オーストラリアの日系コミュニティー・ニュースをお届け!
Japanese Community News
オーストラリアにおける日系コミュニティーのニュースや最新情報を紹介していくと共に、シドニーを中心に各地で行われるセミナーやイベントの告知や報告などを掲載。
JALシドニー東京線就航50周年
記念式典を開催
日本航空(JAL)は9月30日、シドニー東京線の就航50周年を記念して、オペラ・ハウスで記念レセプションを行った。政府関係者を始め、日系企業や日系コミュニティーの関係者が招かれた。
式典冒頭では同社取締役専務執行役員で路線統括本部長の豊島滝三氏がスピーチを行った。就航当初は羽田空港から香港を経由、マニラで給油するため16時間のフライトだったことや、90年代の日本人のオーストラリア観光ブームとその後の低迷、そして現在シドニー東京間の搭乗者が年間100万人に達している状況など、シドニー東京線の50年の歴史を振り返った。また、2020年春から羽田空港の豪州線発着枠をJALが獲得していることにも触れ、明言はしなかったもののシドニーが最有力であること、そしてこれまでアクセスしにくかった地方にも羽田からスムーズなフライトが可能になると今後の展望を語った。
続いてスペシャル・ゲストとして招かれたグラディス・ベレジクリアンNSW州首相、髙橋礼一郎・駐オーストラリア特命全権大使が祝賀の挨拶を述べ、JALアジア・オセアニア地区支配人の畠山隆久氏が乾杯の音頭を取った。
その後は、太鼓奏者グループ「和太鼓りんどう」による演奏や、客室乗務員による歴代の制服を紹介するファッション・ショーが行われた。来年4月から着用開始となる新しい制服も披露されるなど、華やかなプログラムに会場は大いに盛り上がった。
QLD州・埼玉県姉妹友好提携関係35周年
埼玉県より訪問団が来豪
今年で35周年を迎えるQLD州と埼玉県の姉妹友好提携関係を受け、総勢85人の訪問団がQLD州の各地を訪れ、10月16日から4日間にわたって視察や交流活動などを行った。
当初は、8月に就任した大野元裕知事も来豪予定だったが、日本国内の広範囲で猛威を振るった台風19号により同県内の川越市・東松山市などで深刻な洪水被害が出たことを受け、復旧作業の指揮を執るために急きょ来豪を取り止めた。神尾髙善県議会議長を団長とする埼玉県議会親善訪問団が、予定通り16日にブリスベンに到着。16日の夜には在ブリスベン総領事館主催の歓迎レセプション、翌17日の夜にはQLD州政府主催のレセプションが行われ、数多くの要人や多分野で埼玉県に縁のある人びとが招待された。
本紙の取材に団長の神尾議長は「初めての訪問だが、QLD州の人びとの人柄や環境など、穏やかさや心の広さを感じ取れた。この35年の長い交流は、心の交流と人びとのつながりの賜物。そのような関係が、経済も含めて、いろいろな分野に波及している。お互いの地域が共に更に伸びていける基礎が、この友好関係にはある」と語った。
昼食講演会「日豪関係の現状と今後の展望」を開催
シドニー日本商工会議所
シドニー日本商工会議所の企画委員会(委員長=馬島知恵:日立オーストラリア)は10月1日、髙橋礼一郎・駐オーストラリア特命全権大使をゲスト・スピーカーに迎え、昼食講演会を開催し、44人が出席した。
講演は「日豪関係の現状と今後の見通し」と題し、参加者は日豪の特別な戦略的パートナーシップの現状、豪中関係を含む豪州外政、日豪経済関係の見通しなどについて説明を聞いた。
公正取引委員会から専門家迎え講演
シドニー日本商工会議所/在シドニー日本国総領事館
シドニー日本商工会議所の企画委員会(委員長=馬島知恵:日立オーストラリア)と在シドニー日本国総領事館は10月4日、日本の公正取引委員会から諏訪園審議官、土平課長補佐、高原総括係長を講師に迎え、「ACCC公表のデジタル・プラットフォーム事業に関する調査報告書と日本企業への影響」をテーマに説明会を開催、20人が参加した。
説明会では、オーストラリア競争消費者委員会(ACCC)公表の報告書の概要、日本における外国競争法コンプライアンスに関する取り組み状況、デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方等について説明を聞いた。
元卓球日本代表、福原愛さん来豪
乳業大手フォンテラのアンバサダーに就任
ニュージーランドの大手乳業メーカー、フォンテラのオーストラリア法人、フォンテラ・オーストラリアは10月25日、タロンガ・ズーのハーバー・ボール・ルームで、同社製品のプロモーション・イベントを開催した。会場には同社のイメージ・キャラクター及び、アンバサダーに就任した元卓球日本代表の福原愛さんが招かれた。
イベント冒頭では同社のドリンク&ミルク・パウダー部門のマーケティング・マネジャー、ケイト・アイルランド氏が登壇し、同社の歴史や商品の強みなどのプレゼンテーションを行った。その後、新たにアンバサダーに就任した福原愛さんの紹介が行われると共に福原さんが会場に現れた。
ステージ上では、MCと福原さんによる質疑応答が行われ、メディアからの質問時間も設けられた。会場に招かれたゲストの大半が中国系だったこともあり、福原さんは流ちょうな中国語で質問に答えた。
同社のアンバサダーに就任した理由について福原さんは「オーストラリアは環境も空気も良いし、ミルクを作る場所として非常に優れていると感じています。昔は選手として栄養を非常に大切にしていましたが、今は家族の健康のために一層栄養のあるものを食卓に取り入れることを意識しています。フォンテラ社の粉ミルクにはプロテインやビタミンがしっかりと入っているのでお勧めしたいと思いました」と話した。それに対し、MCも「愛ちゃんの自然で健康的な雰囲気はフォンテラ社のイメージにもぴったり」と返した。
また、福原さんは「中国人のファンと日本人のファンの違い」に関するメディアからの質問に対し、「日本のファンは、メディアで子どもの時から取り上げられていたことから、小さな頃から私を娘や孫のように見守ってくださいました。一方、中国のファンは私が世界に出るようになってから応援してくださっています。日本のファンが親戚のような存在であるとすれば中国のファンはお友達のような存在です」と話した。
更に「スポーツ選手から母になって何か変わったか」という質問に対して、「スポーツ選手だった時も練習はつらかったですが、ママはもっともっと大変なことなのだと知りました。多くのママにお疲れさまと言いたいです」と答えた。
トーク・セッション後はマスター・シェフのマーク・ノーモイル氏と共に、同社の粉ミルクを使ったレシピを元に調理のデモンストレーションを行い、会場は大いに盛り上がりを見せた。
カウラ・バス・ツアーを開催――シドニー日本人会
シドニー日本人会(会長=中城英喜:三菱UFJ銀行)の文化委員会(委員長=桑田誠一:丸紅オーストラリア会社)は9月28~29日、毎年恒例のカウラ・バス・ツアーを開催した。日本人会会員を中心に26人が参加した。
第二次世界大戦中、シドニーから西に約330キロの内陸にあるカウラには捕虜収容所があり、1,000人以上の日本兵捕虜が収容されていた。終戦前年の1944年8月5日午前1時50分ごろ、「カウラ・ブレークアウト」という集団脱走が決行され、日本兵231人、オーストラリア兵4人の死者と、多くの負傷者を出す惨事となった。こうした歴史的背景から、カウラ市は毎年、カウラ・ジャパニーズ・ガーデンに桜が咲く9月下旬に「桜まつり」を催し、その最終日に戦没者慰霊祭を実施している。
今回のツアー初日に参加者は桜まつりに参加し、ジャパニーズ・ガーデンを見学。更に2日目は、捕虜収容所跡を訪れ、引き続き戦没者慰霊祭に参列した。
カウラ戦没者墓地で追悼法要――桜祭り最終日に
今年はカウラ・ブレークアウトから75年目となる節目の年です。3月には多文化祭で日本が53年ぶりに2度目のホスト国に選ばれ盛大に開催され、8月5日の記念行事も賑々しく行われました。
そして恒例の桜祭りの最終日9月29日にも、カウラ戦没者墓地にて追悼式典(Service of Respect)が行われ、日系団体からは、在シドニー日本国総領事館の松尾秀明主席領事、宮地宏シドニー商工会議所会頭、中城英喜シドニー日本人会会長、コステロ久恵シドニー日本クラブ会長、渡部重信・浄土真宗本願寺派(西本願寺)開教使、井川信也シドニー日本人国際学校校長らが出席。また、日本から専修大学の合気道部代表が来豪。そしてカウラ市からは、ビル・ウェスト・カウラ市長、ボブ・グリフィス・カウラ日本庭園首席、ゴードン・ロール・カウラ・ブレークアウト協会代表と、ハービー・ニコルソン同副代表らが代表献花を行いました。
シドニー日本人会バス・ツアーの一行や、さくら合唱団団員、そして一般の参拝者が一同に集い、カウラ日本協会理事のトニー・ムーニー氏の司会、そしてさくら合唱団の両国国家の合唱等があり、式典は厳かに営まれました。日本側墓地では献花式の後、仏式の追悼法要が渡部開教使を導師として勤められた後、参列者が焼香を行いました。
法要後は、かつて同式典に毎年出席していたドン・キブラー氏(カウラ日本庭園財団日本協会会長)の入所するホームを訪問し、旧交を温めました。
(投稿=渡部重信・浄土真宗本願寺派(西本願寺)開教使/オーストラリア開教 事務所所長)
ブリスベン日系社会の歴史を感じる野外セミナー開催
9月22日、ブリスベン市内のトゥオング墓地で「トゥオング墓地に眠る初期日本人移民」と題する野外セミナーが催され、参加者は当地の日系社会の歴史について学んだ。
トーク解説を行ったのは、長年クイーンズランド大学で教鞭を取り、現在は同大学の客員上級研究員を務める永田由利子氏。今回のセミナーでは、日系移民の研究で知られる同氏が、戦前から同地に根付き同墓地に眠る日系のデシノスキ家などを紹介した。デシノスキ家の初代であり、サーカス団の曲芸師として来豪し定住した櫻川力之助から、数えて5代目に当たるジェフリー・デシノスキ、6代目のロイデン・フィットン両氏がスペシャル・ゲストとして招かれ、同家に関するさまざまなエピソードを語った。セミナーの後は、参加者全員でデシノスキ家の2代目に当たるユワー・デシノスキ(力之助の養子)ともう1人の初期移民である村上順三を墓参した。参加者にとっては、ブリスベン日系社会の歴史に思いを馳せるひと時となった。
JFCフード&エキスポ2019開催
シドニー北郊チャッツウッドで
食品卸のJFCオーストラリアは10月6日、シドニー北郊チャッツウッドで日本の酒蔵、食品業者などを一堂に招いた「JFCフード&エキスポ2019」を開催した。日本の食文化の普及を目的に開催される同イベントがシドニーで行われるのは昨年に続き5回目となる。会場には、日本酒や日本食を更にシドニーの飲食業界に深く浸透させるべく同社と取り引きのある業者が集まり全62ブースが設置された。日本各地の酒蔵を始め、加工品や調味料業者、ダシ業者など、日本各地から訪れた担当者が、それぞれPRを行った。
日本の工芸品ワークショップが好評
シドニー・クラフト・ウィークで
日本の伝統的な技術を使った工芸品のディストリビューター「シンプリー・ネイティブ・ジャパン」は10月11~20日、シドニー各所を会場に開催されたシドニー・クラフト・ウィークでレッドファーンにポップアップ・ストアを出店した。陶磁器やテキスタイルなどさまざまな日本製品を販売した他、日本やローカルのアーティストによるワークショップも開かれた。
11日にポップアップ・ストアで開かれたオープニング・パーティーには約60人が参加。ワークショップは、招き猫やミニチュアの苔庭、藍染めの他、吉野杉と吉野桧(ひのき)を使った木製ブロック「tumi-isi(ツミイシ)」など、伝統工芸と不可分な日本文化や精神性も併せて体感できるプログラムが用意され、連日ほぼ満員になるなど日本工芸への関心の高さが伺われた。アッパー・ハンター・バレーで開かれた出張プログラムでは、日本人ワイン醸造家ラドクリフ敦子氏のワイナリー「スモール・フォレスト」を会場に、奈良県からデザイナーでtumi-isi考案者の菅野大門氏を招いてワークショップを行い、参加者はオーストラリア産ワインと日本の工芸体験を同時に楽しんだ。
シンプリー・ネイティブ・ジャパンは在豪の建築デザイン会社やインテリア・オフィスに日本の上質な素材を提供している。今回のイベントでは、一般向けに工芸製品の製作背景や職人技術の醍醐味などを体験的に知ってもらう機会として企画された。
日本発カード・ゲームでSDGsを体感するワークショップ
シドニーで12月開催
10年先の環境・社会・経済状況をシュミレーション・ゲームで体感するワークショップ「SDGs カードゲーム in Sydney」が12月4日、シドニーCBDで開催される。同ワークショップは日本発のカード・ゲーム「2030 SDGs」を通じて、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)への理解を深めるもので、中学生以上が対象。
同カード・ゲームは、SDGsで定められた17の目標を達成するため、現在から2030年までの道のりを体験していくというシュミレーション・ゲームで、一般社団法人イマココラボが開発した。これまで企業や省庁・地方公共団体、学校の他、ニューヨークの国連本部などさまざまなシーンで10万人以上が活用している。
同ワークショップの主催は、オーストラリアで蜜ろうエコ・ラップ・ブランド「コケビー」を手掛け、脱プラスチックの啓蒙活動などを行うAIYオーストラリア。SDGsの基本概念を知りたい人から、企業内でのSDGsの浸透や組織開発、経営計画立案などに役立てたい人まで幅広い対象に向け同ワークショップを企画した。ファシリテーターはシンガポール在住のライフ・コーチ畑山理沙氏が務める。
SDGsは国連加盟193カ国が2016~30年の間に達成するために掲げられた目標で、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成される。持続可能性への本質的理解と普及は各国政府や企業において急務とされている。
■SDGs カードゲーム in Sydney ~10年先の環境・社会・経済状況をシュミレーション・ゲームでリアルに体感!~
日時:12月4日(水)6PM
会場:Café 259(259 Clarence St., Sydney NSW)
参加費:$50
Web: kokebee.com(申し込み・問い合わせ)
UNSW大学日本研究専攻学生による発表会
日本文化などテーマ
ニュー・サウス・ウェールズ大学(UNSW)の日本研究専攻の学生による発表会が11月22日、シドニー近郊ケンジントンの同大学構内で開かれる。同発表会は、日本に関する幅広いテーマを研究する学生たちにより毎年開催されており、今年で10周年を迎える。
今年の学生の研究発表テーマは「日本語と英語のユーチューバー」「日本の学校給食」「日本の食文化」「日豪の健康意識」など。発表会の後には懇談会も予定され、学生らと触れ合うことができる。発表会・懇談会の参加は無料だが、11月15日までに下記連絡先へ事前予約が必要。
■UNSW日本研究専攻学生発表会
日時:11月22日(金)受付開始2:30PM、開会2:45PM、懇談会6~7PM
会場:Central Lecture Block (CLB) 5, UNSW Sydney High St., Kensington NSW
料金:無料
Email: unswjapanesehappyo2019@gmail.com(予約、問い合わせ)
doq、NSWエクスポート・アワードのファイナリストにアジア太平洋地域でのビジネスが評価受け
2019年プレミアズNSWエクスポート・アワード(2019 Premier’s NSW Export Awards)のプロフェッショナル・サービス部門で、シドニー拠点の在豪日系マーケティング企業doqがファイナリストに選出された。同アワードは、NSW州においてビジネスの発展、雇用機会創出などに貢献した企業を称えるもので、同社は日本を含めたアジア太平洋地域に対するマーケティング・ソリューションの提供、輸出を行ったことが評価された。
同社は、日本と世界をつなぐというビジョンを掲げ、2009年にグループ・マネージング・ディレクターの作野善教氏が創業。今回の受賞を受け、同氏は「当社はクライアントやベンダー、メディア会社との良好な関係によって創出される優れたサービスを提供している。NSW州コミュニティーへの貢献につながる仕事は非常にやりがいのあること」とコメントしている。
doqは今年、同社のオフィスが2019年シドニー・デザイン・アワードで銀賞を受賞した他、マムブレラ・トラベル・マーケティング・アワードとエシック・ビジネス・アワードのスモール・ビジネス部門のファイナリストにそれぞれノミネートされている。
SBSラジオ日本語放送11月のハイライト
SBSラジオ日本語放送は毎週、火曜、木曜、土曜の午後10~11時に番組を放送している。番組は、AMラジオ1107khzにチューンを合わせる方法と、デジタル・テレビのデジタル・ラジオ「SBS Radio1」を選択する方法で聞くことができる。
11月のシドニーサイドでは、先住民アートに出合ったYuko Watanukiさんや、10月に行われた記念すべき第50回日本語弁論大会の優勝者のスピーチなどを放送予定。また、オーストラリア/NZツアー中の日本のバンド「少年ナイフ」のNAOKOさん、日本人俳優として初めてシドニー・シアター・カンパニーの舞台に立つ岩崎麻由さんへのインタビューなど、聞き逃してしまった先月の放送もSBSのウェブサイトで聞くことができる。
なお、毎月最終週の木曜には、日豪プレス翌月号の見どころや取材の裏話などを編集部スタッフが紹介している。次回は11月28日(木)放送予定。
■SBSラジオ日本語放送
Email: Japanese.program@sbs.com.au
Web: www.sbs.com.au/Japanese
Facebook: www.facebook.com./SBSJapanese
世界142の国・地域で日本語教育拡大
国際交流基金が調査
国際交流基金が海外における日本語教育機関の状況を把握するために行った2018年度の「海外日本語教育機関調査」の結果が10月8日に発表され、日本語教育機関数、教師数、学習者数のいずれも増加していることが明らかになった。
国際交流基金は1974年から3年に一度、全世界の日本語教育機関を対象に学習者数等の調査を実施している。今回の調査では、前回(15年度調査)から新たに5カ国(ジンバブエ、東ティモール、ベリーズ、モザンビーク、モンテネグロ)を含む142の国・地域において日本語教育が実施されていることが確認された。機関数、教師数、学習者数とも、一部の国・地域を除きアジア・オセアニアでの伸びが顕著となっている。
海外の日本語教育機関の数は中国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー等で大きく増加し、過去最多だった前回を上回る1万8,604機関(15%増、前回比)となった。日本語教師数も過去最多を更新する7万7,128人(20.3%増)となり、特にベトナムやミャンマーでは増加率が顕著だった。機関数・教師数ともにアジアでの著しい増加が明らかとなった。
日本語学習者数は384万6,773人と、前回比で約19万人増加した。地域別では中国、オーストラリア、タイ、ベトナム等で増加、一方インドネシア、韓国、台湾、米国等で減少という結果が出た。
教育段階別の学習者数に増加が見られたのは初等教育(小学校に相当、20.9%増)及び学校教育以外(37.1%増)。中等教育(中学・高校に相当)と高等教育(大学等)ではわずかに減少が見られたものの、海外で日本語を学ぶ人の年齢層は幅広くなる傾向が確認された。調査結果の詳細は同基金のウェブサイトから確認できる。
■国際交流基金
Web: www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/index.html
RENCLUBから入賞者多数
オーストラリア国際青少年競書展
オーストラリアの中国語新聞「新快報」などを発行するオーストラリアン・ニュー・エクスプレス・メディア・グループは10月2日、第2回オーストラリア国際青少年競書展の結果を発表し、シドニー北部チャッツウッドの書道教室RENCLUBから部門1位を含む多数の入選者が決定した。
同コンペは、3~26歳までの年齢別4部門ごとに墨と毛筆を用いた書作品を対象とするもの。各部門で1~3位の他トップ10が入選となる。RENCLUBから応募した原田眞君(5歳)の作品「ゆめ」が、最年少部門となる3~8歳部門の第1位に輝いた他、同教室から出品した16人のうち11人が入選を果たし、入選41枠の約4分の1を占める快挙となった。
同教室主宰者の書家れん氏は「審査員の先生方は全員が中国系で、日本独自の平仮名の作品『ゆめ』を第1位に選ぶことは大変な決断だったかもしれないが、それほどのすばらしさが眞君の作品にはあったと思う」とコメントしている。RENCLUB自体も昨年に引き続き「優秀団体アワード・サーティフィケート」を獲得した。
同コンペの入選作品は、アジア国際青少年競書フェスティバル(Asian International Youth Calligraphy Festival)に出品されることが決まっている。
ANU学生歌舞伎「ザ・歌舞伎」一座
第42回公演に留学生ら参加
毎年恒例のオーストラリア国立大学(ANU)アジア・太平洋カレッジ日本センター及び在豪日本大使館共催の学生歌舞伎「ザ・歌舞伎」を中心とする公演「第42回日本の夕べ」が、キャンベラ豪日協会などの協賛の下、去る10月11~13日、同大学構内にある劇場「シアター3」で行われた。
公演期間中、2011年3月の東日本大震災の被災者に対する義援金を募り、3日間の公演で集まった300ドル余りが、震災で親を失った中学生・高校生を定期的にキャンベラに招く「東北青少年プログラム」を主催する豪日協会に寄付された。
初日と2日目は、前座として、澄江・デイビースさんによる「千鳥の曲」の琴演奏と、交換留学生として1年間ANUで学んでいる水野挙徳(たかのり)君による津軽三味線の演奏が雰囲気を盛り上げてくれた後(最終日は津軽三味線のみ)、歌舞伎の上演に移った。
今年の学生歌舞伎は、森鷗外原作の『ぢいさんばあさん』という演目で、「ザ・歌舞伎」にとっては初挑戦の芝居であった。江戸で仲良く暮らしていた夫婦の夫が、妻の実弟の不始末の後処理を引き受けて京の都に赴任中、ふとしたことから朋輩を殺めて越前国に身柄を預けられていたが、37年後に恩赦によって江戸に戻ることを赦され、懐かしの自宅で妻と37年ぶりに再会するという筋書きである。
ANU学生歌舞伎の伝統で、主として男子学生が女形を、女子学生が男役を演じることに変わりはないが、昨年同様、今年もその伝統に固執せず、男子学生にも女子学生にも自由に役を選んでもらった。例年通り、日本人留学生や、日本文化に興味と関心のある留学生も多数参加した。
せりふは台本通り全て日本語で演じるので、日本語を理解しない多くの観客のために、3年前から取り入れている英語の字幕方式を今年も採用し、好評を得た。
今年も満席に近い観客席からの熱気が、演じる役者にもしっかり伝わった。笑いを狙った箇所では観客がしっかりと笑ってくれ、主人公の夫婦が37年ぶりに再会する終盤は涙なしには見られなかったと言う舞台評を何人もの観客から聞くことができ、役者・裏方一同、「役者」冥利に尽きる感動を味わった。今年も3日間ともプロンプターが開店休業状態という理想的な舞台で、役者も観客も大いに楽しんだと言えよう。
(投稿=池田俊一/オーストラリア国立大学アジア・太平洋カレッジ日本センター客員研究員、歌舞伎演出・監督)
アデレードで領事出張サービス
在メルボルン日本国総領事館
在メルボルン日本国総領事館は12月7日、SA州アデレードで領事出張サービス「1日総領事館」を実施する。在外公館のないSA州在住の邦人を対象に、在外選挙人名簿登録や、在留届、旅券(パスポート)の申請・交付、各種証明書(在留証明、署名証明など)の申請、出生届、婚姻届、戸籍や国籍に関わる届出などに関するサービスを提供する。
当日、各種証明書の交付を受ける人は、11月27日必着で同総領事館宛てに郵送申請を行う。当日受付の場合、郵送での交付はできないため、後日、本人または委任状を持つ人が直接、同総領事館に取りに行くことになる。
また、会場にはコピー機がないため、事前に必要な書類の写しを用意する必要がある。
■1日総領事館
日時:12月7日(土)8AM~1PM
場所:アデレード補習授業校体育館 Rose Park Primary School(54 Alexandra Ave., Rose Park, SA)
問い合わせ:在メルボルン日本国総領事館領事部
Tel: (03)9679-4510(平日9AM~1PM、2PM~5PM)
当日の連絡先Tel: 0407-303-769
郵便物の宛て先:Consular Section, Consulate-General of Japan(Level 25, 570 Bourke St., Melbourne VIC 3000)
Web: www.melbourne.au.emb-japan.go.jp/itpr_ja/adelaide.html
「日本の教育デー」開催
シドニー日本人国際学校で
シドニー日本人国際学校は10月20日、日本の教育を体験するイベント「日本の教育デー」を同校内で開催した。対象は現地校などに通うイヤー1からイヤー6の児童。日本の教育に興味があれば誰でも参加可能ということもあり、当日は20人以上の児童が集まった。
当日は理科、算数、体育の3科目に加え、書道、ギター、空手などのクラブ活動体験が行われ、ランチ・タイムには日本食レストランのケータリング弁当も配られた。
井川信也校長は、同校初の試みに対し「日本人国際学校にも多くの日本人の生徒たちが通っていますが、日系コミュニティー全体から見たらほんの一部です。現地校に通われている日系人の中にも、日本の教育に興味がある人がいるのではないかと考え、今回のイベントを開催しました。教科の選択に国語を入れるか迷いましたが、日本は世界でも理数系の教育が優れているということもあり理科と算数、そして日本の体育も知ってもらいたいということで、この3科目としました」と話している。
第50回全豪日本語弁論大会
記念レセプションも開催
国際交流基金シドニー日本文化センター(ジャパンファウンデーション)と在オーストラリア日本大使館が共催する第50回全豪日本語弁論大会が10月12日、チッペンデールにある同センターで開催された。
同大会には、オーストラリアの州・特別地域大会のハイスクール・シニア部門とオープン部門で優勝した14人とニュージーランド代表の高校生1人の計15人が出場。それぞれが独自のテーマでスピーチを発表し、日頃の日本語学習の成果を披露した。大会の様子はライブ中継もされた。
ハイスクール・シニア部門で優勝したのは、「丁寧戦争」というタイトルの下、日本のコンビニエンス・ストアでの実体験をユーモラスに語ったキャサリン・リウさん。オープン部門では、「いろは歌と楽天主義的ニヒリズム」という日本人顔負けの踏み込んだ題材を堂々とスピーチしたアムリット・クンバーさんが優勝に輝いた。
各部門の優勝者には日本航空株式会社から日本への往復航空券、JR東海から「新幹線で行く京都」のパッケージ旅行、JTBから富士箱根ツアーが贈られた。2位、3位と特別賞受賞者にも、アシックス、テンプル大学ジャパン・キャンパス、立命館アジア太平洋大学、青山学院大学、紀伊國屋書店、アディナ・アパートメント・ホテルズから賞品が、また全ての出場者に帝京大学からグッズとジャパンファウンデーションから本大会50周年の記念グッズが贈られた。
ジャパンファウンデーション・シドニーの和田好宏所長は、「1970年代に初めて全豪日本語弁論大会が開催されてから半世紀が経ちました。こうして続けてこられたのも、審査員、スポンサーの方々、運営委員会、そして出場者の皆さんのおかげです。また、出場者の先生、教授、ご家族、そして友人たちにも、彼らの日本語学習の手助けをしてくださったことにお礼を申し上げます」と閉幕の挨拶をした。
開催50回記念レセプション
日本語弁論大会開催の前日、11日には開催50回目を記念するレセプションが、セントラル・パークにあるジャパンファウンデーション・シドニーで行われた。レセプションでは、過去の受賞者らがスライドで紹介されると共に、実際に会場を訪れていた受賞者が登壇。当時の記憶をユーモアを交えながら話した。
ジャパンファウンデーョン・シドニーの和田好宏所長は「昔の資料から過去の受賞者を探し出すのはなかなか大変でしたが、多くの方にお声がけし、実際にお会いすることができて良かった」と話している。
来年2月にGCで漢字検定
12月2日に申し込み締め切り
ゴールドコースト日本人会は2020年2月8日、日本漢字能力検定(漢検)の2~10級の試験をゴールドコーストのオール・セインツ・アングリカン・スクールで行う。
漢検は、漢字能力を測定する主要な技能検定。公益財団法人・日本漢字能力検定協会が実施している。同日本人会は漢検を実施できる「準会場」に認定されている。
受験申し込み希望者は、12月2日までに下記ウェブサイトに必要事項を入力して送信を。
■日本漢字能力検定(ゴールドコースト日本人会)
日時:2020年2月8日(土)1PM~2PM
会場:All Saints Anglican School(Highfield Dr., Merrimac QLD)
申し込み締め切り:12月2日(月)
料金:10~8級(日本人会会員$35、非会員$45)、7~5級(日本人会会員$45、非会員$55)、4~準2級(日本人会会員$50、非会員$60)、2級(日本人会会員$75、非会員$85)
Tel: (07)5531-6661(火・木9AM~1PM)
Email: info@jsgc.org.au
Web: jsgc.org.au/kanken-2020
ホラーマンガの原画を多数展示
レトロ・ホラー展、開催
国際交流基金シドニー日本文化センター(ジャパンファウンデーション)は10月18日、同日から始まったエキシビション「レトロ・ホラー」のオープニング・レセプションを開催した。同エキシビションはNSW美術館で11月2日から行われる妖怪などをモチーフにした特別展「ジャパン・スーパー・ナチュラル」と連動し、明治大学にある漫画とサブカルチャー専門の図書館「米沢嘉博記念図書館」協力の元、現在も開催中だ。
レセプションで登壇した明治大学、米沢嘉博記念図書館の鈴木紀成氏はシドニーでのエキシビションのオファーに際し、「国内では同様の主旨の展覧会を何度か行っていますが、国外からのオファーだったので驚きました」と話した。
会場には60年代に活躍したムロタニツネ象氏、70年代に活躍した日野日出志氏、そして80年代に活躍した御茶漬海苔氏らの作品が多数展示。御茶漬海苔氏の原画展示は今回のシドニーが初だという。
「日本で開催する際にはテキストが長いものが多かったのですが、海外ということもあり、文字ではなくよりビジュアル的に見て楽しめることを重視した結果、御茶漬海苔先生の作品を展示することを決めました」(同鈴木氏)
エキシビションは1月24日まで開催。
オペラ・ハウスで初の「令和日本伝統芸能祭」開催
令和新元号を記念して
シドニー・オペラ・ハウスで12月16日、日本の古典芸能や伝統文化のパフォーマンス・イベント「令和日本伝統芸能祭2019(Japan Spectacular)」が初開催される。オーストラリア国内だけでなく東京や沖縄からも多くの古典芸能アーティストが一堂に会し、令和新元年の記念として、日本の魅力を世界遺産オペラ・ハウスでアピールする。
同イベントのオープニングではシドニー在住の箏曲家・小田村さつき氏の琴演奏といけばな講師・多田喜巳氏による華やかなデモンストレーションが披露される。オーストラリア国内からは、シドニーの和太鼓グループ「TaikOz」による太鼓と鬼剣舞、ブリスベンの名古屋西川流日舞の西川ひろぎく氏による日本舞踊、メルボルンの沖縄民謡グループ「いちまでぃん」による沖縄太鼓と三線演奏などが予定されている。さらに特別ゲストとして、吟詠吟舞錦凰3代目の荒井龍凰氏が東京から来豪しTaikOzの太鼓とコラボで剣舞を舞う他、沖縄からは沖縄タイムズ・グランプリ受賞者の美音氏による沖縄三線と歌も披露される。
同イベントの経費を除く収益は、主催団体JCSレインボー・プロジェクトによる東日本大震災復興支援の活動費に寄付される。後援はジャパンファウンデーション、日本政府観光局(JNTO)など。
■令和日本伝統芸能祭2019
日時:12月16日(月)7PM
会場:The Studio, Sydney Opera House
料金:$80~150
Tel: (02)9250-7777
Web: sydneyoperahouse.com/japanspectacular(チケット販売)、jculture.net(イベント詳細)
全豪各地で“日本代表”が奮戦
10月はサッカー関連のさまざまな“日本代表”が世界大会参加のために全豪各地を訪れた。代表チームの当地での奮闘ぶりをダイジェストでお伝えする。
最初にダウンアンダーの地を踏んだのは、10月1日からパースで行われた「WMFミニ・フットボールW杯」に参戦したミニ・フットボール日本代表だ。同競技は6人制の野外で行われるサッカーで、5人制の屋外フットサルとは異なる。日本からは国内大会を優勝した東洋大学サッカー部が日本代表として来豪した。世界の強豪を相手に予選リーグの3試合を戦い、3戦2分1敗で残念ながら決勝トーナメント進出を逃した。
続いては、10月9日からブリスベンで行われた、知的障害を持つ人びとの国際総合スポーツ競技大会「INASグローバル・ゲームス」に参加するため、知的障害者フットサル日本代表が来豪した。10人の代表選手は、大会直前合宿を経て前回大会以上の結果を求めて奮戦するも、5戦1勝4敗という結果で参加した7チーム中6位でフィニッシュ。チームを指揮した木村純一監督は「世界との差を感じつつも、選手達が大会中に大きな成長を見せるなど収穫多い大会となった」と振り返った。
シドニーでは、10月23~25日にかけて電動車いすサッカーの国際大会「アジア太平洋オセアニア(APO)カップ」が行われ、電動車いすサッカー日本代表の7人が参戦した。オーストラリア、同U-21代表、ニュージーランドを相手に6試合を戦い、3勝1分2敗という成績を収めた。
昨今の日豪スポーツ交流の深化を受け、パラスポーツやマイナー競技も含めて、さまざまなチームが日本から遠征に来ている。2020年の東京五輪・パラリンピックを1年後に控え、日豪スポーツ交流は、ますます加速しそうだ。(文=植松久隆/本誌スポーツ特約記者)
和太鼓集団TaikOz最新作
シドニーで世界プレミア公演
シドニーを拠点に活動する和太鼓のパフォーマンス集団「TaikOz(タイコーズ)」の新作「Seven Flowers」のワールド・プレミア公演が10月18日、シティ・リサイタル・ホールで行われた。
今作は、世阿弥が『風姿花伝』の中で年齢に応じた稽古法について説いた「7段階の人生論」にインスピレーションを受け、TaikOzと特別ゲストらの幅広い年齢構成を生かして、アーティストの人生と作品のさまざまな側面を表現。特別ゲストとして参加したのは、尺八奏者のライリー・リー、歌手・打楽器奏者のジェス・チャンパ、シドニー児童合唱団のエヴァ・アンカー、TaikOzの学生グループ「TATAKU」のタイキ・ケンドリック、MLCスクール太鼓クラブ所属のザラ・ルオン。
TaikOzのメンバーで、重要な役どころを担った濵田隆二さんは「今回は若いメンバーから上はライリー・リーまでバラエティー豊かなメンバーが、年代ごとに違う良さが出る曲を演奏するのが見どころ。メンバーの1人ひとりが、一生懸命自分の花を咲かせようと演奏します。他の場所ではなかなか観ることができない公演だと思います」と本作への思いを語った。
また、吊り下げ装置やプロジェクションなどを取り入れたプロダクション・デザインに、現代アートの要素が加わった演出など、さまざまなエッセンスが組み込まれた同公演は、単なる和太鼓の演奏という音楽の枠を超えて、多くの観客を魅了した。
テニス土方選手、米プロ・ツアー大会で初優勝
12月には全豪オープン・プレーオフ出場
9月16~22日にアメリカのアーカンソー州で開催されたテニスの国際大会「M15 フェイエットビルAR」で、オーストラリア出身の土方凛輝選手(18歳、マックヒジカタ・テニス・アカデミー)がプロ・ツアー初優勝を果たした。
同選手は同大会の準々決勝でイヴァイロ・ケラメティヴ(ブルガリア)に6-2、6-2と圧勝。準決勝は第1シード、仁木拓人(日本)を6-1、2-0と圧倒し、第2セットに仁木選手のリタイアで勝利した。
決勝は第2シード、ニック・チャペル(アメリカ)に第1セットを2-6で落とすも、その後6-2、6-1と逆転して優勝を決めた。全米オープンのジュニア男子シングルスで3回戦進出を果たした直後のプロ・ツアー優勝となった。
土方選手は引き続きアメリカのプロ・ツアーを周り、12月には「2020全豪オープン・プレーオフ」に出場予定。
■NSW州立美術館・日本語ボランティア・ガイド便り
特別展「Japan supernatural」第2弾
NSW州立美術館史上最も大きな日本アートの展覧会「Japan supernatural」では、江戸時代から現代までの日本の妖怪や幽霊、化け物をテーマにした作品が世界中から大集結します。今回は、その見どころの一部をご紹介。
ボストン美術館からやって来る、妖怪の「Who’s Who」とも言える、鳥山石燕の長さ5メートルの絵巻。そして大英博物館からは、幕末期に活躍した浮世絵師、歌川国芳の大判錦絵3枚続きの「相馬の古内裏」(1845~46年)。大胆な構図で骸骨(がいこつ)を描き、しかもその骸骨の描写は、学術的にもかなり正確と指摘されています。平将門の遺児、滝夜叉姫が亡父の遺志を継ぎ謀反を企てるお話を描いたもの。
当美術館所蔵の水木しげるの東海道ならぬ妖怪道五十三次作品「日本橋」(2008年)と並んで展示される歌川広重の「東海道五十三次、日本橋」(1833~34年)は、アメリカのブルックリン美術館から来ます。この2つの作品は、ほぼ同じ構図で、並べて観る機会は、今展のみ!
葛飾北斎が百話の怪談を浮世絵にするつもりで描いた、「うらめしや~」で知られる四谷怪談のお岩さんと「いちま~い、にま~い」の番町皿屋敷のお菊さんの2点は、ミネアポリス美術館から。井戸から出てきたお菊さんの長い首がお皿を重ねたようで、北斎のユーモアを感じます。お岩さんは、怖いというより、ちょっとかわいい感じも……?(注:作品保護のため作品の入れ替えがあります)
この他、現在活躍中の日本人コンテンポラリー・アーティストの作品も必見! 村上隆の高さ3メートル、長さ25メートルの大パネル作品や、4.5メートルの高さの赤鬼青鬼と思しきインスタレーション作品は圧巻ですし、女流アーティストによる、繊細なのに怖い作品も多数。1つひとつの作品の中に伝統的な日本文化の根を見出して楽しめる展覧会です。
毎週土曜の午前11時から日本語による今展のハイライト作品の見どころをご案内するツアーを催行します。奮ってご参加下さい。(NSW州立美術館コミュニティー・アンバサダー:鴨粕弘美)
■Japan supernatural展
日時:11月2日(土)~2020年3月8日(日)10AM~5PM(水曜のみ10PM閉館)
場所:Major exhibition gallery, Art Gallery of NSW(Art Gallery Rd., Sydney NSW)
料金:大人$25、コンセッション$22、美術館会員$18、家族(大人2人+子ども3人まで)$62、12~17歳$12、12歳以下無料(Qtixで購入可、手数料$2)
Web: artgallery.nsw.gov.au/exhibitions/supernatural
■無料日本語ツアー(予約不要)
<Japan supernatural展ツアー>
日時:11月2日(土)~2020年3月8日(日)の毎週土曜11AM
備考:ツアー開始前に展覧会入場券を購入の上、地下1階の会場前に集合
<常設展ハイライト・ツアー>
日時:毎週金曜11AM~
■新刊紹介
『作文・論文副読本Ⅲ F. カフカの<隠された意志>を旅する』
シドニー在住の作家・永淵閑(ながぶちかん)氏の新書『作文・論文副読本Ⅲ F. カフカの<隠された意志>を旅する』が今年8月に刊行された。
同書は、作文や論文の執筆・解釈に悩む学生や教員の他、文学を通して哲学的・論理的な思考力を培いたい人などに向けて執筆されたもの。小説家フランツ・カフカのバックグラウンドへの理解を深めながら、『変身』『掟の門』などの短編小説の文章を取り上げ、ストーリーや登場人物、文学的テクニックなどから著者と作品を分析している。また、著者は日本の作文教育に疑問を投じ、論文教育を促進するため、著者自らエッセイや論文を書き、文章作法について論じている。
■『作文・論文副読本Ⅲ F. カフカの<隠された意志>を旅する』(2019)
著者:永淵閑、出版社:知玄舎