第11回:京都のお酒
「今度日本に行くの!」と言って話しかけてくるお友達や同僚、最近増えていませんか? スキーにしろ家族旅行にしろ、その人たちの多くは、京都に立ち寄ることを楽しみにしています。そこで、神社仏閣巡りも良いですが、せっかく行くならぜひ日本酒も。そんな時、こんなアドバイスが役立つかもしれません。
まずは「祝」で乾杯
京都を訪ねたら、ぜひ地元の酒造好適米「祝(いわい)」の日本酒をまず飲みましょう。栽培の難しさから一時は生産が途絶えていた酒造米ですが、今では「京料理の繊細な味わいにぴったり」と評価が高く、京都の米・京都の酒として定着しています。筆者が数種試した印象では、繊細なうまみ、優しい華やかな甘み、線はしっかりしていても気品のある奥深さなどが感じられました。
その極みの1つが、1675年から続く京都・伏見の酒蔵「月の桂」の純米大吟醸にごり酒。日本人にはどこか懐かしく、優しくすっきりとした重量感が魅力的な一方で、外国人には独特の「スパークリング」な口当たりがお酒のうまみとマリアージュして驚きのようです。さらに月の桂では、日本酒を3年、10年、そしてそれ以上貯蔵した古酒もあり、これは日本人でも頭と味覚が目覚める新発見でした。
京都では「祝」の他にもさまざまな米が生産されており、さらには酒造米の名産各地に近いこともあって、山田錦、五百万石、雄町、愛山、山田穂など「お酒のデパート」のようにいろいろな米品種・スタイルが楽しめます。
また京の食事と言えば懐石料理や上品な味付けというイメージがありますが、地元の人は意外と「がっつり系」も大好きで、濃い味付けのラーメンや焼肉屋さんも人気。肉料理と相性の良い「山廃」造りをよく見掛けることも、これでうなずけますね。
観光も日本酒をテーマに
お酒にまつわる観光なら、ぜひ松尾大社へ。室町時代末期以降から「日本第一酒造神」として信仰され、またみそ、しょうゆを含めた醸造全般の繁栄を願ってお参りする大事な聖地でもあります。加えて、伏見の御香宮(ごこうぐう)神社には、伏見の銘酒を造る名高い水「伏見の御香水」が湧き出ています。伏見の伏流水は口当たりの良い中硬水で、バランスの良い奇麗なお酒の生産に適しています。
おいしく、楽しく、安全な日本旅行を願って乾杯!
雄町稲穂
在シドニー歴20年以上。日本での仏・独・豪ワインの輸入販売を経て、シドニーのブティック・ワイン専門会社に入社、日本やアジア諸国へ豪州プレミアム・ワインを輸出。現在は豪州食材を世界に広める企業に勤務。日本酒は2017年にWSET(Wine & Spirit Education Trust)のSake Level 3、19年にSSI(Sake Service Institute)国際唎酒師を受講・合格。引き続きスキルアップのため「テイスティング」に励んでいる