輝け!
ゴールドコーストの若きアスリートたち
第1回
相澤日向くん(18歳)
サーフィン
いつもサーフィンを始めた原点に戻り
楽しさを忘れない
美しい海と山に囲まれたゴールドコーストは、晴天と温暖な気候に恵まれスポーツに最適な場所であり、その活動も盛んだ。この豊かな環境の中で、将来の大きな夢を抱いて果敢にスポーツに取り組んでいるゴールドコースト育ちの若きアスリートたちにスポットを当てて、彼らの今の姿を紹介していく。第1回目は、相澤日向くん(18歳)。サーフィンのU14クィーンズランド・チャンピオンを皮切りにオーストラリア国内の数々のジュニア・トーナメントで輝かしい成績を収めてきた。昨年から本格的にワールド・サーフ・リーグ(WSL)の世界ランキングと賞金が懸かるプロ・トーナメントに出場している。(文=堀千佐子)
――サーフィンを始めたきっかけとこれまでの経緯を教えてください。
2000年10月26日、ゴールドコースト生まれですが、両親の仕事の都合で1歳から12歳までをシドニーで過ごしました。サーフィンを始めた記憶があるのは、5~6歳のころです。両親がサーフィンをしていて、家が海のすぐ近くだったこともあり、自然とサーフィンを始めていたという感じです。
12歳の時、再びゴールドコーストへ戻ってきて、パームビーチ・カランビン州立校(PBC)でサーフィンのスポーツ・エクセレンス・プログラムに入って12年生までの5年間を過ごしました。ボードライダーズ・クラブの「バーリー・ヘッズ」に所属して、18年からワールド・サーフ・リーグ(WSL)の世界各地で開催されるクオリファイング・シリーズ(QS)の大会に出場しています。
――9月からも海外遠征に出発するそうですね?
はい。出場資格があるQS1000、1500、3000の大会に出場します。9月から約1カ月間、インドネシア、スリランカ、フィリピンでの試合を回り、10月末から11月頭にかけてオーストラリア国内で行われる3試合に出場します。今年の締めくくりは11月末に台湾で開催される試合です。オーストラリア国内での試合も含めて、年間約15~20の試合に出て、技と経験を積みながらポイントをなるべく多く獲得して、ランキングを上げるために頑張っています。
――サーフィンをしていて良かったと思うことは?
僕と同じように、サーフィンのトップを目指している同年代の仲間たちと、世界中の大会へ一緒に出掛けて旅ができることです。サーフィンの試合の開催地は、シーズンごとに“良い波”の出る場所へ移動するので、ある意味、サーフィンをしながら世界を旅できるのはサーファーの役得かもしれませんね。
オーストラリアの各地はもちろん、これまでに南アフリカや南米チリ、インドネシアのジャワ島やスマトラ島など、なかなか普段の旅行では行けない土地へも行くことができました。そして、サーフィンを通じてたくさん友達ができたことも良かったと思います。
――旅の道中、どんな話をサーフィン仲間たちとするのですか?
実にとりとめのない、時にはくだらない話をしてます(笑)。でも、それによって、見知らぬ国の慣れない土地で、自分のランキングを懸けた試合に出場する“緊張感”のようなものが、緩められているような気がします。一緒に遠征の旅に出掛ける仲間は、友達であり、良きライバルでもあり、お互いに刺激を受けながら上を目指しています。
――サーフィンのどんな所が好きですか?
海は自然そのものなので、まず海にいること自体が大好きなんです。そして、自然が生み出す波の状態は毎回違ってさまざまなので、予測できないワクワク感が常にあります。だからサーフィンはおもしろいのだと思います。ジュニア・スクールのころは、サーフィン以外にも野球やサッカー、楽器演奏など、いろいろなことを習っていましたが、練習でも試合でも、いつどんな時も一番楽しんでやっていたのがサーフィンでした。
――今までで一番印象深いライディングは?
やはり何と言っても、毎年訪れる冬のハワイ・ノースショアのパイプラインでのサーフィンです。山脈のような“うねり”が作り出すパワフルで巨大な波と、その地形から発生するチューブを求めて、世界中から名立たるサーファー達が冬に集まる場所です。1本の波に乗れるのは1人なので、何時間海に入っていても、満足のいく1本の波に乗れるかどうかは分かりません。難易度の高いサーフィンができること、そして世界トップ・ランキングのサーファー達と同じ波に乗れる喜びがそこにはあります。
――試合で負けた時やスランプの時はどうやって乗り越えますか?
もちろん、コーチと問題点を相談したりしますが、僕はまず、考え過ぎずに原点に戻って、サーフィンの楽しさを思い出すようにしています。サーフィンは競技ではなく、文化から生まれた自然相手のスポーツ。そして、自分がサーフィンを始めたのも、勝ち負けのポイントを競うためではなく、何よりもサーフィンが楽しくて仕方なかったからだったということを思い返します。原点に戻ることで、自分自身をリセットして乗り越えられると信じています。
――どんなトレーニングをしていますか?
毎日朝と夕方、バーリー・ヘッズかパーム・ビーチで海に入って練習します。波がない時は、スピットやクィーンズランドとニュー・サウス・ウェールズの州境のデュランバ・ビーチへ場所を変えます。定期的にコーチにビデオを撮ってもらい、自分のサーフィンをチェックしています。そして、週3回ジムで、バランスを養うための体感を鍛えるトレーニングを行っています。ケガをしないように柔軟な体作りにも重点を置いています。
――今使っているボードなどのスポンサーについて教えてください。
洋服やウエットスーツなど着るものに関してはアメリカのブランド「Vissla」、アクセサリーは「Tools」がスポンサーです。サーフボードは地元ツィード・ヘッズの「ACSOD」。27歳の若手シェイパーが作っているボードで、僕の注文やフィードバックに迅速に対応してくれるのでとてもありがたいです。地元の「Rhetoric Surf Shop」にもお世話になっています。遠征時の航空チケットは「Flight Centre」からサポートをしてもらっています。
――2019年の目標と将来の目標は?
今年はワールド・ランキング100番台入りを目指します。学校を卒業して、昨年から自由に海外の試合にも出掛けられる環境になったので、積極的に出場していこうと思います。地元の試合やジュニアの大会とは違い、世界の選手と競うQSの試合は良い成績を出すのが難しいですが、苦労の甲斐あって結果を出せるとその分報われます。
そして、将来は、世界でたった34人のプロ・サーファーだけが参戦できるチャンピオンシップ・ツアー(CT)に出るのが目標です。自分がサーフィンを始めた時の気持ちと、サーフィンというスポーツの原点を忘れないように、これからも楽しんでやっていきたいです。
母、のり子さんからのメッセージ
今まで一緒にいろいろな場所へ行って、観光もできてとても楽しかったです。学校を卒業してから、徐々に独り立ちしていっているのを感じて、頼もしくうれしく思います。サーフィンは観戦するのも面白いスポーツなので、これからもなるべく試合を見に行って応援したいと思っています。