駐中豪公館、中国当局と交渉出国許可
駐中のABC放送とオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(AFR)の特派員2人が中国の警備当局の尋問を受ける直前に豪大使館と領事館とが当局と交渉し、2人を速やかにオーストラリアに帰国させる了解を得た上で、豪公館員が付き添って2人をオーストラリア行きの飛行機に乗せるというスパイ映画もどきの事件が起きた。
ABC放送(電子版)が伝えた。
北京駐在のビル・バートルズABC特派員、上海駐在のマイク・スミスAFR特派員はいずれも9月8日にはオーストラリアに帰国した。これでオーストラリア・メディアの正規の特派員は中国には一人も残っていない。
中国にはオーストラリア国籍で中国メディアで働いていた中国系アンカーや元中国領事館員でオーストラリアに亡命し、人権運動を続けていた作家が中国に帰国した際に逮捕、長期拘留されている。
先週初め、北京の豪外交官がバートルズ氏に中国を出るよう警告し、またオーストラリア国内でも外交貿易省(DFAT)職員がデビッド・アンダーソンABC放送理事長に警告していた。そのため、ABC放送は9月3日にバートルズ氏を中国から脱出させる手はずを整えていたが、フライトの前日夜に中国警察官7人がバートルズ宅を訪れ、「出国禁止」を命令、翌3日に国家安全保障問題で尋問があることを伝えた。
バートルズ氏が豪大使館に連絡し、大使館の車で大使館に入り、そのまま出国当日まで待機、中国側からは大使館にバートルズ氏を尋問したいとの連絡が入った。話し合いの結果、バートルズ氏の出国禁止を解く代わりにグレアム・フレッチャー駐中豪大使立ち会いでのみ尋問に応じることになった。
その結果、9月7日にバートルズ氏は館員付き添いで北京から上海に飛び、そこからシドニー行きの飛行機に乗っている。
AFRのスミス特派員は、バートルズ氏とほぼ同じ条件で、上海の豪領事館で過ごし、9月7日に中国官憲当局の尋問を受けており、最終的にバートルズ氏と同じ飛行機で帰国の途についた。
中国国営放送に努めていたオーストラリア人ジャーナリスト、チェン・レイ氏も容疑を告げられないまま長期拘留されており、両国の緊張関係はさらに高まっている。
2020年7月にはオーストラリア政府が渡航情報で、「中国ではオーストラリア市民が令状無しに長期拘留を受け可能性がある」としていた。また、中国には他の部署の仕事でABC職員が残っており、将来的な安否が気づかわれている。
AFRは声明を発表し、2人が無事に帰国したことで外務貿易省や駐中大使館、領事館に感謝の意を表しながらも、中国でジャーナリストが標的にされていることに懸念を表明している。
■ソース
Australian correspondents Bill Birtles and Mike Smith pulled out of China after five-day diplomatic standoff over national security case