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ハニー・ボーイ、ダウンヒル他

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cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ハニー・ボーイ
Honey Boy隊長が観た!

ドラマ/MA15+ 公開中 満足度★★

© Sony Pictures
© Sony Pictures

先日、受賞作の発表間違いなど大きなアクシデントもなく無事終わった、第92回のアカデミー賞。やはり一番の話題となったのは、ポン・ジュノ監督の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』だろう。今年から外国語映画賞から名前が変わった国際長編映画賞、脚本賞、監督賞、そして非英語作品では初の作品賞と最多4部門での受賞となった。個人的な見方としては、昨年の同じ非英語映画である『ROMA/ローマ』が作品賞を取れなかったことが大きく影響していると思う。『ROMA/ローマ』も外国語映画賞と監督賞、それに撮影賞を受賞している。内容的にも作品賞にふさわしいと思われたが、最終的に作品賞を受賞したのは『グリーン・ブック』だった。その後で多くの批評家が指摘したのが、アカデミー会員の頭の古さ。以前、黒人がノミネートされないなど、人種的な差別があるのではと言われていたが、実際、アカデミー会員は「白人のお年寄り男性」が最も多く、やはり作品賞は英語作品ではなくてはいけないという古い考え方があると指摘され、大いに批判された。同時に、同作品は「Netflix」作品で配信されテレビで簡単に見られることから、あのスピルバーグまでもが「アカデミー賞に相応しくない」と言い出して、これもう老害でしょ。そんなことで、視聴率も低下しているし、今年はアカデミーも多様性を受け入れ変わったことを示す必要があったと思う。もちろん、『パラサイト 半地下の家族』は娯楽性もあり作品賞にふさわしい作品で、監督を始めとする事前プロモーション活動なども大きな力になったが、こういったタイミングも作品賞受賞に味方したのでは?

さて、すっかり前置きが長くなってしまったが、そのアカデミー賞で『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』で共演しているダウン症のザック・ゴッサーゲンとともにプレゼンターとして登場したシャイア・ラブーフ。彼の主演作『ハニー・ボーイ』を紹介。

テレビ業界で人気子役として活躍するオーティス。無職でステージ・パパであるジェームズとはロスの安モーテルで二人で住んでいる。その後、オーティスは映画俳優として成功したものの、車の事故でアルコール依存症のリハビリ施設に入ることになる。そこで心的外傷後ストレス障害(PTSD)と言われ、それに向き合うことになるが、それは同時に幼いころの父との関係を振り返ることでもあった……。

© Sony Pictures
© Sony Pictures

このオーティス、実はシャイア・ラブーフ自身で、彼が自分の体験を元に脚本を書き上げ、父親役でも出演もしている。そう、虐待的でアルコール依存症と色々と問題のあった父親を自身が演じているので、多分、本人とそっくりなんだろうな、自分がやられたことを演技と言えども、それを自分が行うのはどんな気持ちなんだろう? と、余分な考えがグルグル頭の中で回って、映画に集中できなかった。全く関係のない俳優によって、全く別の映画として見れば違ったかもしれないが、これでは、シャイアの父親に対するセラピーのためだけのパーソナルな映画になってしまっている。また、無職の父親を養うために働く小学生って、やはり共感するのは難しかった。この子ども時代と、成人になった2つの時代が交差しながら展開するのだが、その繋がりも悪くバラバラとした印象も強い。更に、同じモーテルに住む女性との関係も、かなり性的な要素を「匂わせ」るのだが、この「匂わせ」も生理的に受け付けなかった。実際のところはどうかは分からないけど、ここはすぱっと母性愛的な表現だけにとどめておいても良かったのでは?

残念ながら、あまり自分とは合わなかった作品だが、映画の評判はかなり良いので、シャイア・ラブーフのファンの方はぜひ。劇中の撮影シーンなどから彼の出演作を考えてみたり、そんな楽しみ方もアリかと。

アイ・スティル・ビリーブ
I Still Believe

ロマンス/TBC 3月12日公開予定 期待度★★★★

© 2020 Studio Canal
© 2020 Studio Canal

アメリカ出身のクリスチャン・ミュージックのスター歌手、ジェレミー・キャンプの実話を基にした注目すべき作品。ジェレミー役をK・J・アパ、メリッサ役をブリット・ロバートソンが演じる。歌手として成功への道を駆け上り、婚約者メリッサとも幸せな日々を送っていた。しかし、結婚後ほどなくして、メリッサが病に侵されていることが発覚する。愛と悲しみに満ちた彼の人生が、与えられた試練の中には必ず希望があり、その試練は価値あるものなのだと教えてくれる。同映画のタイトルでもある『I still believe』は、実際にジェレミーが妻メリッサに捧げた曲である。「1つの愛が人生を変える」、その言葉が胸に刺さる感動のラブ・ストーリー。壮大なライブ・シーンや、心に響く弾き語りシーンにも注目したい。

ムーラン
Mulan

アドベンチャー/歴史/戦争/TBC 3月26日公開予定 期待度★★★

© Disney
© Disney

この物語は中国を舞台に作られたもので、この時代中国の皇帝は北の国からの侵略者から国を守るため、家族から1人帝国軍に送り出さなければいけないという法令を出した。名誉ある戦士の長女であるムーランは、病気の父に代わり偽名を使い男になりすまして家族の代表として、帝国軍へ行く決意をする。内に秘めた芯の強さと兵士として戦いに立ち向かう勇敢な女性であると共に、見方にさえも本当の姿を知られてはならないと自分を偽り、真実と嘘の狭間で1人苦悩と戦う日々を描く。主演女優は、今回大抜擢であるリウ・イーフェイ。果たして彼女は名誉、そして国を守ることはできるのだろうか。ディズニーが世に送り出す壮大な物語である。迫力のあるアクション・シーンにも期待が高まる。

ダウンヒル
Downhill

コメディ/M 3月3日公開予定 期待度★★★★

アルプスでの家族スキー休暇中、昼食を摂ろうとしていたところ、突然雪崩が家族に襲いかかる。夫ピート役を演じるウィル・フェレルは、雪崩が起きるや否やケータイを手に取り、家族を置いて1人逃げてしまう。妻ビリー役を演じるジュリア・ルイス=ドレイファスは、息子たちを抱え慌ててその場から非難する。家族を取り残し自分1人が助かろうとするピートの行動にショックを受けるビリー。このことがきっかけでビリーの心の中に疑問が生じ始める。夫婦間での歪みが、だんだんと大きくなりお互いの気持ちを改めて考えることを余儀なくされる。この作品は、恋人、夫婦に関わらず大切な人と観てほしい。優、脚本家としても名が知られるナット・ファクソンとジム・ラッシュが送るヒューマン・コメディである。

ザ・ウェイ・バック
The Way Back

ドラマ/M 3月6日公開予定 期待度★★★

© Warner Bros
© Warner Bros

主人公であるジャック・カンニガムはかつて高校時代、知らない人はいない天才バスケットボール・プレイヤーで、大学も奨学金で行くことが決まっており約束されたような人生を歩んでいた。しかし突然、原因不明の理由で彼はコートから姿を消し、その後の人生はまさにどん底であった。妻の突然の死をきっかけにアルコール依存症に陥ってしまう。そんな彼に母校から来た少年バスケットボール・チームの監督の依頼。しぶしぶ依頼を受け入れ、監督として再スタートする。彼の指導のおかげでチームが団結し、試合で勝利を収めるようになると、それをきっかけに彼は悩まされ続けた原因に立ち向かう勇気を持つ。はたして、過去の苦しみとぽっかり空いた心を満たし、再び歩み出すことができるのか。

★今月の気になるDVD★

アリー/スター誕生 A Star Is Born
ドラマ/ロマンス 約134分(2018年)

音楽での成功を夢見ながら、なかなか芽が出ず諦めかけていたアリー。ある日、アリーが働く店で世界的ミュージシャンのジャクソンと出会い、彼女の人生が一変する。アリーの歌に魅了されたジャクソンに導かれ、激しく恋に落ち、彼女は華やかなショー・ビジネスの世界に飛び込んでいく。固い絆で結ばれる2人だったが、ジャクソンは薬物とアルコール依存に苦しみ、全盛期を過ぎた彼の栄光は陰り始めていた。

この映画の見どころは、音楽と夢のようなストーリーがテンポよく進むところだ。アリーがバーで歌うエディット・ピアフの「La vie en rose」、ジャクソンが大観衆が待つステージにアリーを呼んで、映画のメイン・テーマ「Shallow」を一緒に歌うシーンは見逃せない。リアルな音楽業界を描写し、ジャクソンがどんどん落ちぶれていく中、それでも彼を愛し続けるアリーの心情が丁寧に描かれている。後半になるにつれて切ない展開に感情移入してしまうだろう。

アリーを演じたのが並外れた歌唱力、パフォーマンスで世界的な人気を博してるレディー・ガガ。ジャクソンを演じたのは2009年製作の映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』でブレイクしたブラッドリー・クーパー。本作では、出演・監督を務めた。飾り気なくすっぴんで、誰にも媚びないアリーはいつものガガのイメージとは違い、新しい一面を知れる。音楽、恋愛映画好きには間違いなくお薦めしたい作品だ。(編集=AE)

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