メディア倫理規定機関がアラン・ジョーンズに有罪
粗暴な発言で人気を得てきた保守ラジオ・パーソナリティ、アラン・ジョーンズ氏のラジオでの発言にメディア倫理規定機関が、「メディアの倫理基準違反」の判断を下した。しかし、ジョーンズ氏は来月で長年続いたラジオ番組を降板することになっており、現実的には何の処罰も行われない。
シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH、電子版)が伝えた。
2019年8月、気候変動対策問題で実効性のある対策を渋るスコット・モリソン連邦政権をジャシンダ・アーダーンNZ首相が批判した。これに対して、ジョーンズ氏は2GBの自分のラジオ番組で、「モリソン首相はアーダーンの喉に靴下を突っ込み、お仕置きをしてやれ」と発言した。ジョーンズ氏は後に謝罪しているが、アーダーンNZ首相はジョーンズ発言も謝罪も取り合っていない。
また、同じ番組でジョーンズ氏は気候変動を否定する発言をしている。
全豪メディア・コミュニケーション管理局(ACMA)は、その双方について、ジョーンズ氏にメディア倫理基準違反があったと判断した。
また、ACMAは、問題の放送内容について125件を超える苦情が届けられたと発表している。
昨年、ツバルで開かれた太平洋諸島フォーラムにおいて、太平洋島嶼国から気候温暖化による海面上昇で国土が失われるとの危惧が出たことに対して、アーダーンNZ首相は、「オーストラリアは島嶼国に答える義務がある」と発言した。女性に対する暴力、他国首班に対する暴力を正当化するジョーンズ氏の発言に対しては番組の数多いスポンサー企業が敏感に反応し、スポンサーを解消する企業が続出、ついに番組のスポンサー収入が半減する結果になり、放送局所有者のチャネル・ナインがジョーンズ氏に最後通牒を渡す結果になった。
それまでのジョーンズ氏の発言事故では降りたスポンサー企業もほとぼりが冷めると戻ってくることが通常だったが、今回はついにコールズ、ビン・リーなどファミリー・フレンドリーを目指す企業が去り、番組の年収減は1,200万ドルにのぼっている。
ACMAのネリダ・オロクリン委員長は、「ジョーンズ氏が繰り返し用いる暴力的な比喩、アーダーン首相に対して暴力的に口を封じることをあおる発言は非常に不快感を与えるものであり、現代社会の基準には適合しない」と判断を述べている。
しかし、「ジョーンズ氏は間もなく引退することになっており、ACMAとしてはこれ以上の処分を行わない」と述べている。また、「ジョーンズ氏が暴力をあおった」、「ジョーンズ氏が女性、国籍、人種などを理由に憎悪や侮蔑、からかいをあおった」という申し立てはいずれも却下している。
また、ACMAは、気候変動問題でジョーンズ氏のラジオ番組での発言はいずれも事実に反する不正確な内容だったということは認めた。
■ソース
Alan Jones breached rules in Jacinda Ardern ‘sock down her throat’ broadcast