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男子はヤニク・シナー、女子はアリナ・サバレンカが優勝─テニス4大大会のシーズン第1戦、全豪オープン2024が開催

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 テニスの4大大会(グランドスラム、G S)のシーズン第1戦、全豪オープン2024は、メルボルン市内のメルボルン・パークで1月14~28日に行われた。全豪オープン(OP)の撮影や取材をして16年になるライターが、今年の全豪OPの印象や成績をまとめた(選手の世界ランクは2024年1月付け)。

(文・写真=板屋雅博)

観客102万人を突破した全豪OP、ロッドレーバー・アリーナ

 今年の入場者数は昨年の84万人から20%増加して102万人を超えた。これまでのGSでの記録は昨年の全米OPの95万人。100万人を超えたのはGS史上初である。センター・コートであるロッドレーバー・アリーナの中央部普通席は平日でも1席2,0 0 0豪ドルを超える。その総収入はいったい幾らに? と気になる。

 数年前にできた巨大なメディア・センターには世界中からのジャーナリスト、カメラマンが詰めかける。巨額の資金が集まり、世界の注目を集める全豪OPには毎年、大型テニス・コートやアミューズメント施設が次々に建設され、更に全豪OPの魅力が増す好循環が生まれている。

シナーがイタリア人初の優勝

イタリア人として初の全豪OP優勝したヤニク・シナー

 男子シングルスで初優勝を飾ったのは第4シードのヤニク・シナー(20歳、イタリア)だった。筆者は、第1シードのノバク・ジョコビッチ(36歳、セルビア)が本命、悪くても第2シードのカルロス・アルカラス(20歳、スペイン)の優勝を予想していた。ところが準決勝でジョコビッチがシナーに負けてしまった。しかもセット・カウント1─3と一方的に打ち負かされた。

 ジョコビッチは数年前のコロナ禍の中で全豪OPのビザ問題で騒ぎを起こしたために、オーストラリアでは嫌われ者である。試合最中に直接的な批判はなかったが、セルビア・ファンを除く会場全体がジョコビッチの対戦相手を応援するという、異様な雰囲気の中での戦いだった。シナーはジョコビッチ戦までは1セットも落とさない絶好調で勝ち進んでいた。

 決勝戦ではダニル・メドベージェフ(27歳、ロシア)に2セットを先行され「あわや」と追い詰められた。しかし、決勝までフルセットを3回も戦い体力的な限界に来ていたメドベージェフに対して、1セットしか落としていないシナーは余力で勝り、イタリア人では史上初となる全豪OP優勝という快挙を成し遂げた。

 メルボルンでのイタリア移民の歴史は古く、カールトン地区のライゴン通りには、イタリア料理店が数十軒建ち並ぶ。決勝戦の夜は遅くまでライゴン通りに陽気なイタリア人の歓声が響いた。

サバレンカが連覇

全豪OP連覇を飾ったアリナ・サバレンカ

 女子シングルスでは、第2シードのアリナ・サバレンカ(25歳、ベラルーシ)が昨年に続き連覇した。サバレンカは22年の全米OPから数え、GSを5大会連続で準決勝以上に進んだ実力者であ
り、連覇も当然という風格であった。

 イガ・シフィオンテク(1位、2 2 歳、ポーランド)、ココ・ガウフ(3位、19歳、米国)など、混戦が続く女子シングルスでは誰が勝っても不思議はない状態であった。筆者が注目していたオンス・ジャバー(6位、29歳、チュニジア)は、ロシアの新鋭、16歳のミラ・アンドレーワ(35位)に敗れた。アンドレーワは4回戦まで進み、世界を驚かせた。優勝賞金は、男女共に315万豪ドル(約3億1,000万円)である。

 豪州の期待を一身に集めた第10シードのアレックス・デミノー(24歳)だが、4回戦でフルセットの末に敗れ、初のベスト8入りを逃した。年初に西豪州パースで行われたユナイテッド・カップでジョコビッチやテイラー・フリッツ(9位、26歳、米国)を破っており、今大会では期待が大きく高まっていた。

 女子では22年にアシュレイ・バーティ(27歳、引退)が全豪で優勝しているが、男子では1976年のマーク・エドモンドソンまで遡る。世界屈指のテニス・ファン数を誇る豪州でまたも戴冠の夢は幻と消えた。

大坂なおみ、OP復帰戦で敗退

期待を集めた大坂なおみだが1回戦で惨敗した

 日本期待の大坂なおみは、1回戦で敗退。第16シードのカロリーヌ・ガルシア(30歳、フランス)に4 ─ 6、6 ─7でストレート負けした。22年の全米OP以来5大会ぶりの復帰であり、まだ全開にはほど遠い状態であった。サーブの確率は51%、ストローク戦も凡ミスが多く調子に乗れなかった。何よりも、重そうな体はGSで1勝を勝ち取るにはかなりの道のりと思わせた。

 出産を経て母となり精神的には落ち着いた様子であり、負けても淡々と心境を語っていた。シード権も失っているが、まだ主催者推薦で本戦には参加できる。今後ツアーに参戦し、体を鍛え直して、全仏、全英、全米OPと階段を登ってもらいたい。

 日本勢では17歳の2人が明るい話題で飾った。車いす男子シングルスの小田凱人とジュニア男子シングルスの坂本怜が、それぞれ全豪OPで初優勝を飾った。全体では低調であった日本勢だが、この2人の活躍で締め繰りを迎えられたのは幸いであった。

 国枝慎吾の後継者と目されている小田は、昨年の全仏、全英OPに続いて全豪OPを制し、小田の時代に入ったとも言える。パリ・オリンピックと4大大会を含めて4年に1度しかない年間ゴールデンスラムのチャンスがある。国枝の時代と違って今は車いすテニスの知名度も上がり、小田の優勝は日本の各メディアで大きく取り上げられた。

 ジュニア男子シングルス決勝では第4シードの坂本怜(952位)が、1セットを取られながらも逆転で勝利し、ジュニアGS初優勝を飾った。全英OPを制した望月慎太郎以来2人目である。193センチ、80キロと体格に恵まれて時速210キロを超すサーブを打つ。錦織圭や西岡良仁、マリア・シャラポアなど一流選手を輩出した米国フロリダのIMGアカデミーで15歳からテニス留学をしている。優勝後に披露した侍ポーズや冗談好きなど既にスターの要素は十分に持っている。優勝後にプロ転向希望を口にしており、近いうちのプロ宣言が予想される。





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