欠陥建築で問われる州政府の管理責任
2019年6月14日、建物が揺れ、梁にひび割れが見つかり、居住者全員に避難命令が出た10階建てのマスコット・タワー・アパートメント・ビルディングは、建築エンジニアの調査で建物が沈んでいる可能性があるなどの報告が出された。その後の建築調査で修理費は1000万ドルにのぼると示され、入居者は建物の施工主企業や建築会社、建築認可した政府、竣工後の検査を行った機関などから賠償金を取れない限り、不良建築を買わされた被害者として泣き寝入りになる可能性がある。
ABC放送(電子版)が伝えた。
オリンピック・パークのオパール・タワーでも同じような欠陥建築が見つかっており、住人はすでに集団訴訟を起こしている。
一方、マスコット・タワーの132世帯の住人は、補修作業の第一期工事の資金として1000万ドルを捻出するための「特別課徴金」を支持するかどうかを、今月22日に予定されている投票で決めることになっているが、住民は1世帯当たり10万ドル近い額にショックを受けている。この課徴金は、今後15年間に四半期ごとに徴収されることになる。
6月のミーティングでは住民は同じような課徴金で予備工事の100万ドルを捻出することを決めたばかりで、築後12年の同ビルは保証期間が過ぎているため、修理費も大幅に跳ね上がるとされている。
オパール・タワーに続いてマスコット・タワーでも欠陥建築が明るみに出たことで責任の所在が問われる他、NSW州の建築業界に対する信頼が一挙に崩壊したとされている。
オパール・タワーの住民は、NSW州政府を相手取って州最高裁に集団訴訟を起こしており、一方、グラディス・ベレジクリアン州首相は、NSW州建築業界の重要な改革を進めるためとして、NSW州建築コミッショナーを新しく発表した。しかし、州政府が建築業界を適正に管理規制してこなかったとする非難は逃れようがなく、欠陥建築は2棟に留まらず、今後さらに増えていくことが予想されている。
住民の不動産代理店は、「10万ドルはおろか4万ドルでも出す余裕のない住民がいる。その人達は銀行にも行ったが、銀行も貸すはずがない」と語っている。
そのため、マスコット・タワーの住民も集団訴訟を考えに入れていると伝えられている。
■ソース
Mascot Towers repair bill passes $10 million as residents hit with special levy funding arrangement
https://www.abc.net.au/news/2019-08-03/mascot-towers-owners-face-$10-million-repair-bill/11380902