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いけばなを後ろから見たことはありますか?/ 花のある生活 – flower in life –

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ガマの穂先を直線的に、ガマの葉を曲線的に使用。ユニークな形状の花器から、ギガンチュームがゆったりと伸びています

第48回 開かれた世界に向かって

 年末のごあいさつをさせて頂く時節柄となりました。1年の移り変わりの早さに驚いているのは、私だけでしょうか。2022年も終盤を迎えようとしています。

「壁を作っていないですか?」と、花をいけた作品に対して、何度か言われたことがあります。いけばな作品で壁を作るとは、空間をうまく利用せず奥行きが少ないことを指す場合があります。花器の形状で思うようにできないこともありますが、いけばなは立体的な造形が美しいとされていますので、キャンバスに描く絵画とは違い、前後の広がりも大切な要素となります。

「いけばな作品を後ろ側からご覧になったことはありますか?」──。ほとんどの人の答えが「No」だと思いますが、美しい作品は後ろから眺めても良い表情を持ち合わせています。花本来の姿は正面だけでなくあらゆる角度から眺めても美しいのと同じです。後方までも手抜かりなく仕上げておくと、どのような方向からでも見応えのある作品となります。

 作品の正面に壁を作るような花材の入れ方は、奥行きに制限をかけてしまうかのように感じます。後方がどうなっているのだろうと、想像することの喜びを欠いてしまうようにも思います。少々大げさな言い方ですが、いけばなはそれほどに、空間を大切にしていると言っても過言ではありません。

 今季の作品は、当初真っ直ぐに立てていたギガンチュームが「壁になっていますね」と、私が学んでいる家元研究科でご指摘を受け、右斜め後ろに倒してみたものです。空間が広がり伸びやかな作品となりました。限界を感じさせるような奥行きのないいけ方をやめてみると、今まで感じたことのないような想像を超えた世界が広がってくるように思います。

 国境が開き始め、いよいよ新しい年と新しい世界が幕を開けようとしています。2023年は全ての国々が平和で、実り多い1年となりますことをお祈りしております。本年もご愛読頂き、誠にありがとうございました。

Yoshimi

いけばな作家
Web: https://www.7elements.me/

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