不動産投資と「ネガティブ・ギアリング」②
ブリスベン在住の在豪日本人Aさん(42歳、永住ビザ)の、賃貸不動産によるネガティブ・ギアリングの例を見てみましょう。
- 年収8万ドル(雇用)
- 仕事のための経費なし
- 銀行で50万ドルのローンを組み、50万ドルのアパートメントを購入、賃貸に出す
- 賃貸収入:週450ドルで年間2万3,400ドル
- ローン年間利息:4%で2万ドル
- レート、賃貸不動産にかかる費用が年間8,000ドル
下記を条件とし比較しやすくします。
- ローン利息額はローンの支払いと共に残高が減ることで毎年減る可能性があるが、ここでは考慮しない。
- ビジネス収入、他の投資収入、国外収入など他の収入はないものとし、家族構成も単身とする。
- レントを上げたり、レートなど費用が上がったりなどインフレ効果はないものとする。
- あくまでお金がどれだけ残るかの計算なので、値上がり益(キャピタル・ゲイン)、もし売ったとしたらという仮想売却益に関しては考慮しない。
以下の3ケースで考えてみます。
1. 不動産投資なし
2. ローンを組んで賃貸不動産を購入
3. ローンなしで賃貸不動産を購入
ネガティブ・ギアリングはあくまで損失なので、2のケースが一番お金が残りません。税金が減ると言っても一番損失を出しているのは2だからです。経費にも同じ考えが当てはまり、いくら税金が減るからと言っても、使った分の税金が減るわけではないので、手元にお金を残すには不要な費用はないに越したことはないのです。最も多く税金は掛かりますが、最も手元にお金が残るのはやはり3のケースです。お金のある方がお金を生みやすく、有利というゆえんです。
しかし、表からも分かる通り2が大きな節税になることも事実。将来的に値上がりすれば、節税しかつ売却時に売却益も得るということが可能になります。これがネガティブ・ギアリングの真骨頂です。
特にオーストラリアはローン金利も高く、まだまだ不動産神話がまかり通っています。大して値上がらないなら、損失を作っているのは事実なのであまり効果はありません。しかし利息額も高く、実際値上がりするケースが今でも多々あることが、ネガティブ・ギアリングが依然有効な節税戦略となることが多い理由なのです。
不動産投資なし | ローンで 賃貸不動産購入 | ローンなしで 賃貸不動産購入 | |
給料 | $80,000 | $80,000 | $80,000 |
賃貸収入 | $0 | $23,400 | $23,400 |
ローン利息 | $0 | -$20,000 | $0 |
賃貸関連費用 | $0 | -$8,000 | -$8,000 |
課税収入 | $80,000 | $75,400 | $95,400 |
メディケア税を加えた税金額 | $18,067 | $16,480 | $23,785 |
純利益 | $61,933 | $58,920 | $71,615 |
※2020年の税率で計算。永住ビザ、豪州市民権者以外はメディケア税を免除できる
賀谷祥平
競馬騎手、豪州公認会計士、米国公認会計士、登録税理士。James Cook University MBA、University of New England会計学修士、上智大学経済学部卒。2001年上智大学在学中に、騎手を志し豪州の競馬学校に入学。03年、NSW州Coffs Harbour競馬場にて騎手デビュー。現在はNorth QLDで騎乗している。
Web: www.facebook.com/shoheikaya、www.ezytaxonline.com.au/ja