フィジオセラピストに聞こう 体の痛み改善法
パンデミック後、足が痛い! なぜ?
去年の3月末からの厳しい行動制限。その後も運動不足に食べ過ぎや飲み過ぎがたたり、体が重く怠いと感じている人は多いのではないでしょうか。新年を契機に運動を始めたり、運動不足を取り戻そうとエクササイズの頻度や量を増やした方も多いことでしょう。
フィジオ業界ではいまだかつてないほどの勢いで足や足首、ひざのけがで受診する方が増えています。在宅勤務の反動で、急な運動のし過ぎが原因のようです。他には、外出が減っているため、もしくは土踏まずの支えのないスリッパや裸足で過ごす時間が増えたことが足を痛める要因になったと考えられます。オーストラリア・ポダイアトリー協会は70%の人が在宅勤務の際は出社して勤務する際と比べて足の支えの少ない履物や裸足で過ごし、3人に1人が足や下肢の痛みを訴えウォーキングや運動が減ってしまっていると報告しています。
以下はよく見受けられるストーリーです。
- ロックダウン中に運動を止めてしまった。ジムのメンバーシップも止めている。
- ロックダウン解除後、生活リズムを戻せないまま年末年始を迎え、食べて飲む機会が増えた。
- 新年になり気持ちも新たにランニングなどを始めたが、頑張り過ぎた。
- そのうち足が痛くなり始め、少し続けたが痛みが悪化し、全ての運動を止めてしまった。
- フィジオに来院、オーバーユースによるけがと診断される。
このような場合、すねの痛みを伴うシンスプリントやひざの痛み、足底腱膜の痛み、そしてアキレス腱の痛みを訴えられる方が多いです。
長期にわたり運動量の減少があった後、安全に運動に復帰するには毎週10%を上限としてゆっくりと着実に運動量を増やしていくことです。例えば、「全く運動していなかった状態」から「10キロ・マラソン完走」を目標とすると、まず1週目は週3回、1キロの距離をウォーキングかランニングから開始。そして1カ月後に1.5~2キロの距離を週3回、と毎週10%のペースで徐々に強度を高めていきます。このペースだと10キロまで1、2年掛かりますが、それが無理なく体が順応するのに掛かる時間です。
足の痛みや腓返(こむら)り、浮腫(ふしゅ)やしびれのような症状が足に出ている場合はけがではない可能性もありますので、すみやかにGPを受診し、問題がなければすぐにリハビリを開始するようにしましょう。
セラピスト紹介
奥谷 匡弘(ただひろ)
オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。セント・ヴィンセント病院で勤務後、自身のクリニックでプロ・スポーツ選手や財界の著名人の治療に多く携わる。特に顎関節症や頭痛治療に造詣が深く、セミナー講師も務める。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au/