シンガポールのホテル・チェーンが建物買収・改修
1887年以来シドニーのマーティン・プレイスとジョージ・ストリートの角に立つ元シドニー中央郵便局(GPO)は歴史のある建造物であり、かつてはシドニー都心から距離を測る際の起点になっていた。しかし、GPOの郵便業務は近くのビルに間借りするようになり、建物にいくつかの小売店やレストランが入居していた。一方、建物の砂岩と大理石の外部装飾は長年の風雨にさらされて風化が進んでおり、ビクトリア女王やイギリスの英雄ボアディケアの肖像などが傷んでいる。
2017年にシンガポールのフラートン・ホテルズ&リゾーツがこの建物を買収した際には「歴史建造物を外国人に売るのか」として、論議を呼んだ。しかし、フラートン社は、建物の改修と外部の装飾の修復を行い、歴史建造物としての価値を保存する意図を明らかにしている。この外部の装飾の修復の一部が2019年10月には完了する予定
シドニー・モーニング・ヘラルド紙(電子版)が伝えた。
この建物の石造りの装飾には19世紀後半の大英帝国の栄光を示すビクトリア女王やローマ軍と戦ったイギリスの英雄ボアディケア、豊穣の女神などが象られているが、この建物が建てられた時にもその装飾を巡って賛否両論があったとシドニー・モーニング・ヘラルド紙は伝えている。
2017年にシンガポールのホテル・チェーンがこの建物を1億5,000万ドルで買収した時、クロバー・ムーア・シドニー市長は、「中央郵便局はビクトリア朝建築の傑作であり、当時としてはオペラハウスにも匹敵する建物だ」として、売却したオーストラリア郵便を批判している。
フラートン社のジョバンニ・ビテラリ・ジェネラル・マネージャは、「安心して欲しい。当社はこの建物をしっかり守る」と語った。また、将来的に一般市民に建物の中を案内する無料ツアーも予定されている。
また、「おそらく市民もこの建物の詳細を知らないと思う。この建物はシドニー市とオーストラリアの歴史そのものだ。入念な修復工事はこのホテルの変身の手始めだ。当社としては、建物を清潔にしたいが、真新しく見えるようにするつもりはない。古いものは古いなりに新しい部分は新しいなりに調和を保った建物にしたい」と語っている。
また、パワーハウス博物館の元学芸員で歴史家のチャールズ・ピケット氏は、「GPOは1800年代のシドニーでもっとも重要な建物だったはずで、シドニーの建築の新しい水準を築いたもので、イタリアのルネッサンスにも匹敵する精妙さを示している」と評価している。
■ソース
GPO’s ‘petrified marionettes’ get facelift from new hotel owner