
医療
Q
長年たばこを止めようと思ってきた中、最近電子たばこのことを耳にして興味があるのですが、果たして使っても安全なのでしょうか。(40代会社員=男性)
A
電子たばこはバッテリーで蒸気を発生させるたばこの代替製品です。ほとんどの場合はこの蒸気にニコチンが含まれています。中には香料を含むものもあり、たばこの煙と異なるのは一酸化炭素、タールなどの有害物質が含まれていないということです。まず、電子たばこを使用する理由として以下のようなものが挙げられます。
- 口の中の物足りなさを満たしたり、蒸気を吸ったときにたばこを吸った感覚が味わえる(ニコチン・パッチや禁煙のための薬物療法ではこのような感覚が満たされない)
- 喫煙が禁じられているような場所でも喫煙のムードを楽しめる
- 禁煙療法としての使用
- ニコチン無添加の電子たばこで単純に菓子の味や香料のにおいを楽しむための器具として使う
電子たばこの普及
電子たばこの普及率は年々急上昇しています。その反面、電子たばこに関する規制はまちまちで、はっきりとした方針が定まっていない国も数多くあります。それは、この技術が新しく、医療品としての効用や安全性について詳しく調べられていないことなどが原因になります。
オーストラリアではニコチン無添加の電子たばこを購入しても違法ではありません。しかし、西オ-ストラリア州ではたとえニコチンが含まれていなくても見た目がたばこに類似した商品を売ることはたばこ商品規制法に反するという決断が出ています。ニコチンが添加されている電子たばこに関しては、製造者が禁煙療法に役立つ製品であると言及している場合はオーストラリアの医療製品管理局の審査と許可を得る必要があります。しかし現在、ほとんどの製造者は禁煙療法に関する言及を表示せずに販売しているようです。
電子たばこの安全性
ニコチンは治療用量内で使用している場合は問題ないので、電子たばこに関しても同じことが言えそうです。ただし製造過程の品質管理が行き届いていない商品の場合、不純物が入っていて有害物質が発生する可能性もあります。
電子たばこ使用時には使用者だけがニコチンを吸うのではなく、周辺にも送り出されます。その場合、近くにいる人がその蒸気を吸った時の健康面でのリスクはまだ明らかではありません。データによると15~24歳の人たちの間で特によく使われているようで、これが喫煙に向かうきっかけとなるのではないかという懸念が専門家の間であります。
電子たばこの禁煙効果
現在、禁煙効果に関してのデータは少なく、結論は出せません。多種類の電子たばこが販売されている中、それぞれの器具がどれだけのニコチンを使用者に与えるのかということもあまり分かっていません。限られたデータの中からは禁煙効果はあり、ニコチン・パッチなどよりも多少優れている場合もあるようです。しかし、まだはっきりと安全性と禁煙効果は実証されていませんので今のところ従来の安全な方法に徹することを医療関係者は推奨しています。
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鳥居 泰宏(とりい やすひろ)
ノースブリッジ・メディカル・プラクティス
メルボルン大学医学部卒業。Northbridge Family Clinicを昨年閉院し、現在Northbridge Medical Practiceで診療中