水素を軸に経済と環境の好循環目指す
福岡県が2030年に水素社会のフロントランナーとなることを目指す「福岡県水素グリーン成長戦略会議」は23〜24日、オーストラリア南部メルボルンで開かれた再生可能エネルギー関連の見本市に出展した。水素イノベーションをけん引してきた福岡県の行政と製造業が一丸となり、水素サプライチェーンの整備に向けた取り組みやモノづくり企業の高い技術力と商品をアピールした。
同戦略会議が出展したのは、メルボルン・エキシビション・アンド・コンベンション・センターで2日間開かれた再エネ展示会「オール・エナジー・オーストラリア2024」。日本から戦略会議と共同出展者4社・団体(英語名のアルファベット順)が参加した。展示の概要は次の通り。
福岡県水素グリーン成長戦略会議
水素を軸に経済と環境の好循環を図る産官学連携の取り組みを紹介。水素の運搬手段として期待されるアンモニアの輸入から貯蔵、水素への再変換、輸送までのインフラを北九州市に整備する構想などについても説明した。
公益財団法人 水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)
メーカーが水素関連製品を開発する際に耐久性や品質をテストする様々な機器の性能や手順を解説。同センターの試験を経て製造された企業の商品の実物を展示し、高い技術力をPRした。
TOKiエンジニアリング
液体水素の漏れを防止する継手(配管をつなぎ合わせる部品)などを展示。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH3ロケット打ち上げ成功にも貢献したオンリーワン技術をアピールした。
矢部川電気工業
制御装置や計測装置で独自技術を有する同社は、水素の不純物を連続計測できる水素ガス計測装置や温湿度センサーを展示。高純度の水素を安定供給するために不可欠な製品を紹介した。
ヤンマーエネルギーシステム
圧縮水素と空気中の酸素との化学反応で電気を発生させる水素燃料電池システムを紹介。オーストラリアでの販売を視野に、発電時に二酸化炭素を発生しないことや、低騒音・省スペースで運用できる利点などをアピールした。
水素エネルギーで「日豪の架け橋に」
共同出展者とともに来豪した福岡県商工部自動車・水素産業振興課の山下道寛・企画主査は「会場では他に水素関連の展示が少なかったこともあり、当ブースの注目度は高く、予想を大幅に上回る反響があった。今回の展示をきっかけに、福岡県企業とオーストラリアのビジネス交流が進むことを期待したい」と述べた。
福岡県は2004年に戦略会議の前身を立ち上げ、水素の研究開発や新産業の育成・集積、人材育成などに取り組んできた。脱炭素化やエネルギー安保に対する関心の高まりを受け、22年には現在の名称に変えて取り組みを強化してきた。
昨年11月には、同県とオーストラリア東部ニューサウスウェールズ州政府との間で「水素分野における協力促進に関する覚書(MOU)」を締結。オーストラリアでの展示会への出展や、人材交流などを進めている。
一方、オーストラリアも次世代の主力輸出商品として水素エネルギーの開発に力を入れており、生産・輸出拠点「水素ハブ」を全国7カ所に建設する計画だ。5月には水素1キログラム当たり2豪ドルの税制優遇措置を発表。9月には指針となる「全国水素戦略2024年版」を公表し、2050年までに少なくとも年間1,500万トン、最大3,000万トンの水素を生産する目標を明らかにしている。
なお、福岡県が海外で水素関連の展示を行うのは今回が初めて。会場ブースの装飾や展示パネルなどの現地手配は、シドニーのマーケティング会社「グローバル・プロモーションズ・オーストラリア」が担当した。
オール・エナジー・オーストラリアは再エネ関連の見本市としては南半球最大規模。今年は450以上の企業が出展し、太陽光発電や蓄電池、省エネなどクリーンエネルギー技術や商品をアピール。再エネをテーマにした会議やシンポジウムも開かれた。