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2019年4月 ニュース/総合

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豪経済の減速が鮮明に
年内に追加利下げの観測

豪州経済の減速傾向がより鮮明になってきた。豪準備銀(RBA)が年内に追加利下げに踏み切るとの観測も強まっている。経済学者からは、1人当たり国内総生産(GDP)や人口増を考慮した場合、既に景気後退に陥っているとの指摘も出ている。

12月期GDP、前期比0.2%増

豪統計局(ABS)が3月6日発表した統計によると、2018年12月四半期(9月~12月)の実質国内総生産(GDP=季節調整値)は前期比0.2%増となり、9月期の同0.3%増から減速した。16年9月期以降で最も低い水準。18年通年では2.3%増と、連邦財務省が18年12月の年央財政経済見通しで予測した2.75%を下回った。

家計最終支出(個人消費に相当)は0.4%増。不動産市況の低迷を背景に、住宅建設投資は3.4%減となった。干ばつで農産物輸出が打撃を受けたことを背景に、輸出も0.7%減と振るわなかった。

ABSのブルース・ホックマン主席エコノミストは声明で「軟調な個人消費と住宅建設投資の落ち込みを背景に、経済成長は抑制されている」と指摘。直近の住宅建設許可件数から、住宅建設投資の減少は今後も続くと予想した。

インフラ整備の加速を背景に公共事業は6.3%増加した。医療や高齢者ケアなどの支出拡大に伴い、政府部門の最終支出は1.8%増え、民間投資の弱さを相殺した。ホックマン氏は「資源ブーム後に経済構造が変化する中で、力強い公共事業が全国の経済成長をけん引している」と分析した。

事実上の景気後退か

豪州経済は1991年6月期以来、110四半期連続で景気後退(リセッション=2四半期連続のマイナス成長)を回避し、先進諸国で最長とされるリセッション知らずの経済成長を続けてきた。鉄鉱石や石炭などの資源輸出の大幅な伸びが成長をけん引した。ただ、資源投資ブームは12年に天井を打ち、内需を引っ張ってきた住宅市況も17年後半に下落に転じた。実質賃金の伸びやインフレは低水準で推移し、経済成長の伸びは鈍化している。

景気を下支えするため、RBAは16年8月、政策金利を現行制度下で最低の1.5%に引き下げた。以来、19年3月まで28回の金融政策決定会合で、金利を据え置いている。

従来は利上げの時期が焦点となっていたが、足元の景気は足踏み。今後は米中貿易戦争による豪州経済へのマイナスの影響が予想され、一段の景気の冷え込みも懸念される。このため、昨年末ごろから追加利下げの観測が浮上。これまで利上げを示唆していたRBAのフィリップ・ロウ総裁も2月、利上げと利下げの可能性について「五分五分」と軌道修正した。

12月GDPの発表を受けて、英経済調査会社キャピタル・エコノミクスは6日、「RBAが既に中立的な立場を採ったことから、早ければ8月にも利下げに踏み切る可能性がある」と予想した。

豪州経済が既に、事実上の景気後退に陥っているという見方も出ている。ニュー・サウス・ウェールズ大学(UNSW)のリチャード・ホールデン教授(経済学)は6日、同大学ウェブサイトの記事で「1人当たりGDPは既に18年9月期、12月期と2四半期連続でマイナス成長となった。1人当たりGDPベースで見るとリセッションだ」と指摘した。豪州の人口が0.4%の割合で伸びていることを計算に入れれば、「GDP0.2%増はマイナス成長だ」(同教授)と解説している。


日本産食品、豪州向け8.9%増――161億円、5年で倍増

日本の農林水産省はこのほど、2018年の日本産農林水産物・食品の輸出額(速報値)に関する統計を発表した。豪州向けは161億円と前年比で8.9%増加し、17年に続いて過去最高を更新した。

豪州の国・地域別順位は10位。日本食が広く普及していることを背景に、13年比で2倍以上に拡大した。人口1人当たりの輸出額で見ると、食文化が似ている英語圏で最高の水準にある。内訳は農産物が145億円、林産物が1億円、水産物が16億円。上位3品目は、清涼飲料水、アルコール飲料、ソース混合調味料だった。

世界全体への輸出額は9,068億円と前年比で12.4%増加した。上位3カ国・地域は、香港(2,115億円)、中国(1,338億円)、米国(1,177億円)だった。日本政府は、成長戦略や地方再生の観点から農林水産物・食品の輸出拡大に力を入れており、19年に輸出額1兆円との目標を掲げている。

日本産農林水産物・食品の豪州向け輸出の推移

201320142015201620172018*
輸出額8094121124148161
前年比23.10%14.90%28.70%2.50%19.40%8.80%

(単位:億円)*2018年は速報値 出所:農林水産省

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