検索
Close this search box.

ワラビーズ対決で予期せぬアクシデント !? /Go! ワラビーズ in Japan

SHARE
ジョシュア・ケレビ選手(シャトルズ愛知)
元ワラビーズのリアム・ギル選手(D-Rocks) 

 2024年最初の取材は1月13日、リーグワン・ディビジョン2の浦安D-Rocks(以下、D-Rocks)対豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、シャトルズ愛知)の一戦。D-Rocksには元ワラビーズのイズラエル・フォラウ選手、リアム・ギル選手、そして今期東京サントリーサンゴリアスから移籍した現役ワラビーズのサム・ケレビ選手が所属している。

 対するシャトルズ愛知にはジョシュア・ケレビ選手、ジョネ・ケレビ選手と、2人のケレビ選手がいる。この2人こそが対戦相手D-Rocksのサム・ケレビ選手の兄と弟なのだ。兄のジョシュア選手と弟のジョネ選手は日本のラグビー強豪校の1つである天理大学を卒業後、日本でプレー。ジョシュア選手はセブンズ日本代表経験もある。

 ワラビーズの活躍とケレビ兄弟の対決を期待していたものの、この試合に出場するのはD-Rocksはリアム・ギル選手、シャトルズ愛知はジョシュア・ケレビ選手の2人だけ。楽しみな顔触れがそろっていただけに残念ではあったが、2人のプレーを楽しもうと会場へ向かった。しかし、この後思いもしない出来事に遭遇した。

 試合前の練習時間には、雲の隙間から日差しが感じられる空模様だったが、ゲームが始まるころには、会場上空に厚い雲が広がった。

相手選手が蹴ったボールにチャージに行くギル選手(D-Rocks)

 FLリアム・ギル選手の攻守にわたる献身的なプレーが功を奏し、先制点を入れたのはD-Rocks。強烈なタックルはもちろんのこと、ここぞというポイントにはギル選手がいると感じさせるほど常に接点に絡み、ジャッカルのチャンスを虎視眈々(こしたんたん)と狙うなど、見る者にわくわく感を与えるプレーは、さすがワラビーズに選出されただけのことはある。

 一方、相手にずっと主導権を握られていたこともあり、シャトルズ愛知のWTBジョシュア・ケレビ選手にはボールがなかなか回らず、サム・ケレビ選手同様の力強く鋭いランを観ることは叶わなかった。しかし、印象的だったのは、周りに常に声を掛け続けていたそのコミュニケーション力。次回はぜひとも、彼のWTBとしてのランを見てみたいものだ。

 試合が進むにつれ、冷たい風が強く吹き付けるようになり、30分を過ぎたころにぽつりぽつりと雨が降り始めた。比較的小規模なスタジアムで、来客数も1000人強と多くはなかったが、屋根のある場所へと一斉に観客が動き出した。

 一進一退の攻防が続く中、33分にD-RocksがPGを決めて10−7とリード。シャトルズ愛知は38分、PGを外し、2点差で前半を終えた。まだまだ勝敗は分からない点差。雨が強くなってきたこともあり、後半のゲーム展開が興味深いところだった。

日本代表経験者、ヴィンピー・ファンデルヴァルト選手(D-Rocks)

 後半戦が始まるころには、雨に霙(みぞれ)が混じり始めていた。選手たちの着替えたばかりのジャージはぐっしょりとぬれ、ボールを持つ手は滑り、見るからに足元も重い。次の瞬間、大きな閃光が走り、その雷鳴に驚いたスタンドの観客からは悲鳴が上がった。

 主催者から試合の一時中断の指示。選手たちはドレッシング・ルームに戻り、観客にはコンコースへの避難指示が出された。その後も、雷鳴と閃光(せんこう)は続き、霙は雪へと変わっていった。試合中、「雷雪(らいせつ)」などというシチュエーションにはなかなか出合えるものではないだろう。

今シーズンからコーチに就任した元スコットランド代表のグレイグ・レイドロー氏(D-Rocks)

 筆者はメディア・ルームに戻り、事の次第を見守っていたが、この対応に苦慮していたのが主催者だった。観客と選手たちの安全が守れるのか。天気図を見ながら事務局と何度も協議を重ね、最終的には試合再開のめどが立たなかったため中止を決定。47分時点での試合成立が決定し、10−7でD-Rocksの勝利となった。

 シャトルズ愛知からすれば、さあこれからというところで非常に残念な結果となってしまった。「80分トータルで我々はこの試合のプランの準備をしていた」という徳野HCのコメントに無念さを感じる。

 D-Rocksのヨハン・アッカーマンHCは「選手時代も含め初めての経験」と驚いていたが、筆者自身観戦中の試合が雷で中止となった経験が過去に1度だけある。トップリーグ時代の2008年9月21日、東大阪市の花園ラグビー場での近鉄対ヤマハ発動機の試合だった。しかし、この試合は開始前に中止が決定したため、後日、再試合となったのだった。

 新年早々期せずして「雪雷」という貴重な体験をしたが、今シーズンのワラビーたちには幸運が訪れることを願いつつ、次なるハプニングを楽しみにしておくことにしよう。

このコラムの著者

山田美千子

山田美千子

ラグビーに魅せられおよそ20年。「強い時も弱い時も、ナンバー・ワンはいつでもワラビーズ!」と、自他共に認めるワラビーズ・オタク。歴代の愛犬の名前はワラビーズ選手が由来。得意なことは、ワラビーズの次世代エースを見つけること。苦手なことは、写真を撮られること





SHARE
Google Adsense