オーストラリアの日系コミュニティー・ニュースをお届け!
Japanese Community News
オーストラリアにおける日系コミュニティーのニュースや最新情報を紹介していくと共に、シドニーを中心に各地で行われるセミナーやイベントの告知や報告などを掲載。
ジャパン・ロードショー2019開催
日本から自治体関係者ら53団体が来豪
日本政府観光局(JNTO)シドニー事務所は昨年12月9日、シドニーCBDのフォー・シーズンズ・ホテルでトラベル関連セミナー「Japan Roadshow 2019」を開催した。日本の地方自治体関係者や観光関連企業ら53団体がブースを出展、オーストラリアの現地旅行会社の関係者らを中心に約300人が参加し、商談を行った。
商談会に先駆け登壇した紀谷昌彦・在シドニー日本国総領事は、航空路線の増便、五輪やワールドマスターズ・ゲーム、大阪エキスポなど、国際的なイベントが今後数年間にわたって行われることなどを例に挙げ、日豪間の更なる交流深化への期待を話した。
また、女子ソフトボール・オーストラリア代表で、現在は日本女子ソフトボール・リーグでプレーするステイシー・ポーター選手が特別ゲストとして登壇。自身の経験を元に日本の魅力に関するスピーチを行った。
海外からの訪日観光客数は年々増加しており、オーストラリアからの観光者数は今年60万人の大台を超える見込み。訪日需要の高まりから、同セミナーへの参加者数も増え続け、出展ブース数、参加者数共に過去最高を更新した。
JNTOの田中陽子所長は「2020年は五輪の年ということで五輪選手で日本にも造詣の深いステイシー・ポーター選手をお招きした。引き続き訪日観光客誘致の活動にまい進していきたい」と話している。
ロバート・ジョン・グリフィス氏に叙勲伝達式
キャンベラの日本大使公邸で昨年12月13日、令和元年春の外国人叙勲伝達式が開かれ、NSW州中部のカウラ日本庭園文化センター財団理事長のロバート・ジョン・グリフィス氏へ旭日双光章が授与された。グリフィス氏は、オーストラリアにおける日本文化の紹介及び対日理解の促進に寄与した。
式典にはグリフィス氏の家族や友人も列席。髙橋礼一郎・駐オーストラリア日本国特命全権大使がグリフィス氏の功績を称える祝辞を述べ、グリフィス氏が答礼のスピーチを行った。
第2次世界大戦中に捕虜収容所があったカウラでは1944年8月、日本兵捕虜が大量脱走を図り、交戦で多数の死者が出たが、戦後、地元住民と日豪の協力によって戦没者墓地や日本庭園などが整備され、現在は日豪の和解と友好を象徴する町となっている。
在シドニー日本国総領事、豪ダイキン工場を視察
紀谷昌彦・在シドニー日本国総領事は昨年12月13日、設立50周年を迎えたダイキン・オーストラリアのシドニー郊外リバプールの製品工場及び物流拠点「ダイキン・パーク」を視察した。
1982年設立の同工場は豪州の住宅構造に合わせて開発されたダクト室内機を中心に製造し、2018年の製造台数は8万1,000台。紀谷総領事は、19年に拡張工事を完了した同工場で新たに業務用エアコン(ルーフ・トップ)の製造を開始していることや、製品の試験室を新たに設置したことなどの説明を受けた。同社は、製品開発や技術者の育成を行うと共に、日本と季節が逆であることを生かし通年で冷暖房試験も行うなど、同工場をダイキンの南半球のR&D拠点として成長させていきたい考えだという。
ダイキン・パークは、従来個々に行ってきたダイキンの製品・部品の物流を統合するため、18年に設立された同社の物流拠点。豪州のみならずニュージーランドなどもカバーし、5万2,000平方メートルの広大な倉庫面積に、4万2,000点の製品と多数の部品を保管している。
セミナー「IFRS新基準適用の影響分析」を開催
シドニー日本商工会議所
シドニー日本商工会議所の電子機器部会(部会長=高橋志織:シチズンウオッチ オーストラリア)と機械・建設・自動車部会(部会長=嘉手納士郎:トヨタファイナンス オーストラリア)は昨年11月20日、「IFRS新基準適用の影響分析」と題しセミナーを開催、21人が参加した。
当日は、KPMG監査マネジャーの藤岡義博氏と同監査ディレクターの黒葛原啓一氏が顧客との契約から生じる収益(IFRS15)とリース新基準(IFRS16)について、具体的な事例を交えながら解説した。
「オーストラリア就労ビザ・セミナー」を開催
シドニー日本商工会議所
シドニー日本商工会議所(会頭=宮地宏:オーストラリア三菱商事会社)の企画委員会(委員長=馬島知恵:日立オーストラリア)は昨年11月29日、シドニービジネス塾「日系企業のためのオーストラリア就労ビザ・セミナー ~TSSビザの最新動向~」を開催、35人が参加した。
講演では、大手会計事務所「アーンスト・アンド・ヤング」のグローバル・イミグレーション・リーダーであるウェイン・パーセル氏から、TSSビザの概要や職業リスト更新のプロセス、またビザに関する最近の動向などについて説明を聞いた。
シドニービジネス塾は、シドニー日本商工会議所が不定期で開催するセミナー。会員企業向けに、ビジネスや企業運営に関わる最新情報を提供している。
セミナー「最新テクノロジーを体感する」を開催
シドニー日本商工会議所
シドニー日本商工会議所の観光・運輸・通信・生活産業部会(部会長=三浦順:KDDIオーストラリア)は昨年12月5日、「最新テクノロジーを体感する ~IoT/AI/VR/アナリティクス~」と題しセミナーを開催、19人が参加した。
当日は、ウイングアーク・オーストラリア(Wing Arc Australia)の早川正明氏と三浦部会長が最新のテクノロジーを活用したデジタル化の取り組みについて、実例を交えながら解説した。
また、スマート・グラスのデモ体験を行うなど、参加者は最新テクノロジーを体感した。
2019年クリスマス・パーティーを開催
シドニー日本人会
シドニー日本人会(会長=中城英喜:三菱UFJ銀行)のレクリエーション委員会(委員長=笠原昌哉:JTBオーストラリア)は昨年11月27日、フォーシーズンズ・ホテル・シドニーで真夏の恒例イベント「クリスマス・パーティー」を開催。日本人会員を中心に81人が参加した。
今年の総合司会は、山田俊哉氏と田中麻里香氏が担当。中城会長による開会のあいさつ、紀谷昌彦・在シドニー日本国総領事によるあいさつと乾杯の音頭で開会した。日本人会員のボランティア・スタッフの協力の下、会員企業から寄贈された豪華賞品が当たるラッフル抽選会や、平井虹映氏の司会によるテーブル対抗トリビア・クイズなど、大盛況のパーティーとなった。
JET経験者が集うレセプションで交歓の輪
ブリスベン総領事公邸で
在ブリスベン日本国総領事公邸で昨年11月22日、同総領事館主催の「JET参加者交流レセプション」が、QLD州在住JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Programme)経験者らを招いて催された。JETプログラムは、日本の地方公共団体が総務省、外務省、文部科学省及び財団法人自治体国際化協会(CLAIR)の協力の下で語学指導などを行う外国人青年招致事業。
同レセプションの冒頭、田中一成・在ブリスベン総領事が、かつて自身の在メルボルン総領事館勤務時にJET参加者の選考・派遣に携わった経験を交えて述べた歓迎の辞に続き、JET派遣に尽力するCLAIRの菊田大介所長補佐、QLD州のJET参加者同窓団体JETAA QLDのオリビエ・アラール会長がスピーチ。更に、日本への旅行手配で急成長するツアー会社インサイド・ジャパン・ツアーズ・オーストラリア支社長のティム・オークス氏も登壇し、JETでの日本滞在経験を生かした今後のキャリア・パスに関して、自らもJET参加者である経験を踏まえて若い参加者に軽妙な語り口でアドバイスを行った。
当日参加したQLD州のJET経験者23人のち13人が過去5年以内に帰国した比較的若い層だったが、中には1987年のJETプログラム第1期生の顔も見られた。人口10万人あたりの日本語学習者数が世界一(国際交流基金調べ)の豪州の中でも、QLD州は有数の日本語学習熱を誇り、自他共に認める「知日家」のJET経験者らがそれを下支えしている。情報交換を兼ねての親睦の夜は、世代を超えた交歓の輪の広がりと共に更けていった。
VIC州運転免許証への切り替えを
居住後6カ月以内に
ビクトリア(VIC)州では、昨年10月の道路交通法(Road Safety Act 1986)の改正及びドライバーへの新たな規制(Road Safety (Driver) Regulations 2019)の施行により、居住者はビクトリア州運転免許証への切り替えが必須となっている。
ビクトリア州に居住する人で、他州及び海外の免許証、国際免許証で運転している場合、同州居住後6カ月以内にビクトリア州運転免許証(または仮免許証)への切り替えが必要。従来、同州免許証への切り替えは永住ビザ保持者にのみ求められていたが、現在はビザの種類にかかわらず切り替えるよう変更された。
短期滞在については従来通り、有効な海外免許証とその英訳、または国際免許証を携帯して運転することができる。
ビクトリア州運転免許証への切り替えは、以下のビクトリア交通局のウェブサイトから、運転歴、年齢などの該当項目ごとに取得可能な免許証の種類を確認の上、取得の予約ができる。
■VicRoads(ビクトリア州交通局)
Web: vicroads.vic.gov.au/licences/renew-replace-or-update/new-to-victoria
岩手産A5和牛輸入開始、試食会開催
シドニー、チャイナタウンで人気の大型中華料理店・ゴールデン・センチュリーで昨年12月10日、岩手産A5和牛の試食会が開催された。同店オーナーのエリック・ワン、リンダ・ワン夫妻、輸入を請け負う食肉卸大手企業の関係者らが参加した。試食会のアレンジは鱒屋インターナショナル社長のケン定松氏。2018年に輸入解禁となった日本産和牛だが岩手和牛が本格的にシドニーに輸入されるのは初めてのこと。輸出は食肉のサプライヤー事業を行い、近年、特に海外への輸出事業に力を入れている日本の大手、小川フード&サービス株式会社。定松氏は「今年3月後半にも岩手県産和牛のプロモーションを予定している」と話している。
善意の循環で幸福な社会の実現を
ペイ・フォワード・カフェ開催
シドニー北郊ニュートラル・ベイで昨年12月1日、東日本大震災復興支援活動の一環であるペイ・フォワード・カフェが、日本食レストラン・とびきりを会場に開催された。ペイ・フォワード・カフェとは、サービスに対して金銭を支払うペイ・バックではなく、次のお客のために支払いをする方式で運営されるカフェ。
メニューに定価は設定されておらず、来店者が受けるサービスは、以前にペイ・フォワード・カフェを利用した人の寄付によって成り立っている。今回の開催資金は、福島県で行われた同カフェで集められた寄付金によって賄われた。カフェでは頼んだメニューと共に、福島県で同カフェを利用した人からのメッセージも添えられた。今回のシドニーで集まった寄付金は次回、福島県で行われる同カフェの運営に当てられる予定だ。
店内は多くの客で賑わい、福島への思いを巡らせながら次の開催地の客へのメッセージを書き添えた。主催は、福島県出身の一條仁氏。シドニー日本クラブ(JCS)で、東日本大震災の復興支援活動を行うレインボー・プロジェクトの活動の一環でシドニーを訪れた。
震災後に発足したレインボー・プロジェクトは、当初は被災児童の保養を目的としていたが、2年前から被災地を担っていく若者を応援する被災地リーダー若者育成プログラムを立ち上げた。一條氏はそのプログラムに選ばれる形で来豪し、数カ月の準備期間を経て同カフェを開催した。
一條氏は同カフェの開催を始めたきっかけを「あるホームレスとの出会い」と話す。ちょっとした善意がその人の人生を変える可能性があったことに気付き、活動を草の根にも広げたいと思うようになったという。「社会で息苦しさを抱える人びとに善意が届けば」と話している。
アジアTOPA、メルボルンで開幕
日本人アーティストも多数出演
3年に一度開かれる芸術祭「アジアTOPA(アジア太平洋舞台芸術トリエンナーレ)」が1~3月にかけて、今年もメルボルンで開催される。同イベントはアジアのコンテンポラリー・アートに特化した、オーストラリア最大規模の舞台芸術のトリエンナーレ。
オーストラリアを拠点に活動する和太鼓演奏集団「Taikoz」の公演や、中国系オーストラリア人の脚本家ベンジャミン・ロウの舞台作品など、国内アーティストの演目の他、日本出身の電子音楽家/ビジュアル・アーティストの池田亮司、サウンド・アーティストの鈴木昭男、舞踏家/振付家の笠井叡あきら、ダンサー/振付家の三東瑠璃ら、国際的な活躍で知られるアジア系芸術家のパフォーマンスがメルボルン各所で予定されている。また、同イベントの開催に合わせて、メルボルンのVIC州立美術館(NGV)は2月28日~10月4日にかけて「ジャパニーズ・モダニズム」と題した展覧会で、20世紀前半の日本のアール・デコ調建築、絵画、ポスター、ファッションなどの作品を展示している。
■Asia TOPA: Asia-Pacific Triennial of Performing Arts
Web: asiatopa.com.au
シドニー・フェスティバル「百鬼夜行」出演・演出
俳優・由良亜梨沙さんインタビュー
1月8~26日に開催されるシドニー・フェスティバルのプログラムの1つ「Night Parade of One Hundred Goblins(百鬼夜行)」は、日本の妖怪をテーマに、NSW州立美術館で演じられる身体表現の舞台作品だ。同作に出演し、演出も務める俳優の由良亜梨沙さんに、見どころを伺った。
――作品の成り立ちや表現のスタイルを教えてください。
NSW州立美術館で開催中の「Japan supernatural」展の、板谷広春や鳥山石燕による「百鬼夜行」の絵巻など、200以上の展示作品から着想しゼロから作り上げた舞台作品です。私たちは付喪神(つくもがみ)(道具や物に魂が宿ったもの)の他、ユニークな妖怪や幽霊の動き、表情、色や質を分析し、パフォーマーの「体」を使ってそれらを表現します。一般的な舞台と違って脚本がないフィジカル・シアターで、せりふは日本語と英語で少しだけ。前半は座って観る形式で、後半は階下の展示室へ誘導され新たな体験をするというライブ感あふれる2部構成です。
――シドニーを拠点に俳優として活動する由良さんですが、今回は演出も担当されています。
2016年に同美術館で開かれた月岡芳年の「月百姿」展の際、作品のモチーフである民話や人物を基に30分のパフォーマンスを作って演じたのですが、それがきっかけで今回も機会を頂きました。私がアンサンブル・メンバーとして所属するクロックファイア・シアター・カンパニーの芸術監督エミルー・エイヨブさんと一緒に共同監督を務めます。私は規模の大きな舞台を演出するのは初めてで、しかも今回は出演も。演出家はクモのように多くの目で客観的に作品を見て、多くの人と接します。演出家と役者として2つの帽子を被り分けることに、徐々に慣れていっています。
――とても意欲的な挑戦ですね。他にどのようなパフォーマーが出演しますか?
パフォーマーは私たち演出家も含め6人。日本人メンバーは、オーストラリアで活動するコンテンポラリー・ダンサーの藤原隆一さん、太鼓グループYuNiOnのパーカッショニストの池川昌枝さんがいます。今回は各分野で活躍するお2人ともコラボラーションができて本当にうれしいです。
――同作を通して日本の魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界を体験する人に、メッセージをお願いします。
小さな頃からどこか身近に感じてきた妖怪という存在は、日本独自の文化。シドニーで子どもも大人も楽しめる芸術作品を通して日本の伝統文化を再発見することで、新しい創造も起きているので、ぜひ体感してほしいです。ただ、妖怪の世界ですから、無事に美術館から出られるかは保証できませんよ(笑)。
■Night Parade of One Hundred Goblins
会場:Art Gallery of New South Wales(Art Gallery Rd., The Domain)
日時:1月16日(木)~18日( 土)、23日(木)~25日(土)7:45PM/9:15PM
料金:大人$65、コンセッション$60、子ども$30(全て「Japan supernatural」展の入場料込み)※8歳以上推奨
Web: artgallery.nsw.gov.au/calendar/night-parade-hundred-goblins
由良亜梨沙(ゆらありさ)◎シドニーを拠点に俳優、ナレーター、ライターとして日豪の他、カナダやアメリカの映画やテレビなどで活躍中。
Web: arisayura.com
SBSラジオ日本語放送1月のハイライト
SBSラジオ日本語放送は毎週、火曜、木曜、土曜の午後10~11時に番組を放送している。番組は、AMラジオ1107khzにチューンを合わせる方法と、デジタル・テレビのデジタル・ラジオ「SBS Radio1」を選択する方法で聞くことができる。
1月のシドニーサイドでは、シドニーで活動する朗読の会「声」や、昨年シドニーで新作足袋「SAMURAI TABI」のショーを開いた埼玉県行田市の小松和弘さんのインタビューなどを放送予定。また、12月にオペラハウスで行われた「令和日本伝統芸能祭」で日本から参加し剣舞を披露した荒井龍凰さんへのインタビューや関連リポートなど、聞き逃してしまった先月の放送もSBSのウェブサイトで聞くことができる。
なお、毎月最終週の木曜には、日豪プレス翌月号の見どころや取材の裏話などを編集部スタッフが紹介している。次回は1月30日(木)放送予定。
■SBSラジオ日本語放送
Email: Japanese.program@sbs.com.au
Web: www.sbs.com.au/Japanese
Facebook: www.facebook.com./SBSJapanese
令和日本伝統芸能祭、オペラ・ハウスで開催
日本伝統芸能の祭典「令和日本伝統芸能祭」が昨年12月16日、シドニー・オペラ・ハウスの「ザ・スタジオ」で開催された。主催はシドニー日本クラブ(JCS)の傘下団体、レインボー・プロジェクト。複数の日本の伝統芸能がシドニー・オペラ・ハウスで披露されるのは初めてのことで、用意された390席は全て完売した。
会場では、7組の日本人アーティストが、それぞれ、琴演奏(小田村さつき)、生け花(多田喜巳)、沖縄の歌三線(美音withいちまでぃん)、日本舞踊(西川ひろぎく)、剣舞(荒井龍凰)、鬼剣舞、和太鼓(共にTaikOZ)を披露。沖縄の歌三線のシーンでは、カチャーシー(沖縄の踊り)も行われ、会場の客を巻き込む盛り上がりを見せた。
終了後は、一部VIPチケットを持つ人びとを対象にパフォーマーとの交流会も開催された。会場では沖縄の泡盛が提供された。
レインボー・プロジェクトは東日本大震災以降、これまで数多くの復興支援イベントを開催してきた。代表の平野由紀子氏は「活動を続ける中、多くのパフォーマーと知り合い、いつしか日本の伝統芸能を広くシドニーの人びとに知らしめるイベントを開催したいと考えるようになった。令和という新しい時代に、また東京五輪を目前に控えたこの時期に開催できてうれしい」と話している。
路上バイオリン演奏でチャリティー活動
GC日系小学生の音楽ユニット
QLD州ゴールドコースト(GC)で、日本人の母を持つ小学生ハナ・チャンドラーさん(11歳)とオーロラ・トムズさん(12歳)によるバイオリン・ユニット「Hana & Aurora」がスクール・ホリデー期間中、路上で慈善目的のパフォーマンス活動を行っている。
同ユニットは、GCブロードビーチのモール・ステージなどでクラシックやポップスなどの楽曲を毎週日曜日に演奏している。ここ数年ビーチ清掃などのボランティア活動を続けてきたハナさんと、8歳の時に父親を脳腫瘍で亡くしたオーロラさんが、音楽による路上パフォーマンスでチャリティー団体への寄付を募りたいと考え、昨年12月の小学校卒業のタイミングで活動をスタートした。共に5歳、6歳からバイオリンを始め、それぞれの学校のオーケストラでキャプテンを務めた経験も持つ。1月27日までの活動を予定している。
2人の演奏で得られた利益は、「オーストラリア癌評議会(Cancer Council)」や、干ばつ・山火事などの被害に遭った農家を支援する慈善団体「ドラウト・エンジェルズ(Drought Angels)」に寄付するとしている。
NSW南部ゴールバーンでジブリ作品上映会
NSW州南部ゴールバーンで日本文化に親しむ学生らによる「ジャパン・ゴールバーン・フレンドシップ・クラブ」は2月7日、スタジオ・ジブリの映画作品『ハウルの動く城』の上映会を開催する。対象は小学校から高校までの児童・生徒だが、日本語や日本文化に興味を持つ全ての人が参加できる。
同クラブは、ゴールバーンのトリニティー・カトリック・カレッジのメンバーを中心に発足し、今回が初のイベント開催。上映会はゴールバーン・マルワリー市と同地区ユース・カウンシルがサポートする。同クラブは今後、1年を通して交流イベントを開催していく方針。同市は7月に北海道士別市から10人の交換留学生を迎える予定となっている。
■『ハウルの動く城』上映会
場所:Goulburn Mulwaree Council Civic Centre – Council Chambers(184 Bourke St., Goulburn NSW)
日時: 2月7日(金)5:30PM~7:30PM
Email: nokatunga@me.com(担当:Bev McGreevy)、(02)4823-4444(ゴールバーン・マルワリー市)
日系コミュニティーのシニアをサポート
ブリスベン「わははの会」
ブリスベン郊外のインドロピリー・アクティビティ・ハブで、日系コミュニティのシニア・サポート・グループ「わははの会」が毎月1回、第2火曜日に定例会を開いている。
「日本語で支え合うための『ご縁』をつなぐ」というキャッチフレーズで、2019年の2月に初開催された同会は、19年12月で11回目を迎えた。当初、30人ほどだった参加者数も次第に増えて、今回はボランティアを含め、41人が参加。シニアの参加者は13人だが、コミュニティー内でさまざまな知見を持つ専門家による「ちょっとためになる話」などの内容が口コミで評判を呼び、シニア層を含め参加者は増加傾向にあり、ボランティア希望者も後を絶たないという。
筆者が訪問した同回では、冒頭、エスニック・コミュニティー・カウンシル・クイーンズランド職員がシニアの健康全般に関する情報を日本語通訳付きで提供、参加者も真剣な面持ちで話を聞いた。その後、誕生月の参加者のスピーチや、日本の季節に合わせた唱歌をボランティアのピアノ伴奏で合唱。最後は、ブリスベンにある浄土宗阿弥陀寺の哲雄上人による「1年のすす払い」という講話を聞いてから散会。帰り際には、サニー・バンクにある日本人経営の人気ベーカリー「スイーツ&ローヴス」の特製アンパンがお土産として配られ、参加者は満足そうな様子で家路についた。
同会代表の1人である緒方弘美さんは「3年前に行った日系コミュニティー内でのアンケートの250件もの回答から、『集会所』のような場所が日系コミュニティーには必要とのニーズを確信した。その後、準備期間を経て、ようやく今年2月から始動した私たちの活動をもっと多くの方に知ってもらえれば」と語る。ブリスベンの日系コミュニティーの温かいつながりを感じに、ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。(文=本紙特約記者・植松久隆)
■わははの会
場所:Indooroopilly Activity Hub, 60 Stamford Rd., Indooroopilly QLD(インドロピリー・ショッピング・センターの横)
日時:毎月第2火曜10AM~12PM
参加費:$5(ホール使用料、お茶代込み)
問い合わせ先:shukaijobne@gmail.com または専用携帯電話0433-506-435
テニス土方凛輝選手が2年連続受賞
「ニューカム・メダル」ジュニア男子
メルボルンのクラウン・パラディアムで昨年12月2日、優れたテニス選手の活躍を称える「2019ニューカム・メダル・オーストラリア・テニス・アワード」の授賞式が開かれ、土方凛輝選手(18歳、マックヒジカタ・テニス・アカデミー)が最優秀賞である「ジュニア男子アスリート・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。同選手の同部門での受賞は2018年に続き2回目。同アワードはオーストラリア・テニス界の黄金時代を築いたジョン・ニューカム選手の功績を称えて創設され、その年の優れた選手、コーチ、クラブなどを表彰する。
土方選手は、2019年度グランドスラム・ジュニア部門の全大会でプレーし、オーストラリアの18歳以下の選手ランキング1位であること、更に昨年9月のアメリカ・プロ・ツアー優勝が評価され受賞に至った。授賞式は歴代グランドスラム優勝者も多数出席し華やかに執り行われ、土方選手はプレゼンテーターでNSW州の練習仲間でもあるアレックス・デミナー選手(ATP18位)からトロフィーを受け取り、受賞の喜びをスピーチした。
土方選手は今後、「全豪オープン2020」予選へのワイルド・カード(主催者推薦)を獲得した場合、出場2回目となる同大会に挑戦する。
奇跡ではなく必然――
アンジ・ポスタコグルー監督の快挙に寄せて
かつて豪州代表をアジアの頂点に導いたアンジ・ポスタコグルー(筆者注:日本では「アンジェ・ポステコグルー」の表記が一般的だが、2011年の初取材以来のこだわりの表記を貫かせて頂く)が、日本で豪州人監督として初めての快挙を成し遂げた。既報の通り、監督就任2年目で横浜F・マリノスを15年ぶりのJリーグ制覇へと導いたのだ。
今季、マリノスの超攻撃的サッカーはJリーグを席巻したが、そこまでに至る道程は決して平坦なものではなかった。初年度は、理想と現実の狭間にマリノスは揺れた。その年に日本にいた筆者は、ポスタコグルーの苦悩を豪州から見るよりリアリティーとして捉えることができた。自らの理想の戦術が浸透しきれず、攻める分だけ失点も増えるという戦いぶりで降格の危機に瀕しながらも、ポスタコグルーは自らの理想を貫き、ブレることはなかった。結果、マリノスは降格を免れた。
1年目に撒いた種から生まれた芽を辛抱強く育て、理想の戦術を具現化する理想の人材を確実にワンピースずつはめ込み、1つの完成形を作り上げた2年目のシーズン。マリノスのフットボールは、日本の全てのフットボール・ファンを魅了するものとなり、Jリーグ制覇というV字回復でのすばらしい結果に結実した。ブレない監督を選手が信じ、監督もまた自らが起用した選手を信じ続けたことで成し遂げられた今回の優勝は、決して奇跡ではない。起こるべくして起きた必然だった。
日本で“ボス”と呼ばれ尊敬を集めるポスタコグルーは、マリノスとの契約を1年更新した。来季は、Jリーグ連覇とともにアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)という真の“名門”に脱皮するために必要なタイトルを狙う戦いも待ち構える。そのACLでは、AリーグのシドニーFCと同組に入ったことで、20年のマリノスの豪州遠征が決まった。今や、豪州最高の指揮官としての名声を得ての母国凱旋、その時、名将は豪州の地でどんな戦いを見せ、何を語るのか今から楽しみでならない。(文=本紙特約記者・植松久隆)
■新刊紹介
『中欧の不死鳥 ポーランド不屈の千年史』
日本とポーランドの国交樹立100周年を記念し、シドニー在住の作家・岡上理穂氏によるポーランドの歴史を扱った単行本『中欧の不死鳥−ポーランド不屈の千年史』(出窓社)が昨年、出版された。
16世紀をピークに中欧で繁栄したポーランドはその後、隣国に国を奪われ、再興のための戦いを経て1918年に念願の独立を果たす。第2次世界大戦では再び、ナチス・ドイツとソビエト連邦による分割占領という苦難に苛まれ、89年に自由を取り戻すまではソ連の配下にあった。
同書は、国を失っても再興の火を灯し続けた有名無名のポーランド人の姿を軸に激動のポーランド史を語る。音楽家のショパンや科学者のキュリー夫人など同国出身の著名人だけでなく、20年代の日本赤十字によるポーランド孤児救済事業や、日本とポーランドの諜報機関の協力など、あまり知られていない2国関係などにも光を当てる。同書はシドニー紀伊國屋で販売中。
著者の岡上氏は、上智大学外国語学部ロシア語科卒業後、ワルシャワ大学大学院に留学。以来、長年にわたりポーランド社会と深い関係を築いている。主な著書に『ワルシャワに市民の歌声が聞こえる』(福武書店)、『オーストラリア的生活術』(出窓社)など。
キングスフォードでアジアの食・文化イベント開催
書家れん氏は大書を披露
シドニー南郊キングスフォードで昨年11月16日、アジアのストリート・フード・イベント「ヌードル・マーケット」が開催され、エンターテインメントのプログラムに日本人を含むアジア系のミュージシャンやパフォーマーが多数出演した。
2018年に引き続き同イベントに出演したシドニー拠点の書家・れん氏は、大書のパフォーマンスを披露。縦2メートル、横5.7メートルの紙に毛筆で「うまい料理・商売繁盛・地域のつながり」と書き、参加者の目を引いた。同氏は「地域密着型の親しみやすいイベントだった。初めて大書を見る人が多かったようだが、たくさんのお褒めの言葉を頂いた」とコメントした。
他に、中国やインドネシアの舞踊、韓国のK-POPに合わせたダンス、すし作りや招き猫の絵付けなどのワークショップも行われ、訪れた人にとってはアジアの伝統や文化に触れる機会となった。
■NSW州立美術館・日本語ボランティア・ガイド便り
2020年の展覧会情報
2019年11月から開催されている「Japan supernatural」展で年が明けました。300年にわたり日本美術に登場する妖怪の世界を楽しむ多くの人たちで、会場は連日大盛況です。同展は3月8日まで開催され、期間中は毎週土曜日に日本語ツアーを年末年始も休みなく行っています。展覧会の終わりに近づくと混雑も予想されます。子どもも大人も楽しんで頂ける展覧会ですので、お見逃しなく。今年のNSW州立美術館の展覧会 2020年の展覧会プログラムのうちいくつかをご紹介します。3月には現代美術の大型国際展「シドニー・ビエンナーレ」、5月はオーストラリアで最古の歴史と権威を誇るアーチボールド展がウイン賞、サルマン賞と同時開催されます。
続いて9月には企画展のハイライトの1つ、オーストラリア風景画家アーサー・ストリートンの回顧展「Streeton」が始まります。1880年代半ばメルボルン郊外に集まった芸術家たち「ハイデルバーグ派」つまり「オーストラリア印象派」の1人としてよく知られ、喚起する光、大地、海、オーストラリアを定義するかのような太陽の降り注ぐ野の景色、明るく描かれたシドニー湾、田園風景は多くのオーストラリア人に永久的に好まれています。
11月には今年の主要特別展でパリのポンピドー・センターとの共催の特別企画展「Matisse: Life & spirit, Masterpieces from the Center Pompidou, Paris」展が始まります。革新的で、世界に影響を及ぼした芸術家の1人であり、20世紀を代表するフランスの画家、巨匠マチスの芸術の深淵を見せてくれるものです。シドニーでその単独展としてはいまだかつてない規模のこの展覧会は、11月から翌年3月まで開催されます。初期の野獣(フォーブ)的な表現から、晩年ヴァンスの礼拝堂で手掛けた穏やかで滴るようなデザインに至るまでの60年間にわたるマチスの軌跡を明らかにします。目に見える世界を称賛し、感情を表す新しい手段を追求しながら、いかに何度も構想を変えていったかを知ることができるでしょう。
以上の他にも多様なプログラムが企画されています。今年もぜひNSW美術館をお楽しみください。(NSW州立美術館コミュニティー・アンバサダー=森岡薫)
■Japan supernatural展
日程:開催中~2020年3月8日(日)
時間:10AM~5PM(水曜のみ10PM閉館)
場所:Major exhibition gallery, Art Gallery of NSW(Art Gallery Rd., Sydney NSW)
料金:大人$25、コンセッション$22、美術館会員$18、家族(大人2人+子ども3人まで)$62、12~17歳$12、12歳以下無料(Qtixで購入可、手数料$2)
Web: artgallery.nsw.gov.au/exhibitions/supernatural
■無料日本語ツアー(予約不要)
<Japan supernatural展ツアー>
日時:上記期間中の毎週土曜11AM
備考:ツアー開始前に展覧会入場券を購入の上、地下1階の会場前に集合
<常設展ハイライト・ツアー>
日時:2月7日から再開。毎週金曜11AM~
【お詫びと訂正】
本紙12月号21ページに掲載した「『継承日本語』テーマにシドニーで講演開催」の記事の記載一部誤りがありました。読者の皆様並びに関係者の方々にご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫びする共に、訂正させて頂きます。
【誤】NSW州立大学
【正】NSW大学