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ダットン国防相、名誉毀損訴訟二審で逆転敗訴

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難民支援運動家の批判ツイートを訴え一審勝訴

 難民支援運動家のシェーン・バジ氏が、ピーター・ダットン現国防相(当時内相)の発言を批判し、2021年2月、「ダットン大臣は、「強姦被害者を責めることで加害者を擁護することになる」との主旨のツイートをしたのに対して、ダットン大臣がバジ氏を名誉毀損で訴え、一審判決ではバジ氏が敗訴、ダットン大臣への賠償として$35,000円の支払いを命じられた。

 バジ氏はこれを不服として連邦高裁に控訴していたが、5月17日付ABC放送(電子版)は、同日の判決でバジ氏が逆転勝訴したことを伝えている。

 この裁判は、単に名誉毀損が成立するかどうかだけでなく、政治家が名誉毀損訴訟に持ち込むことで国民の批判を抑圧する結果になるという民主主義の根幹の問題が争われていた。

 2021年、ダットン大臣の名誉毀損訴訟で、リチャード・ホワイト連邦裁判事は、「ツイートはダットン大臣が強姦犯罪を許しているとしてダットン大臣の名誉を毀損している」と判断していた。しかし、再審の連邦高裁ではスティーブン・レアーズ、ダリル・ランギア、マイケル・ウィグニーの3判事が一審判決を覆した。

 バジ氏のツイートは、2019年6月のガーディアン紙の記事に関するもので、ダットン内相が、「(ナウルの難民収容所に収容されている)女性達は、強姦され、中絶が必要だと主張するのはオーストラリアに移されるための口実だ」と発言したことを捉え、「ダットン内相の発言は強姦犯の罪を問わない結果になる」との主旨で、これが一審で名誉毀損にあたると判断されたが、17日の判決で3人の高裁判事は、「ダットン内相が、ナウルに収容されている女性達の強姦被害を疑ってかかっていることは、バジ氏のダットン人物評価に当てはまっているものだ」と判断し、読者もそのように理解すると考えられ、ダットン大臣を非難するものではあるが、名誉毀損には当たらないとして一審の判決を覆した。

 逆転勝訴したバジ氏は、「この判決は私だけのことではない。ソーシャル・メディアで政治的発言や政治か批判をしようとする者全てに関わっている。裁判所がはっきりと説得力のある判例を出してくれたことに感謝している」と語っている。また、弁護団のスチュワート・オコネル弁護士は、「今日の判決は、国民は政治家を批判する権利がある。政治的発言で政治家をこき下ろすコメントをすることができるということを明らかにした。政治家でも個人的な名誉が傷つけられた場合には名誉毀損で訴えることができるが、政治的なコメントで政治家を批判する場合にはかなり大きく自由が尊重されるべきだ。国民が政治家批判をためらうようになってはならない」と語っている。

 また、デビッド・シューブリッジNSW州議会緑の党議員は、「クラウド・ファンディングで$157,000が寄せられていたが、裁判経費はすべて敗訴したダットン大臣が負担することになった。寄せられた寄付金は、強姦やDV被害者救済、難民クライシス・センターなどの慈善団体に寄付することになる。今日の判決は民主主義の勝利だ」と語っている。
■ソース
Refugee advocate Shane Bazzi wins appeal against Peter Dutton defamation ruling

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