シドニー・カーネルの高濃度塩水で予想しない結果
シドニー南部カーネルの脱塩淡水化プラントは、今年の厳しい水不足のため、建設以来久しぶりに稼働しているが、海水から淡水を取り出し、塩分は海水に混じって再び海に戻される。その排水口周辺で魚類の数が増えていることが判明した。
ABC放送(電子版)が伝えた。
研究者は、このような結果はまったく予想していなかった。大規模な脱塩淡水化プラントが海の魚の数にマイナスの影響を及ぼさないことが突き止められた、と述べている。
Southern Cross Universityが中心となって行った研究の成果はEnvironmental Science & Technology誌に掲載されており、淡水化プラント稼働時に魚類の個体数が279%増えたとしている。
同大学のNational Marine Science Centreのブレンダン・ケラハー教授は、「研究を始めた時にはこのような結果は予想していなかった。研究を始める前に世界の文献を調べており、高濃度の塩水の排水は魚類に何の影響ももたらさないか、もたらすとすればむしろ悪影響があるのではないかと予想していたから、これほど強いプラスの影響があったことに驚いている。プラントのスイッチが入ると魚が集まってくるようで、見事な光景だ」と述べている。
研究は同大学とUniversity of New South Walesが共同で行ったもので、2010年の建設直後の稼働前後から時折、一時的に運転を停止した時の海中の状況を調べた。
その結果、排水口から50m以内の範囲で商業漁、遊漁の対象となる魚でも133%増えていた。
ただし、研究チームも、高濃度塩水の排出で何が魚を招き寄せるのかはまだ解明されていないが、魚の餌になるものが増えた形跡はなかった。ケラハー博士は、「単に魚が排水口周辺に集まってくるだけとも考えられるが、周辺で繁殖も増えていることが考えられる。このようなことから、将来的に水産資源開発に応用することができるかも知れない」と語っている。
発表された論文は、この現象を地元水産業振興に役立てられるかも知れない、とも述べている。
■ソース
Sydney desalination plant discharge boosts fish numbers by almost 300 per cent