日本ラグビー界では現在、オーストラリア、ニュージーランドなど世界の強豪チームでの代表経験を持つ選手が多数プレーしており、日本のレベルアップにひと役買っている。そこで、かつて豪州で活躍し、現在は日本に舞台を移した元ワラビーズの選手たちについて日本からリポートする。 文=山田美千子/写真=山田武
平成最後のラグビー日本選手権決勝
ラグビー・ワールド・カップ(以下、RWC)2019日本大会開幕まであと279日となった12月15日、東京・秩父宮ラグビー場で平成最後となるラグビー日本選手権決勝が行われた。RWC開催の関係で今季は大幅な日程の変更があったため例年になく早い年内決戦となったが、超有名選手の出場もあり、会場には彼らのプレーを観ようと1万7,401人ものファンが詰め掛けた。
決勝のカードは、3連覇を狙う「サントリーサンゴリアス」対18季ぶりの王者奪還を目指す「神戸製鋼コベルコスティーラーズ」。
サントリーのスタンド・オフ(SO)には元ワラビーズのマット・ギタウ選手、No.8にはショーン・マクマーン選手が、対する神戸製鋼のセンター・バック(CTB)にはアダム・アシュリークーパー選手、SOには元オール・ブラックスのダン・カーター選手が出場した。
午後2時、神戸製鋼のカーター選手のキックで始まった試合は終始、神戸製鋼ペース。3連覇への重圧か、サントリーの選手には硬さが目立っていた。開始3分に神戸製鋼が先制も、19分にサントリーが1トライを返した。一進一退の攻防が続くかと思われたが、結果的にサントリーの得点はこの1トライの5点のみ。敵陣深くまで攻め込んでもゴール・ライン直前でのミスで得点につなげられない。思うようなラグビーができず、サントリーの選手からは時間の経過と共に戸惑いが焦りに、焦りが苛立ち、そして失望に変わっていくのが感じられた。中でも、ボールのある所にギタウありとばかりに攻守にわたって気を吐き続けていた同選手からは失望感がより強く感じられた。
一方、神戸製鋼アシュリークーパー選手は後半開始6分、サントリー松島幸太朗選手への激しいタックルからターン・オーバーに成功。そのボールが再びアシュリークーパー選手に戻ってきたところでトライを決めた。終始アシュリークーパー選手は、伸び伸びと試合を楽しんでプレーしているように見受けられた。
終わってみれば、55-5という大差がついた決勝戦となった。自分たちのラグビーが面白いようにできた神戸製鋼に対し、ゲームを全くと言っていいほど自分たちのペースで運べず不完全燃焼のサントリー。両チームの明暗はそのままワラビーズの2人にも当てはまる結果となった。
ついこの間まで若手だった2人、ギタウ選手とアシュリークーパー選手が気付けばベテランになっていた。RWCの今年、彼らはどう動くのか。動向が注目される。