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宿命のライバル、アサヒとキリンがオーストラリアで火花を散らす理由とは? ①ビール市場で日系2社が強い存在感

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4,600億円市場の覇権めぐり競争激化

グラフ作成:©守屋太郎

 キリンホールディングス(HD)がオーストラリア市場への関与を強めている。1990年代に資本参加した後、2009年に完全小会社化した同国ビール市場2位の酒造大手ライオンを基盤に、M&A(合併・買収)を繰り返すなどプレゼンスを拡大。4日には、国際的な評価も高いクラフトジンのメーカー「フォー・ピラーズ」(南部ビクトリア州)も傘下に収めたと発表した。

 コア・ビジネスの酒造とともに、キリンHDが成長の柱と位置づける「ヘルスサイエンス事業」でも今年、大きな動きがあった。4月、中国市場に強みを持つオーストラリアの健康食品最大手「ブラックモアズ(シドニー)を18億8,000万豪ドル(約1,700億円)で買収する計画を発表。オーストラリア政府の外資審議委員会(FIRB)が4日、計画にゴーサインを出したことが明らかなった。ブラックモアズの株主総会と裁判所が承認すれば8月にも買収を完了する見通しだ。

 一方、日本のビール市場でキリンと天下を競ってきた宿命のライバル、アサヒグループホールディングスもオーストラリアに狙いを定めてきた。09年に英菓子・飲料大手「キャドベリー・シュウェップス」からオーストラリア飲料部門(ペプシ、ソロなど)を買収したのを足がかりに、20年にはオーストラリアのビール最大手「カールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ」(CUB)を親会社の世界最大手「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」(ベルギー)から取得。48億5,000万豪ドル(約4,600億円=2021/22年度=調査会社アイビスワールド推計)のオーストラリア・ビール市場で、先行していたキリンHDを一気に抜いてトップランナーに踊り出た。

 アイビスワールドのビール業界リポート(23年2月)によると、現地法人アサヒホールディングス・オーストラリアは22年に国内ビール販売1位の「グレート・ノーザン」、メルボルンを中心に人気が高い「ビクトリア・ビター」(VB)をはじめ推計25億6,150万豪ドル(前年比4.9%増)を売り上げ、53.0%のシェアを獲得している。

 対するキリンHD傘下のライオンは、シドニーなど東部ニューサウスウェールズ州発祥の「トゥーヒーズ・ニュー」、北東部クイーンズランド州を代表する「フォー・エックス」などを手がけ、22年の売上高は推計15億6,460万豪ドル(2.2%減)、シェアは32.4%だった。

 アサヒ、キリンの日系大手2社は合計で市場の85.4%を寡占。シェア4.0〜5.0%(23年推計)とされる3番手の地場メーカー「クーパーズ・ブリュワリー」(南オーストラリア州)を大きく引き離している。

「②オセアニア事業は日系2社のドル箱に」へ続く)

■ソース

AUSTRALIA INDUSTRY (ANZSIC) REPORT C1212 “Beer Manufacturing in Australia”, February 2023(IBISWorld)





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