20キロ離れた拠点からデジタル制御
2026年開港予定の西シドニー国際空港(WSI=ナンシー−バード・ウォルトン国際空港)には、離着陸する航空機をコントロールする管制塔がない。7日付の公共放送ABC(電子版)が伝えている。
新空港の航空管制は、約20キロ離れたイースタン・クリークに建設されるデジタル空港管制室(DAS)が行う。空港内の高さ45メートルの支柱に取り付けたカメラ20機から映像が送られた映像を11人の管制官が監視し、操縦士に指示を出す。
欧州などで運用、安全性は実証済み
航空管制と言えば、羽田空港で今年1月2日に起きた衝突事故では、管制官とパイロットの口頭でのコミュニケーション不足が一因との見方が出ている。管制塔がなくても安全性は確保できるのか?
専門家によると、従来の管制塔では目視で航空機の動きを確認するが、DASでは画面にコールサインや高度、速度などの情報が表示され、状況を即座に把握できる。遠隔管制技術は、すでに英国やスウェーデン、ドイツ、アルゼンチン、ブラジル、ハンガリー、ノルウェーで運用されており、安全性は実証済みだという。
二重三重の安全対策で非常時に対応
サイバー攻撃などの不測の事態が発生した場合はキャンベラ空港がバックアップに入るほか、カメラは1機ずつ別々の配線でつながれているため、故障しても他のカメラが即時に代替する。落雷や停電時の予備電源も確保している。
カンタス航空安全部門の元責任者であるロバート・バーチ氏がABCに述べたところによると、遠隔管制は15年前に開発された技術。世界で10カ所の空港で運用されており、安全性の向上と業務の効率化を同時に実現できるという。
「ほかの分野のテクノロジーの進化と同じこと。現代のパイロットは航路図を持ち歩きません。すべてアイパッドに入っています。銀行に行っても、今は従業員がほとんどいませんよね。その代わり、より多くのATMが設置され、利便性はむしろ増しています」(バーチ氏)
待望の第2空港、開港まであと2年半
シドニー都市圏で待望の第2国際空港となるWSIは2018年、シドニー市内中心部から西へ約45キロ(直線距離)離れたバジェリーズ・クリークで建設が始まった。事業主体は、連邦政府が100%出資する西シドニー空港公社。26年末に3,700メートル滑走路1本で開港するが、将来的にもう1本増設する構想があり、用地も確保している。
連邦・州政府は、シドニー西部をシドニー市内中心部と西部パラマタに次ぐ3つ目の中核都市と位置付け、新空港に隣接した新都市「エアロトロポリス」の整備も進めている。
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