約8万人の富裕層狙い撃ち、優遇税制見直し
オーストラリアのジム・チャーマーズ連邦財務相(労働党)は28日、確定拠出年金「スーパーアニュエーション」(スーパー)の掛金に対する優遇税制を見直し、富裕層に限定して税率を2倍にする増税案を発表した。公共放送ABC(電子版)が伝えている。
スーパーの掛金に対する税率は現在、所得や口座の残金にかかわらず一律15%。老後のための円滑な資産形成を促すため、平均的な所得税率と比べて低い優遇税制となっている。しかし、政府案ではスーパー口座の残高が300万豪ドル(約2億7,500万円)以上の富裕層に限り、掛金の税率を15%から30%に引き上げる方針だ。
チャーマーズ財務相によると、スーパーの平均残高は約15万豪ドル。残高300万豪ドル未満の人への税率は現行の15%と変わらないため、ほとんどの人は優遇税制見直しの影響を受けない。増税の対象となるのは約8万人で、全スーパー口座数の0.5%に満たない。
政府は、25年までに行われる次期連邦選挙後、2025/26年度(25年7月1日〜26年6月30日)中の施行を目指している。
20億豪ドルの税収増見込む
スーパー優遇税制の見直し策には、コロナ経済対策で赤字が膨らんだ連邦政府の財政を立て直す狙いがある。政府は富裕層へのスーパー税率を引き上げることで、年間20億豪ドルの税収増につながると試算している。
税制の変更で歳入を増やせる余地は狭まっている。保守連合(自由党、国民党)の前政権時代から24年7月までに3段階で実施している所得税減税は、与党労働党も野党時代に賛成しており、今さら手が付けられない。法人税の引き上げも、国際競争の観点から難しい。
このため、「一部の富裕層をターゲットにしたスーパー税率の引き上げなら、有権者の支持も得やすい」との考えに傾いたとしても不思議ではない。
一方、最大野党の保守連合は、選挙で「スーパー制度を変更しない」としていたにもかかわらず税率を見直すのは、公約破りだと与党を批判。税率引き上げに反対する姿勢を鮮明にしている。
オーストラリアのスーパーは、フルタイムやパートタイムなどの雇用形態に関係なく、すべての勤労者が給与の一定割合を老後の資金として積み立てる仕組み。加入者の資金を年金基金(スーパー・ファンド)が債券や株式、不動産信託などの金融商品に投資して運用する。企業は従業員の所定内賃金の10.5%を別途、スーパーに拠出することが義務付けられている。企業の負担割合は25年に最大12%まで段階的に引き上げられる。
■ソース
Treasurer Jim Chalmers caps super tax breaks for accounts with more than $3 million(ABC News)