
タックス・リターンでよくある勘違い①
プライベート健康保険を掛けていればメディケア税がなくなる
「メディバンク」や「BUPA」などプライベート健康保険の加入者は「Medicare Levy SURCHARGE」という高所得者または高所得世帯にのみ課税される追加のメディケア税は回避できますが、普通のメディケア税は回避できません。ちなみに、プライベート健康保険がタックス・リターンに関係するのは永住ビザ保持者と市民権者のみです。ビジネス・ビザや学生ビザに付随する保険はタックス・リターンには関係ありません。
2つ以上仕事をしたら税金を多く取られる
税金額は同じ年度内の課税所得の合計に対して計算するので、いくつ仕事をしていようが関係ありません。1つの仕事で6万ドル稼ごうが、3つの仕事で6万ドル稼ごうが払うべき税金は同じです。
このような嘘の噂が流れるのには理由があります。同一会計年度内に転職で仕事を変えても2つ以上仕事をしている場合、2つ目からは高い源泉徴収率を使う方が望ましいことがあります。それを雇用者に伝え忘れた場合、タックス・リターンを申告すると、源泉徴収額が足りず追加納税となることがあるからです。返金どころか払うことになるので、“損をした気”になります。
もう1つの理由が、2つ目以上の収入は高い源泉徴収率を使うので、手取り額が減り、たくさん税金を“払った気”になるからです。
300ドルは経費計上できる
300ドルまでは領収書なしで経費計上できます。しかし、領収書が必要ないというだけで、使っていない架空の経費を計上できるわけではありません。使ったという事実確認が必要になります。この300ドルは今ATOが注視している分野です。
仕事中に着る服、靴は全て経費になる
衣服で経費になるのは、店や会社のロゴの入ったユニフォーム、シェフや医者のようなインダストリー指定のユニフォームです。靴は先に鉄の入った安全靴や滑り止め靴などけがから身を守るための靴のみ経費計上できます。外で働く人は日光から体を守る帽子が経費計上できます。ビジネス・スーツや仕事中に着るTシャツ、ズボンなどは経費計上できません。これも現在ATOの注視点です。
経費は使った金額戻ってくる
経費はその使ったお金自体がもらえるわけではありません。税金の掛かる収入を減らすに過ぎません。「税金額 =(収入 − 経費)× 税率」なので、経費により減る税金は 経費×税率分です。100ドル経費を使って、100ドル返金があるわけではありません。

賀谷祥平
競馬騎手、豪州公認会計士、米国公認会計士、登録税理士。James Cook University MBA、University of New England会計学修士、上智大学経済学部卒。2001年上智大学在学中に、騎手を志し豪州の競馬学校に入学。03年、NSW州Coffs Harbour競馬場にて騎手デビュー。現在はNorth QLDで騎乗している。
Web: www.facebook.com/shoheikaya、www.ezytaxonline.com.au/ja