新聞の一面を政府機密に似せて黒く「抹消」
10月21日付のオーストラリアン、シドニー・モーニング・ヘラルド、デーリー・テレグラフ、ファイナンシャル・レビュー、キャンベラ・タイムズなど国内大手新聞各紙が第一面の各記事を黒く抹消する体裁で発行した。
ABC放送(電子版)が伝えた。
オーストラリア連邦政府はこれまでテロ対策などの理由で国家安全保障関係法を矢継ぎ早に立法化しており、国民の自由の制限やメディアの報道規制など今や西側諸国の中ではもっとも厳しい法制ができているとも言われている。
さらに国家安全保障を理由に政府職員の内部告発で入手した情報の公開を厳格に禁止するなどの動きがあるため、メディア各社が、「政府が国民の知る権利を奪えばこういうことになる」とデモンストレーションして、黒のべた塗りの紙面を構成した。
同様のキャンペーンが10月20日のテレビ広告でも放送された。
オーストラリアン紙やファイナンシャル・レビュー紙は、現在、保守連合連邦政権下で政府の秘密主義が強まっており、国民に知らせない政治では、国民に情報を伝える任務を果たすジャーナリストが犯罪者として逮捕起訴されるという威嚇に直面しなければならなくなる。
テレビの広告キャンペーンでは「情報の自由法」に基づいて入手した政府資料が全ページ真っ黒に抹消されているという場面を映している。
このメディアの共同キャンペーンを進めているのは「知る権利」連合というメディアの連合体で、公共の利益を目指すジャーナリズムが罪に問われないこと、また、メディアや内部告発者の保護を法的に強化することなどを謳っている。
インドネシアのジャカルタを訪れているスコット・モリソン連邦首相は、「我々は常に報道の自由を自由民主主義の重要な根幹と考えている。しかし、ジャーナリストと言えども法の前には平等でなければならない」と語っている。
しかし、「知る権利」連合のキャンペーンは、「報道の自由がなければ、社会の中の違法行為、特に銀行や高齢者施設などが行っていた行為に対して特別調査委員会が設立されるきっかけになった暴露報道もあり得なかっただろう」と反論している。
また、クリスチャン・ポーター法相が、「ジャーナリストの訴追は大臣の私の署名がなければできない」と語ったことに対してもメディアの間では不信感が広がっている。
しかし、労働党連邦上院議員からは、「なぜメディアは議会で国家安全保障法制が審議されている時に問題として取り上げず、連邦警察がメディアの家宅捜索を行うようになってから問題にしたのか?」と疑問が挙がっている。
■ソース
Media unites to rally for press freedom, taking campaign to front pages and airwaves