「重要鉱物」や天然ガス 次世代エネルギーの水素・アンモニアも
パースで22日に開かれた日豪首脳会談では、新しい「安全保障協力に関する日豪共同宣言」の締結とともに、オーストラリア産の資源・エネルギーの日本への安定供給も重要なテーマの1つとなった。
岸田文雄首相とアンソニー・アルバニージー首相は会談後、「クリティカル・ミネラル(重要鉱物)に関するパートナーシップ」の基本合意書(MOU)に署名している。
クリティカル・ミネラルとは、「先端技術や国家安全保障に不可欠で、かつ供給網の寸断がリスクとなりうる金属または非金属」(豪政府)と定義されている。電気自動車やスマートフォンなどの二次電池の原料となるリチウムをはじめ、定置型大型充電施設に使用されるバナジウム、半導体や電子機器の生産に欠かせないレアアース(希土類)など26の鉱物が指定されている。
基本合意書では、温室効果ガス削減目標の達成や経済安全保障の確保、オーストラリア産クリティカル・ミネラル資源の開発促進、日本の先端的な製造業へのクリティカル・ミネラルの安定供給などを目的に、研究開発や規制緩和を進め、民間投資を促進することなどを明記している。
豪州産資源の重要性が増している
一方、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した世界的なエネルギー市場と燃料供給の混乱について、両首脳は「エネルギー安全保障面での協力を強化することが死活的に重要だ」との認識で一致。「オーストラリア産の液化天然ガス(LNG)を含むエネルギー資源の安全で信頼できる貿易と投資」を推進するとしている。
また、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするとの目標に向け、両国が協力して次世代のクリーン・エネルギー利用を推進していくことも確認した。使用時に温室効果ガスを出さない水素やアンモニアをオーストラリアで生産し、日本に輸出することを念頭に、技術開発と供給網の構築で協力する。
日本は石炭の約7割、液化天然ガス(LNG)の約4割をオーストラリア産に依存する(グラフ参照)。自動車の電動化に伴い、クリティカル・ミネラルの争奪戦が加速する中で、リチウムも約55%をオーストラリアから輸入している。
ウクライナ侵攻を機に世界的なエネルギー供給網が混乱する中、資源の大半を輸入に頼る日本にとって、資源輸出国であるオーストラリアの重要性は増している。一方、オーストラリアも最大の輸出市場である中国との外交関係が冷却。脱中国依存を図る上で日本への輸出を増やしたい思惑もある。
■ソース
AUSTRALIA-JAPAN LEADERS’ MEETING JOINT STATEMENT(日豪首脳会談共同声明/連邦首相府)