文=山田美千子/写真=山田武
3位決定戦は、ワラビーズがプール戦で唯一敗れたウェールズと宿敵ニュージーランド、オール・ブラックスの戦いとなった。そのオール・ブラックスが大会最後に選んだ伝統的儀式HAKAは、この大会で代表ジャージを脱ぐキアラン・リード・キャプテンがリードする『カマテ』だった。

試合開始直後に攻め込んだのは赤のウェールズ。しかし、すぐにオール・ブラックスが反撃に転じる。スタンドを見回すと赤や白、ゴールドやグリーンが目に付きやすい。黒色は目立ちにくいが、かなりの数のオール・ブラックス応援団が、大声援で選手たちの背中を押していた。

オール・ブラックスにとっては、まさかのブロンズ・ファイナルだっただろう。クォーター・ファイナルで敗戦し、5日間で心身ともに傷ついたチームを立て直すのは大変だったとハンセンHCも語っている。
一方のウェールズも前戦の南アフリカ戦での負傷のため、4人の選手が戦列を離脱せざるを得ない厳しい状況だった。2戦続けてフィジカルが並外れて強い相手とのゲームは、選手の消耗も激しく、しばしば痛がっている姿を見掛けた。
ノック・アウト・トーナメントに入ると想像以上に過酷であるという現実を目の当たりにした瞬間だった。



重い黒い壁をなかなか突破できず得点につなげられないウェールズ。突破力のあるWTBが力ずくでウェールズDFをこじ開けていく攻撃を繰り返し、得点につなげたオール・ブラックス。結果は40-17でオール・ブラックスがブロンズ・メダルを手にした。

オール・ブラックスのキャプテン、キアラン・リードの場内でのインタビューは、マイクを通しているのに聞こえないくらいの大歓声が起こっていた。ハンセンHCへの声援もかなり大きなものだった。
表彰式では選手、スタッフがメダルの授与を受けた。選手の中には、小さな子どもと一緒に壇上に上がり、子どもにメダルを掛けてもらう姿も見られた。


ウェールズのガットランドHCもニュージーランドのハンセンHCもそろって「家族」の支えの大切さを語っていた。大会に向けて頑張ったのは選手だけではない。彼らの家族も同様に戦ってきたのだ。
試合後に家族と再会した選手たち、特に子どもたちと再会した時は、穏やかな優しいパパの顔に戻っていた。子どもたちの笑顔も戦いを終えた選手の笑顔も輝いていた。
たくさんの「人」を支え、たくさんの「人」に支えられたラグビー・ワールド・カップ2019日本大会は、2日にファイナルを迎えた。
