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新年の景気は下り坂!? 利上げの影響がボディーブロー

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住宅ローン金利上昇で個人消費スローダウンへ

クリスマス商戦は絶好調。個人消費は依然として旺盛だが…(Photo: freestocks on Unsplash)

 32年ぶりの高いインフレと7カ月間に3.0ポイント引き上げた前例のない急激な利上げにもかかわらず、オーストラリアの景気は依然として堅調に推移している。

 9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0.6%増、前年同期比5.9%増。経済の原動力である個人消費が依然として旺盛で、消費者がまだ財布の紐を引き締めていないことが確かめられた。

 足元の年末商戦も好調に推移している。クリスマス・セールの口火を切った「ブラック・フライデー」(11月25日)と「サイバー・フライデー」(同28日)の売上高は72億豪ドル(ナショナル・オーストラリア銀推計)と、事前予想の62億豪ドル(オーストラリア小売業協会)を大幅に上回ったもようだ。

 しかし、景気の先行きには暗雲が立ち込めている。エコノミストの観測によると、利上げによるマイナスの影響がボディーブローのように効いてきそうだ。

来年後半に景気は急減速か!?

 オーストラリアの著名エコノミストとして知られるビル・エバンス氏(ウェストパック銀)は、「50年ぶりの低失業率、2,600億豪ドルに達した家計の余分の貯蓄、企業の高い生産余力、深刻な人手不足といった経済の“緩衝材”のおかげで、2023年初頭は成長しそうだが、年の後半には減速するだろう」と予測。23年通年の経済成長率は「長期平均を大幅に下回る1.0%にとどまる」と見ている。

 また、同行の上級エコノミストであるサティシュ・ランチホッド氏は「当行の調査によると、企業の景況感は世界金融危機とコロナ感染拡大初期以来の低水準にある」と指摘。その上で、「今年の急激な利上げによる影響は、住宅価格が21年11月のピークから12%下落するなど、次第に経済に影響を与え始めている。現時点では、経済全体の需要は利上げに対して反発力を維持しているが、来年はこうした状況が暗転すると予想している」と述べる。

 同氏によると、住宅ローンの半数以上が今後1年以内に利率が引き上げられ、多くの借り手の支払い金額が大幅に増える。このため、「生活費のやり繰りが厳しくなり、23年を通して家計の支出は明らかに減少する。その結果、(消費に)関連した企業の設備投資も軟化するだろう」と予想している。

コロナ・バブルの貯金が尽きてきた?

 また、コモンウェルス銀の世界経済・市場調査部でオーストラリア経済部門の責任者を務めるギャレス・エアード氏は「家計貯蓄率がコロナ禍前の水準を回復した。このことは、家計の支出余力が今後、コロナ禍(の給付金や金融緩和)で累積した貯蓄よりも、(現在の)収入に頼ることを意味している。消費者の景況感は非常に悲観的になっており、(コロナ禍の)繰り延べ貯蓄が尽き始めていることを示唆しているのではないか」と指摘する。

 その上で同氏は「利上げの影響が(変動型の)住宅ローン金利に遅れて反映される結果、借り手の支出が縮小することで、経済は23年に著しく鈍化するだろう。加えて、多くの金利固定型の住宅ローンの金利も更新されるため、個人消費をさらに引き締めることになる。企業も今までより著しく高い利払いに対処しなければならない」と語る。

 同氏によると、豪準備銀(RBA)は経済のソフトランディング(軟着陸)に失敗し、リセッション(景気後退)には陥らないものの、長期平均を大きく下回る低成長となる見通し。同銀は、23年通年の実質GDP成長率を1.7%、23/24年度(23年7月〜24年6月)を0.3%と予測している。

■ソース
Australia & New Zealand Weekly, Week beginning 5 December 2022, Westpac Institutional Bank
Economic Update, 07/12/2022, Gareth Aird, Global Economiic and Market Research, Commonwealth Bank of Australia

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