ワーキング・ホリデー・メーカーや、留学生としてオーストラリアで過ごした経験を、日本帰国後に活かして働きたいという人は多いだろう。本記事では、英語力を武器に日本国内で活躍したい人に向け、近年、人気を高め注目されているリゾート会社「星野リゾート」の魅力を、社員へのインタビューを通してお届けする。総支配人室で人事・総務担当に従事している羅允唯(ラ・インイ)さん、アクティビティー・ユニットでマネジャーとして働く、橋本浩一郎さんの2人に話を伺った。同社に興味のある人はもちろん、帰国後のキャリアに頭を悩ませている方々も必見の内容だ。
入社に至るまでの経緯
─羅さん、橋本さんそれぞれのバックグラウンドやこれまでの経歴についてお聞かせください。
羅:私は2015年に入社し、現在、星野リゾート・トマムで人事総務を担当しています。学生時代は、台湾の大学で4年間日本語を勉強してきました。大学2年生の時は東京へ短期遊学、3年生の時は京都に1年間交換留学をしました。台湾の大学を卒業後、来日し星野リゾートに入社しました。入社した当時は、沖縄の離島にある「リゾナーレ小浜島」という施設の配属となり、1年半ほど離島で生活をしていました。北海道に来たのは、6年前(2017年)の春です。
橋本:私は、星野リゾート・トマムで、冬はスキー、スノーボードのアカデミーのマネジャーをしています。現在はスキーやスノーボードのインストラクターとしてはほとんど活動しておらず、マネジメントをしています。学生時代にスノーボードを始め、1999年、趣味がきっかけで、アメリカのコロラドでいずれは日本のスキー場に開校したいという人と出会い、そこからスノーボードをもっと深く追求していきたいと思うようになりました。1999年、2000年くらいでちょうど日本のスキー場でスノーボード人口が増えてきた時期です。その人が、日本のスキー場で開校したいということで、私は、2000年にコロラドでトレーニングを受け、その人と他のメンバーと共に翌年、日本のスキー場で4カ所スクールを開校しました。そして、福島のアルツ磐梯で星野リゾートに関わったというのがきっかけで、現在に至ります。
─羅さんが日本で働こうと思ったきっかけ何ですか。また、どういったモチベーションをお持ちだったのでしょうか。
羅:4年間日本語を勉強してきたので、できれば現地で日本の文化に触れながら、言語を生かしたいという思いを強く持っていました。大学を卒業して1、2年くらいは、日本で暮らしながら就職することを決めました。
星野リゾートで働くことを決めた理由
─お二人が、星野リゾートで働くことを決めたきっかけは何だったのでしょう。また、入社に際し、印象的なエピソードがあればお聞かせください。
羅:台湾で就職活動を行っていた時に、星野リゾートが、ちょうど北海道、沖縄と青森エリアの人材募集で台湾に来ました。説明会に参加したところ、それまで自分がイメージしていた日本の企業と違い、面白いことをやっていそうな雰囲気だったので面接を受け、入社に至りました。
─面接はどのような感じだったのですか。
羅:当時の小浜島の総支配人と1時間ぐらいお話をしました。自分が想像していた面接とは異なり、「今後、自分のキャリアをどう描いていきたいのか」「星野リゾートでどういうキャリアを歩んでいきたいのか」「キャリアを考える時に困っていることや悩みはないか」など、面接というよりはキャリア面談のようでした。
─橋本さんはいかがですか。きっかけとなった出来事は伺いましたが、そこから深く星野リゾートのマネジメントに関わっていくところまで、関わるようになったきっかけを教えていただければと思います。
橋本:コロラド発のスノーボード・スクールを日本で開校し、スノーボード・メーカーの方からの紹介で、アルツ磐梯で星野リゾートが新しいスクールを立ち上げたいということで、我々に声が掛かったというのが入社のきっかけです。スクールの立ち上げ、運営を始めてキャリアを積み、現在スクール全体のマネジメント業務を行っているという感じです。
─羅さんは海外から来られていますし、橋本さんもコロラドで活躍されて、やはり世界を見ている方々が多いですね。星野リゾートは、そういうグローバル人材が多いというのは入社してすぐに感じましたか。
羅:そうですね。私の場合は特に感じました。自分も含めて海外籍のスタッフが入社当時からいましたし、トマムに来た時も、より海外籍のスタッフが多いなという印象がありました。
橋本:私が所属しているアクティビティーユニットは、冬はスキー、スノーボード・スクールなのですが、他のインストラクターだったり、一緒に運営しているスタッフもやはり、カナダやニュージーランドなどでの滞在経験があったりするので、そういった人材が集まる傾向にあると感じます。
誰もがアイデアを実現できる開放的な社風
─以前、星野佳路社長にインタビューをさせて頂いた際、開放的な社風、誰もがアイデアを実現できる社風を特徴として挙げておりました。入社されてそのあたりはどのように感じられましたか? お二人のポジションや業務は異なると思うので、それぞれご自身の立場から具体的にお応え頂ければと思います。
羅:星野リゾートのフラットな組織文化については、入社した当時は、「フラット・カルチャー」というワード自体を聞いたことがありませんでしたが、今振り返ってみると、小浜島で勤務していた時は、本当に国籍や年齢問わず業務を任されたり、自分の意見が言いやすいという場面がありました。当時は正社員だけでなく、短期のスタッフや、アルバイトスタッフも多かったのですが、雇用区分問わず、皆さんが意見を言いやすい環境、楽しく交流できる、建設的に議論できる環境だったと改めて感じます。
台湾出身のスタッフが同期に2人いて、3人で島のドレスを貸出すプログラムの業務を任された際、改善した方が良い点があり、ドレスの柄などを新しいものに変える提案をしてみたところ、「チームのために良い提案であればやってみましょう」と、私たちのアイデアがそのまま通ったことがありました。全員海外籍で、しかも新卒で入社したての私たちに全プログラムを任せるということは、他の会社だとあまりないのではないかと思います。
─しっかりとその業務にコミットする姿勢を持っている人でアイデア出せる人でないと厳しい部分もあるかもしれないですね。
羅:そうですね。指示されたことしかできない人だと、星野リゾートで楽しく働くのがなかなか難しいのではないかと思います。
─橋本さんはいかがですか。
橋本:星野リゾートでは、アイデアを実現できるというのは、私もそう思います。常に改革だったり進化というのを考えており、四季を通しての魅力をチーム内で話合ったり、広報を含め全体で考えて、現場からの発信で行っているというのが特徴だと思います。例えば、2016年までトマムはゴルフ場をやっていたのです。しかし、2017年からファームエリアとして、牛やヤギ、羊など、ファーム的な要素を含んだフィールドに変化した事例があります。そのきっかけというのが、トマムにいらっしゃるゲスト層は家族連れが多く、需要があるのはゴルフ場よりも遊ぶフィールドではないのかというのが現場からの発信でした。年数は3、4年くらい掛かりましたが、結果、ファームエリアが作られました。
グローバル人材として活躍するには?
─グローバル人材として活躍するために必要なスキルは何だと思いますか? また、星野リゾートで活躍するためのマインドセットにはどのようなものが必要だとお考えでしょうか。
羅:まず、星野リゾートで活躍するマインドセットについては、個人的には自ら考えて行動することがとても大切なのではないかと思います。先程少しお話ししたように、フラット・カルチャーという組織文化があるので、常に言われたことをする、もしくは指示されたことをするだけでは、楽しく働けませんし、うまくチーム・メンバーとコミュニケーションを取ることができない場面もあるかと思います。ホテルを運営するにあたり、決められたルールは当然ありますが、なぜそういうルールになっているのか、なぜそういう判断をするかは、一度自ら考え、自分が理解した上でそのルールを守ったり、もしくは理解した上で、改善すべき提案や発想があれば、自分の意見を言い、チーム・メンバーと建設的に議論し、新しいルールを作ることこそが星野リゾートのマチュアなチーム行動だと思います。星野リゾートで働くスタッフは常に自ら考えて行動する発想があると、楽しく働けると感じています。私は、広い視野や、開放的な心を持つこと、そしていろいろな価値観を受け入れて尊重できるマインドがとても重要だと思っています。
橋本:チーム内でも常に言っているのですが、売り上げより、顧客の滞在満足度を上げることを意識しています。顧客優先で対応することです。それが例えば日本人であれば、「スキーの技術を取得したい、上手になりたい」という感覚でスクールなどを受講されるのですが、海外からのお客様になると、滞在が長くて上達はもちろん、楽しく、そして滞在を楽しめるようなレッスンのプランを組み立てて、例えば3日とか受講されると、やはり最終日に最終的な技術がついてくるような顧客志向で常に取り組むというか、それをチーム内で浸透させているというのはあります。そしてもう1つが、顧客への全体責任です。これは星野リゾートの社員関わらず、冬の短期のアルバイトや契約社員の方々もそうなのですが、ゲストからすれば皆、星野リゾートのスタッフなので、そういったところでは、例えばゲレンデで迷っている人や、ホテルの館内のレストランを探している人がいれば声を掛けたり、ごみが落ちていたら拾うなど、一歩踏み出した接客対応を行うことを大切にしています。迷っている人がいれば「どうされました?」と、自身での対応が難しければ「分かる者に聞いてきますので少々お待ちください」というようなことを常に言うことです。そういった顧客への連帯責任というのも重要だと思っています。
グローバル人材としてのマインドセットとしては、多様性も大切だと言えます。昨年10月ごろからコロナ禍の変化に伴い海外からのお客様が大勢いらっしゃいますが、雇用が全然追いつかなかった中、幸いなことに、オーストラリアと日本の国籍を持っている方々やアメリカ人と日本人のハーフの方々など、人材が集まりました。そういった方々は、日本人のお客様の対応もできるし、外国からのゲストにも対応できるため、やはり多様化は非常に重要だなと感じました。
どのような人と一緒に仕事がしたいか
─ずばり、どのような人と一緒に働きたいとお考えですか? 同僚として、部下として、あるいは上司として、どのような立場からのお話でも構いません。お聞かせください。
羅:私は、包容力があり、誰に対しても平等で意見を言い合え、一方通行ではなく双方にコミュニケーションが取れる人と一緒に働きたいです。
橋本:私は新しい価値や進化を求める人。それから、私の立場上やはりスキー、スノーボードの大好きな人が一番かなと思います。
─星野リゾートで仕事をしていてよかったと感じる点、やりがいなどについてお聞かせください。
羅:星野リゾートで仕事をして良かったなと思ったのは、フラット・カルチャ―の下で本当にいろいろな人と接することができて、さまざまな意見や価値観と触れ合うことができるところです。やりがいに関しては2つあります。1つ目は、小浜島で接客していた時期に、自分のやりたいサービスができ、自分のサービスでお客様の旅行が有意義になり、今でもお客様とのつながりを持つことができ、この会社を通して自分の人生も豊かになっていると思えることです。
そして、今は人事総務の業務を通して、海外籍スタッフのサポートなど、スタッフと面談する機会が多く、人事という立場上どうしても他の人から距離を感じられる部分はあると思いますが、自分なりに近い存在であり、話しやすい相手であることを常に意識しています。自分のサポートでスタッフのモチベーションが上がり、自身のキャリアに対して少し方向性が見えてきた際、とてもやりがいを感じています。
橋本:私は、スクール・マネジメントを行っている中で、最終的な達成感にやりがいを感じます。コロナ禍前は、シーズン中、オーストラリアを含め、ニュージーランドやスペイン、フランスなど、欧米チームと英語圏の海外インストラクターが20人程、それから台湾、香港の中国語スタッフが大体30人ぐらい、更に日本人が20人程在籍し、インストラクターだけでも70人ぐらいの大所帯チームをまとめていました。海外籍インストラクターは若い人が多いので、ちょっとしたパニックや想定外のこともたくさんありましたが、最終日は皆ケガもなく、やり終えたというところで、大変なこともある中でチーム運営ができたということに達成感を感じました。星野リゾートだからこそのポジションだと思います。
─現在、オーストラリアで頑張ってキャリアを積んでいる若者が数多くいます。また、すでにグローバル人材として活躍できる職場を国内で探している人も少なくありません。そのような未来のグローバル人材に向けて、お二人からメッセージをお願いします。
羅:同じ海外籍スタッフとして、言語力はもちろんですが、実際に働いてみて感じたのは、国際的な視野を持っていることこそがグローバル人材の強みだと思います。皆さんがこれまで得た経験や価値観、考え方を糧にして今後は日本だけでなく世界中で活躍することを楽しみにしています。
橋本:先ほども少しお話したのですが、昨年の10月ごろからコロナ禍の変化に伴い外国からのゲストも徐々に戻ってきました。この夏ぐらいからコロナ禍前の状況に戻ってくるのではないかと予測されている中で、弊社も含め多くの企業がグローバル人材を求めています。オーストラリアでキャリアを積んでる人、また、グローバル人材を求めている企業に興味を持ってる人などは、需要があると思います。やりがいを感じられる仕事や職場を探して頂ければうれしいです。
─お二人ともありがとうございました。