巨額赤字決算は「粉飾」との指摘も
「ウーリーズ」の愛称でオーストラリア在住の邦人にも親しまれている同国のスーパー最大手、ウールワース。親会社のウールワース・グループは21日、ブラッド・バンドゥッチ最高経営責任者(CEO)が9月に退任し、アマンダ・バードウェル氏が同社初の女性CEOに昇進するトップ人事を発表した。
ただ、ウールワースとライバルの同業コールズをめぐっては、急激なインフレに見舞われた2022年以降に莫大な利益を計上していることから、「物価高に便乗して価格を吊り上げて儲けている」といった批判が高まっている。連邦上院でこの問題を審議する特別委員会が設置されるなど、矢面に立たされていた。
オーストラリアのスーパー業界を寡占している2社に対しては、競争が少ないことをいいことに、買い手の強い立場を利用して卸売価格を低く抑えているとの批判がこれまでたびたび噴出。議会でも追及されてきた。今回は、「消費者を犠牲にした便乗値上げ」の疑いにスポットライトが当たった格好だ。
減損処理で770億円の巨額赤字
この問題をめぐってバンドゥッチ氏は、先に放映された公共放送ABCテレビの報道番組に出演した際、インタビュー中に機嫌を損ねて退席するという失態を演じている。丁寧な説明から逃げ、企業イメージを損ねかねない行動だった。
加えて、同日発表した半期決算(23年7月〜同年12月)では、7億8,100万豪ドル(約770億円)の純損失(NLAT)を計上した。これは、不振のニュージーランド事業や21年に分社化して上場した酒販会社「エンデバー・グループ」の持ち株の評価損などを一時的要因として減損処理したためだ。
これを受けて、市場はオーストラリアを代表する企業の巨額赤字をネガティブ・サプライズと受け止めた。21日のオーストラリア証券取引所(ASX)で、ウールワース株は前日終値比で6.6%の急落となった。
ただ、一時的要因を除く税引き後純利益(NPAT)は前年同期比2.5%増の9億2,900万豪ドルの黒字を確保した。ABC(電子版)によると、この会計処理をめぐっては「ニュージーランド事業とエンデバーの減損処理については、データをちょっと粉飾した感がある」(オーストラリア競争消費者委員会=ACCCのアラン・フェルズ前委員長)との厳しい見方も出ている。インフレ便乗値上げでボロ儲けしたとの批判をかわすため、意図的に巨額の赤字を計上した可能性もくすぶっている。
■ソース
Half-Year Results Announcement, ASX Announcement(Woolworths Group)
Former ACCC boss takes aim at Woolworths’ profit ‘cover up’ and CEO’s ‘total failure’(ABC News)