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2019年8月 ニュース/総合

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豪ビール市場は日系2社が火花を散らす展開に
豪ビール市場は日系2社が火花を散らす展開に

アサヒ、豪ビール最大手買収へ

160億ドルで――日系の豪M&Aで最大級

アサヒグループホールディングス(アサヒ)は7月19日、豪ビール最大手のカールトン・アンド・ユナイテッド・ブルワリーズ(CUB=メルボルン)を買収すると発表した。CUBの親会社であるビール世界最大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ=ベルギー)から、160億ドル(1兆2,096億円)で取得することで合意した。豪ビールの有力ブランド「カールトン」や「ビクトリア・ビター」(VB)などABインベブが保有するCUB事業を全て取得する。

アサヒは2009年に飲料大手シュウェップス・オーストラリアの全株式を取得、11年に豪飲料大手「P&Nビバレジズ」からミネラル・ウォーターと果汁飲料の事業を買収するなど、オセアニアの飲料市場で事業取得を進めた。酒類では「アサヒスーパードライ」やイタリアのビール「ペローニ」などを販売してきたが、CUBとキリンホールディングス(キリン)子会社のライオンの2強が市場の大半を寡占する中で、存在感は限られていた。

買収は、豪競争消費者委員会(ACCC)と外国投資審議委員会(FIRB)の認可が条件となる。実現すれば、日本企業による豪州での吸収・合併(M & A)案件としては最大級となる。

近年、日本企業による豪州企業に対する大型M & Aが相次いでいる。キリンは1998年、豪ビール大手のライオン・ネイサン(現ライオン)に資本参加。09年に77億ドル(数字はいずれも当時の発表ベース)で100%子会社化した。キリンは07年に28億ドルで豪乳製品大手ナショナルフーズも取得した。15年には日本郵政が豪物流大手トール・ホールディングスを64億8,600万ドルで買収した。今年4月には、日本ペイントが豪塗料大手デュラックス・グループを37億5,600万ドルで買収すると発表した。

国内市場の拡大が期待できないため海外に活路を見出す日本企業にとって、底堅い経済成長を続け、長期的な人口増加が見込める豪州の市場は魅力的に映るようだ。激しい競争で消耗戦を強いられる日本市場と違って「豪州は構造的に大手数社による寡占が多く、日本企業にとっては安定した利益が見込めるメリットがある」(M&Aに詳しい豪法律関係者)との指摘もある。


日系ライバル2社、豪ビール市場の9割寡占へ
アサヒのCUB買収

豪調査会社アイビスワールドの推計によると、豪ビール市場のシェアはABインベブのCUBが47.7%、キリンホールディングス(キリン)のライオンが40.

9%。2社の合計で実に約9割を占める。その他は、独立系で最大のクーパーズ(アデレード)がシェア約5%と目立つ程度だ。

合従連衡経て2社に集約

しかし、資本形態は大きく変わってきた。かつて林立していた各地の醸造所が吸収・合併を繰り返し、ほぼ1980年代までに、CUBの前身であるフォスターズ・グループとライオン・ネイサン(現ライオン)の大手2社に集約された。ライオンは09年にキリンの完全子会社となり、フォスターズも11年に英SABミラーに買収されていずれも外資となった。CUB(旧フォスターズ)は16年、SABミラーを買収したABインベブの傘下に入っていた。

アサヒ、日欧豪の3極体制へ

キリンによるライオン買収は、日本企業による海外M&Aの成功例の1つとされる。ライオンの酒類事業の事業利益は533億円とグループ全体(2018年の連結事業利益は1,993億円)の稼ぎ頭となった。

一方、アサヒが買収で合意したCUBの18年12月期の利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)は10億7,500万ドル。買収後、既存事業を含むアサヒの豪州事業のEBITDAは、欧州事業と同規模となる約1,000億円を見込む。アサヒは「日本の2,000億円規模と合わせて3極体制」を整える。

ただ、豪州の1人当たりビール消費量(17年=キリン調べ)は年間71.2リットルと日本(40.1リットル)の約1.8倍あるものの、年々縮小傾向にある。豪統計局(ABS)によると、アルコール度数換算の1人当たりビール消費量は、ピークの1970年代から半減している。食文化の多様化を背景に、レストランで食事を楽しみながら飲む「食中酒」としてのワインが好まれるようになった。

また、従来型の豪州ブランドの需要が縮小する一方、クラフト・ビール(小規模な醸造所で作られる地ビール)などの新しいセグメントは急成長している。

アサヒとキリンは、日本のビール市場で激しい首位争いを続けてきた宿命のライバル。CUB買収が認可されれば、ビール市場の質が大きく変化している豪州市場でも全面対決することになりそうだ。


RBAのフィリップ・ロウ総裁
RBAのフィリップ・ロウ総裁

2会合連続で利下げ

政策金利、史上最低の1%

中央銀行の豪準備銀(RBA)は7月2日に開いた理事会で、政策金利を0.25ポイント引き下げて1%とした。6月の前回会合で、2016年8月以来2年10カ月ぶりに利下げに踏み切っていた。2会合連続で小刻みに利下げを行い、先行きに不透明感が漂う景気を下支えする。

RBAのフィリップ・ロウ総裁は「貿易やハイテクの摩擦による不安が投資に影響を与えており、世界経済は下り坂に傾斜している」とした。豪州経済の現状については、低い賃金の伸びと住宅価格下落の長期化を背景に消費が抑制されており、失業率(6月時点で5.2%)は改善の余地があると指摘した。

同総裁は、追加利下げの理由を「失業率の下落を速め、インフレ目標(2~3%)の達成をより確実にするものだ」と説明。「必要があれば金融政策を調整する」として今後の追加利下げに含みを持たせた。

金融政策の余地が次第に狭まる中で、政府の財政政策への期待感も高まっている。ロウ総裁は2日夜、ダーウィンで行った演説で「金融緩和には副作用もある」とした上で、金融緩和以外の景気刺激策の例として、インフラ整備など公共事業への財政支出拡大を挙げた。同総裁は「適切なプロジェクトが選択されれば、需要を喚起し、生産能力の拡大にも寄与する」と述べた。

発言は、政府に財政支出拡大を求めたものと受け止められた。最大野党の労働党は景気刺激策の拡大を要求。これに対してフライデンバーグ財務相は、財政黒字化を妨げるとして追加の景気刺激策の必要性を否定している。

減税効果は限定的か

一方、景気刺激策として期待される所得税減税法案(総額1,580億ドル)は4日、連邦上院で可決、成立した。同法案はスコット・モリソン首相の与党保守連合(自由党、国民党)が5月の連邦選挙で公約の目玉に掲げた。選挙後の政権運営の試金石となっていたが、与党が過半数に満たない上院で小数勢力の支持を取り付けて通過。法案修正を求めた労働党も最後は政府案に賛成した。

3段階の減税策のうち即時に実施される第1弾では、勤労者1人当たり最大で1,080ドルの所得税が還付される。利下げと共に、減税による景気刺激効果が見込まれる。

ただ、減税による「経済への影響はほとんどない」(NAB銀のアラン・オスター主任エコノミスト)との見方も出ている。同氏が10日、公共放送ABCのテレビ番組で述べた。還付金の規模は「豪経済の0.3%に過ぎない」としている。RBAによる利下げの影響の方がずっと大きいが、利下げの効果が現れてくるのは来年以降にずれ込むという。オスター氏もロウ総裁と同じく、効果の高い景気刺激策として政府によるインフラ支出拡大を挙げている。


水素の対日輸出施設を建設
川重などが実証実験

川崎重工業は7月19日、VIC州南部ポート・ヘイスティングスで水素の液化施設と輸出ターミナルの建設工事に着手したと発表した。石炭から改質した水素を超低温で液化し、燃料電池車などの燃料向けに日本へ輸出する実証実験の拠点を整備する。

水素はVIC州ラトローブ・バレー炭鉱で産出される褐炭から抽出する。水素の液化施設と貯蔵施設を2020年6月までに完成させ、20年から21年に実証実験を行う計画。川重の村山滋会長は声明で「日本では水素エコノミーが既に具体化しており、豪州にも足がかりを築けたことはうれしい」と述べた。

同事業は、日豪両政府とVIC州政府が支援し、川重と子会社のハイドロジェン・エンジニアリング・オーストラリア、電源開発、岩谷産業、丸紅、豪AGLロイ・ヤン炭鉱が参画している。

水素は、次世代車の有力候補とされる燃料電池車の燃料として主に利用されている。水素から取り出した電気でモーターを駆動して走る。走行時に限れば、排出するのは水だけ。温室効果ガスや大気汚染物質を出さない。水素は石炭や液化天然ガス(LNG)などの化石燃料を改質する方法の他、水を原料に再生可能エネルギー由来の電力で電気分解して取り出すなど、様々な原料から生産できるメリットもある。

石炭やLNGが豊富な豪州では、将来の水素エネルギーの普及を見据え、水素を有力な資源輸出商品に育てようという戦略的な動きが出ている。ただ、密度の低い水素を貯蔵・運搬するには、高圧タンクに入れたり、超低温で液化する必要があり、インフラ整備が課題となっている。

豪国内の日系企業の取り組みとしては、トヨタ・オーストラリアが連邦政府と共同で、メルボルン郊外に水素の電気分解装置と水素ステーションを建設している例がある。20年中の稼働開始を目指している。


安倍首相と握手するモリソン首相
安倍首相と握手するモリソン首相

大阪G20サミットで日豪首脳会談

テロリストのネット利用阻止などで一致

20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席するため日本を訪問したスコット・モリソン首相は6月27日、大阪市内で安倍晋三首相と日豪首脳会談を行った。モリソン首相の訪日は首相就任以来初めて。

会談の冒頭、安倍首相は5月の連邦選挙の「歴史的勝利」に祝意を示した上で、「日豪の特別な戦略的パートナーシップの下で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、協力していきたい」と強調した。モリソン首相は、昨年11月の安倍首相のダーウィン訪問に謝意を述べ、「地域におけるあなた(安倍首相)の政治的手腕は高く評価されている」と語った。

両首脳は、データ流通や電子商取引の国際ルールを作る「大阪トラック」の推進、テロリストのインターネット利用の阻止、東南アジアや太平洋諸国での海上保安やインフラへの支援などで連携していくことで一致。日豪の安保協力の推進、水素エネルギーなどの経済協力、北朝鮮情勢などについても議論した。


豪訪日需要は依然好調
19年上期、10.7%増――JNTO統計

豪州人旅行者の訪日需要は引き続き好調に推移している。日本政府観光局(JNTO)が7月17日に発表した訪日客数の統計によると、今年1~6月の豪州からの訪日客数は32万6,900人と前年同期比で10.7%増えた。

6月は前年同月比4.2%増の3万7,300人。6月としては過去最高だった。JNTOは「継続的に展開してきた訪日旅行プロモーションや、業界メディアなどによる日本の露出機会の増加による訪日旅行機運の高まり」を需要拡大の要因に挙げた。

スキー需要が見込める年末に向けてこのペースが持続すれば、年間60万人を突破しそうだ。2018年(前年比11.7%増の55万2,440人)に続き、今年も過去最高を更新する可能性がある。

全体の訪日客数は1,663万3,600人と4.6%増えた。1位の中国が453万2,500人と11.7%増加したが、外交関係が悪化している2位の韓国が386万2,700人と3.8%減と落ち込んだ。

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