まれな細菌性疾患に医師らも感染源つかめず
ブルーリ潰瘍は細菌性の疾患で、皮膚に虫さされのような小さなぽつんとした膨らみができるところから始まり、結核、ハンセン病の病原菌である抗酸性菌の出す毒素は免疫系を抑制し、痛覚低下を引き起こし、細胞を壊死させるため、皮膚の潰瘍が広がっていく。主として熱帯、亜熱帯のアフリカなどに多発するが、日本、オーストラリアでもわずかながら発生している。オーストラリアの場合、例年は数十件程度とされているが、2018年にはVIC州で330件を超える患者が報告されており、医療関係者は頭を悩ませている。致死性は低く、治療は抗菌薬内服が主。
ABC放送(電子版)が伝えた。
ブルーリ潰瘍は皮膚の潰瘍が数週間で広まっていき、患部が広まると皮膚切除も必要になる「人食いバクテリア」と呼ばれることもある。
VIC州の過去のブルーリ潰瘍発症件数は、2014年89件、2015年107件、2016年182件、2017年277件、2018年336件と過去4年で急激に増えている。また、この細菌の出す毒素は治療を遅らせるのに有利に働くため医師が診断する症例が次第に重篤になっており、傷が治るのに1年以上かかるケースもある。
しかも、この細菌に感染しても発病まで何か月も潜伏していることがあるため感染源を突き止めることが難しく、しかも通常の細菌と違って抗生物質が効かないというやっかいなびょうきとして知られている。
このブルーリ潰瘍の異常発生にVIC州政府機関、ジーロン、メルボルンの病院、メルボルン大学に連邦科学産業研究機構(CSIRO)も参加して感染源を突き止めるために研究を進めている。
今後2年間をかけて患者の世帯と非患者の世帯各120世帯を選んで訪問して違いを探るほか、土壌、水源、ポッサムの糞、蚊などを採集して細菌の有無を調べる。
CSIROの研究者は、「自分の家の庭で細菌感染している人が多いのではないかと疑われている。蚊が細菌を媒介するのではないか。また、微細な傷が細菌に汚染された土壌や水に触れた場合も考えられる。ポッサムやコアラ、ネコ、イヌなどが媒介する可能性もある。今回の研究の焦点は患者がどういう経路で感染したかを突き止めることだ」と語っている。
2011年にQLD州で54件の発生があったが、それ以降は数件に留まっているが、温帯のVIC州でなぜこれほどの発生率になっているのかが研究者にとって最大の謎になっている。
ただし、現在の医療で治癒率は99.5%と非常に高く、社会不安を引き起こすことはない。
■ソース
Buruli ulcer is infecting hundreds of Victorians, and doctors don’t know why