下院で労働党修正案、上院では審議拒否受け
2月10日付ABC放送(電子版)は、スコット・モリソンが選挙公約に掲げていた宗教差別法案(宗教の自由法案とも)の無期限棚上げを決定したと伝えている。
この法案は、宗教系学校で同性愛者や性転換者などLGBTIQ+と総称する人々が教員や生徒の場合に学校側のできることできないことを定めるものになる他、宗教教義に基づいた発言が差別になる場合の法的対応を定めるものとされているが、教義に基づく差別を「宗教の自由」と主張する保守系の宗教団体と、国法で禁じられている差別を宗教関係者にのみ許すことは認められないとするリベラルな立場や直接に差別を受けるLGBTIQ+との間の対立になっていた。
同法案は2月9日まで審議が続けられ、モリソン政権が、「法案では宗教系学校での同性愛者の教職員や生徒は差別から保護されているが、トランス・ジェンダーには保護はない」と明言したことから、下院で労働党が、トランス・ジェンダーにも保護を広げる修正案を出し、10日未明、下院議場では自由党議員5人が席を立って労働党側に移動、修正案を支持、法案は労働党修正案付きで可決された。
モリソン政権の宗教差別法案は、自由党の中でもリベラルとされるトレント・ジマーマン、フィオーナ・マーチン、ケイティー・アレン、ブリジット・アーチャー、デーブ・シャーマン5議員がLGBTIQ+すべてに対する宗教団体の差別に反対して労働党修正案を支持したため、大幅に骨抜きになった。
翌2月10日には労働党修正案を盛り込んだ同法案が上院に回されたが、保守連合が多数議席を占める下院とは異なり、上院は保守連合が多数議席を占めておらず、上院で同法案が審議拒否を受けた。
上院は休会に入り、3月に再開されるが、5月までに行われる予定の総選挙前には与野党双方で予算案を国民に売り込まなければならず、かつ、様々な修正案を与えられた同法案は、モリソン政権が保守系宗教団体に約束していた内容にはほど遠くなっていたため、10日の上院審議が始まる頃には、モリソン政権も保守系宗教団体もこの法案を廃案にする方向で決まっていたと報じられている。
モリソン政権は、宗教系学校でのトランス・ジェンダー職員生徒という問題をオーストラリア法制改革委員会にかけ、今後1年以内に報告書を提出させる方向で動いている。
■ソース
Government shelves religious freedom bill indefinitely, leaving election promise hanging in uncertainty