た上、モリソン氏自身もグラスゴーには専属写真家までを含めた10人の大所帯で乗り込むと発表しており、野党労働党のペニー・ウォン上院議員が呆れを声に出す一幕もあった。
■ソース
Nationals accept net zero target by 2050