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ダニエル・ボイド「トレジャー・アイランド」展/ボランティアガイド便り

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NSW州立美術館 ボランティアガイド便り

ダニエル・ボイド「トレジャー・アイランド」展 2023年1月29日まで開催中

執筆者=吉澤なほみ/日本語ガイド

Daniel Boyd, 2022 (Image: AGNSW, Jenni Carter)

 アボリジナル現代アーティスト、ダニエル・ボイド(Daniel Boyd、1982生まれ)の、20年間のキャリアから新プロジェクトを含む80点を集めた大展覧会が開催されています。

 ボイドは、西欧中心の歴史思考・記述に対する考察を作品の重要なテーマとしてきました。

 学生時代に、イギリス君主やキャプテン・クックなどの探検家の肖像画を作品に引用し、海賊や侵略者に例えた「No Beard」(2005)シリーズで注目を浴びます。

 また、同年に発表した「Treasure Isl and」(05)は、植民地化の非道な略奪をシンボル化した彼の代表作として知られ、今回の展覧会のタイトルにもなっています。

 このタイトルをボイドは、イギリス作家ロバート・ルイス・スティーブンソンの宝の地図を追う海洋冒険小説「宝島」(邦題)の原題から採っています。250以上の居住圏をさまざまな色で分布した先住民族の豪州地図を引用した作品には、スピリチュアルにつながる大地と、多様で豊かであった先史文化や言語が内包されています。

 09年ごろからボイドは、凸面のドットを繰り返す独特の表現方法を作品に用い始めます。彼が「レンズ」と呼ぶこの手法は、「見る行為」を示唆しており、覆い隠されてきた歴史や真実、現状を顕在化することに焦点を当てています。

 ボイドは、過去の記録を多角的な視点と新しい方向から捉え、改めて表現することで、閉ざされていたイメージを共有化し、過去と同じ過ちを再び起こさないことを提起しているのです。

Art Gallery of NSW

Art Gallery of NSW

ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館。常設展入場無料。本連載は美術館の日本語ボランティア・ガイドが担当。「件名:Japanese Tour」でEメールでの日本語での問い合わせ可。
Web: www.artgallery.nsw.gov.au
Email: volunteerg@ag.nsw.gov.au



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