幸せワイン・ガイド@オーストラリア
ペット・ナット
最近よく見かける「ペット・ナット(Pet Nat)」と呼ばれるスパークリング・ワインをご存知ですか?ペット・ナットとは、フランス語のペティヤン・ナチュレル(Petillant Naturel)の略で、自然派ワインの生産者が作るスパークリング・ワインです。
オーストラリアで最初にペット・ナットで商業的に成功したのはおそらくキャンベラ・ディストリクトのササフラス・ワインズ(Sassafras Wines)で、その後アデレード・ヒルズの小規模な自然派生産者を中心に広まりました。初期のころは澱が多いものも多くみられましたが、最近ではよりクリーンなスタイルで、なおかつ品質が安定したものが増えてきました。
ほんのり甘みを感じられるものが多く、口当たりはフレッシュで気軽に楽しむことができます。泡は優しめで濾過していないものも多く、あらごししたフレッシュ・ジュースのようなまろやかな口当たりと爽やかなのどごしも魅力の1つです。
スパークリング・ワインはどうやって作られる?
まずアルコール発酵とは、糖を分解してエタノール(アルコール)と二酸化炭素が発生するプロセスのことです。この二酸化炭素をさまざまな方法でワインに閉じ込めることで、シュワシュワとしたワインが出来上がります。
シャンパーニュに代表される高級スパークリング・ワインは「伝統方式」または「瓶内二次発酵方式」と呼ばれる製法で作られます。一旦通常の方法で発酵させたワインを瓶詰めし、そこに酵母と糖分を添加することによりもう一度瓶内で2回目の発酵をさせることにより、炭酸ガスを発生させる方式で作られています。そして2度目の発酵を瓶ではなく大きなタンクで行う方法、これは「タンク方式」あるいは「シャルマ方式」と呼ばれ、プロセッコなど香りが華やかなブドウから大量にスパークリング・ワインを作ることができます。
これに対しペット・ナットは「田舎方式(またはメソッド・アンセストラル)」と呼ばれる方法で作られるスパークリング・ワインです。他の生産方法と大きく異なるのが、アルコールの発酵は一度のみという点です。最初の発酵途中でまだ糖分がある状態で瓶詰めし、アルコール発酵をそのまま継続させることにより、炭酸ガスが瓶内に閉じ込められます。ペティアン・ナチュレルは、文字通り最もナチュラルな製法で作られるスパークリング・ワインで、この古典的な製法のスパークリング・ワインが、近年の自然派ワインの人気の高まりとともにファッショナブルなワインとして認識されるようになりました。
また、伝統方式のスパークリング・ワインはシャルドネやピノ・ノワールといったシャンパーニュと同じ品種で作られるものが大半ですが、ペット・ナットにはシュナン・ブラン、ガメイ、ソーヴィニヨン・ブランなど、より多様な品種が使われている点も楽しめる要素の1つでしょう。
ペット・ナットは何と合わせる?
少し甘さがあって「Gluggable(ガブ飲みできる)」ともよく称され、カジュアルに楽しめるペット・ナットは、ランチやピクニック用のワインとして最適です。
他のスパークリングと同様にアペリティフとして楽しむことはもちろん、フライド・チキンやフィッシュ&チップスなど、揚げ物などにも良いでしょう。私の個人的なお気に入りは夏っぽい日本のB級グルメに合わせることです。餃子や唐揚げ、お好み焼き、焼きそばなんかも楽しいですね。
どこで買えるの?
ペット・ナットは生産量が非常に少ないため、大手チェーンのボトルショップにはなかなか売っていません。個人経営のワイン・ショップの方が手に入りやすいのと、レストランやワイン・バーでもワイン・リストに載せるお店が増えて、比較的いろいろなお店で楽しめるようになりましたので、見掛けたらぜひお試しくださいね。
このコラムの著者
フロスト結子
オーストラリアと日本でワイン業界に携わり10年以上。ワイン卸業社に勤務しながらフリーランスでもワイン専門通訳、翻訳、ライター、市場調査、イベントなど幅広くこなす。私生活ではマラソン・ランナー。世界最大のワイン教育機関WSETの最上位資格、WSET®︎Diploma in Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。 Web: auswines.blog.jp