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侵略の「贖罪」と分断に揺れるオーストラリア 治安が急速に悪化する先住民社会の闇

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「人権侵害」と批判された強制介入は期限切れ

2020年1月26日、「オーストラリア・デイ」は「侵略の日」だと訴えて行進するデモ参加者(Photo: Johan Mouchet on Unsplash)

 アンソニー・アルバニージー首相の中道左派・労働党政権が目指す憲法改正の是非は、先住民への侵略という「贖罪」を抱えるオーストラリア社会の将来にとって、重要な試金石となりそうだ。

 オーストラリア先住民は、オーストラリア大陸に最大6万年以上前から居住していたとされるが、18世紀の英国植民地化以降、西洋人が持ち込んだ伝染病や弾圧で急激に人口を減らした。オーストラリア連邦が設立された20世紀以降も先住民の子どもの強制隔離政策などで迫害を受けた。

 しかし、20世紀後半以降、先住民の権利を回復させる動きが拡大した。1993年には先住土地権が認められ、2008年には当時のケビン・ラッド首相(労働党)が過去の侵略と隔離政策を正式に謝罪した。

 近年は、1月26日の祝日「オーストラリア・デイ」を「侵略の日」に改めるべきだとの声も、主にリベラル派の間で高まっている。1788年に第1船団がシドニーに上陸して英国植民地化を宣言した日だからだ。この日はオーストラリア国旗とアボリジニ旗の2つを掲げて歩く人が増えており、一般国民の間でも謝罪の空気が広がっている。

中央部アリス・スプリングスで禁酒令が一部再開

 一方、非先住民と先住民の社会的な格差は是正されていない。先住民の平均余命は全国平均と比べて短い。先住民社会の犯罪率の高さや治安の悪さ、勾留中の先住民の不審死なども長年、社会問題となってきた。

 2007年には、北部準州の遠隔地に点在する先住民居住区で、子どもへの性的虐待や暴力、アルコール・薬物中毒のまん延など、荒廃した実態が明るみに出たため、連邦政府が治安部隊を投入して介入。治安悪化の理由の1つとされたアルコール販売も禁止した。

 こうした政府による強制的な介入は、国際社会から人権侵害との批判を浴びたものの、治安の向上には一定の成果は挙げたとされる。

 ところが、アルコール禁止など一連の法律の期限(15年間)が22年に切れると、北部準州の中心都市アリス・スプリングスでは、子どもや若者が酒に酔って暴力を振るったり、商店を破壊したりするなど治安が急速に悪化した。

 事態を重く見たアンソニー・アルバニージー首相は今年1月、現地を訪れて準州政府と協議し、禁酒令の部分的再開が決まった。規制の内容は次の通り。

◇月曜日と火曜日は酒販店でのアルコール飲料販売を全面的に禁止
◇他の曜日のアルコール飲料販売は午後3時から午後7時までの4時間に制限
◇アルコール飲料の販売は1日当たり1人1回のみに制限

 アルバニージー首相は大局的な国家像を変える改憲を目指す一方で、先住民社会の治安悪化という目の前の問題をどう解決するか。リーダーシップの手腕が問われている。

■ソース
New alcohol restrictions, funding promises and the potential return of blanket alcohol bans. Here’s what’s been announced for Alice Springs(ABC News)

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