プロボクサー井上岳志選手、シドニーでの激戦──特別レポート

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プロボクサー井上岳志選手、シドニーでの激戦──特別レポート

試合は最終ラウンドまでもつれ込んだ
試合は最終ラウンドまでもつれ込んだ

 プロボクシングWBOアジア・パシフィック・スーパーウェルター級王者で世界ランク6位、同級1位のティム・チューとの対戦で11月、シドニーに滞在したプロボクサー・井上岳志選手。試合には残念ながら負けてしまったが、日本から遠征という形で井上選手が来豪したことは日系コミュニティーにも明るいニュースとなった。滞在期間中、井上選手はじめ関係者の皆様を献身的に支えたJ Culture Sydney代表の平野由紀子さんに数々の写真と共にレポートを投稿頂いた。

■関連記事: 井上岳志、ボンダイ・ビーチの特設リングで公開トレーニング

現地の日本人ファンとの夕食懇親会

 日本人のプロボクサー井上岳志選手(WBOアジアパシフィック王者)と、オーストラリア人のティム・チュー選手(WBO世界同級1位)の対決試合は、当初ゴールドコーストで開催予定でしたが、ロックダウンが明けたタイミングで急遽、シドニーへと開催地が変更になりました。

 そのため、私たちにとっても急な話ではあったのですが、長い人生の中で全くボクシングに関わった事のない自分が、今回の大きなボクシング大会の仕事を通じてこれほどボクシングにはまってしまうとは、夢にも思いませんでした。

 井上岳志選手は2019年にアメリカで、WBO世界王者ハイメ・ムンギアとの試合にも挑み、惜しくも判定負けでしたが、徹底した接近戦で相手と戦いました。その経験を生かし、今回オーストラリアでの国際試合再挑戦。井上選手が所属するワールドスポーツジムの斉田会長は、「1年ぐらい前から、いつかティム選手とやれると分析しており、WBOランキングで彼が1位となった段階で本格的に交渉をスタート。急遽今年になってチャンスが訪れました、そのため11月の国内試合をキャンセルしてオーストラリアに挑んできた」と話します。

左上より: プレス・カンファレンスの様子、現地メディアによるインタビュー、ワールドスポーツジムの齋田会長(中央)と、計量イベントの様子
左上から時計回りに: プレス・カンファレンスの様子、現地メディアによるインタビュー、ワールドスポーツジムの齋田会長(中央)と、計量イベントの様子

 滞在中はボンダイにあるジムでトレーニングを重ねながら、合間には数回のプレス・カンファレンス、ボンダイビーチでの公開トレーニング、計量イベント、など数々のイベントにも参加。毎回大勢のメディア達が集まる中、さまざまに工夫された演出に一般大衆も楽しめるイベントが目白押しでした。

 また日本人ファンとの夕食懇親会では、日系チアリーディングキッズ達にエールを送られたり、東京オリンピック空手・豪州代表の八尋選手とも交流をしたりと現地での親交も深めました。

懇親会の参加者たち
懇親会の参加者たち

 しかしどこへ行っても、ボクシング選手でいながら優しい彼の人柄が、周囲の多くの人々にとても好感を持たれていました。ある時はレストランでの食事中、オーストラリア人から「ニュースであなたを観た、応援するから頑張って」と声をかけられました。

「打っても打っても全く崩れない。岩のように頑丈だった」

Qudos Bank Arena
Qudos Bank Arena

 11月17日の試合当日は、1か月という短い告知期間にも関わらず、2万人収容のQudos Bank Arenaは人で埋め尽くされていました。オーストラリアのボクシング熱の高さがうかがえました。

 また、選手達のプレ試合の合間合間には、バラエティーに富んだ演出のイベントが目白押しで、約4時間に及ぶ長い試合時間もあっという間に過ぎた気がします。そのイベントもファイヤー仕掛けやレーザー照明、花火などたくさんの仕掛け、演出があり、まるでロックコンサート会場にいるかのようでした。

会場の画面に映し出された日本人の応援団(撮影:馬場一哉)
会場の画面に映し出された日本人の応援団

 さて、試合がスタートすると、ティム選手はバラエティーに富んだ切れのいいパンチで徹底的な攻撃をかけ、井上選手は途中で巻き返しがあったかのように見えたのですが、始終ディフェンス気味でした。

 井上選手に比べ手の長いティム選手の方がリーチに関しても、有利であったことも否めません。結果、判定負けでしたが、12ラウンドの最後まで井上選手は大変よく粘りました。

 ティム選手は試合後のインタビューで「MR. INOUEは、これでもかと打っても打っても全く崩れない。普通ならノックアウトでもおかしくないのに、まるで岩のように頑丈だった。彼はタフで本物の戦士だった。心から尊敬する」と褒めたたえました。

 一方、井上選手の方は「ティム選手に始終支配されていた」、と悔しそうに話をしていました。

不屈の精神で闘い続けた井上選手の姿に感動

試合翌日、ティム選手と
試合翌日、ティム選手と

 試合終了直後に井上選手と控室でお会いした際には、疲労困憊して顔もパンチを受けて真っ赤に腫れた状態であったにもかかわらず、「応援してくれたのに負けてしまいすみません、声援ありがとうございました」と頭を下げられ、すごく驚きました。井上選手はリング上での強さとはうってかわって、普段は大変穏やかで礼儀正しい優しい人柄の男性でした。

 今回井上選手の他にも、ミドル級のチャンピオン選手や別の選手もチームに同行していましたが、全員がお互いを思いやり、常に助け合う精神が大変印象的でした。ティム選手も井上選手が帰国の際にホテルに挨拶に訪れたりなど、真のスポーツマンシップを目の辺りにした気がしました。

 オーストラリア異国の地で、不屈の精神と身体で最後まであきらめずに戦い続けた井上選手の姿は、国籍を問わず多くの人達に勇気と感動を与えてくれました。

 井上選手、それから斉田会長率いるワールドスポーツジムの選手達、オーストラリアに来て下さって本当に有難うございました!

(レポート:平野由紀子=J Culture Sydney)

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