チャーマーズ連邦財務相、7月の改定に向け要望
オーストラリア連邦政府が、7月改定の最低賃金をインフレに合わせて引き上げるよう求めている。オーストラリアの最低賃金は世界でも指折りの高水準にあるが、労組に近い労働党政権としては、物価上昇分を上回る実質賃金の上昇を着実に継続させたい考えだ。
オーストラリアの最低賃金は、連邦法務省が所管するものの独立した権限を持つ「公正労働委員会」(FWC)が決める。毎年、消費者物価指数(CPI)や雇用情勢などを考慮し、新年度が始まる7月1日に改定している。激しいインフレを背景に、今年度(2023年7月1日〜24年6月30日)の全国統一最低賃金(成人)は、前年度比で5.75%高い時給23.23豪ドル(約2,300円)とした。
オーストラリアはすでに世界で最低賃金が最も高い国の1つとなっている。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、オーストラリアの最低賃金は購買力平価(PPP)ベースで時給13.6米ドル(22年)とOECD加盟国中2番目に高い。
公共放送ABC(電子版)によると、ジム・チャーマーズ連邦財務相は「私たちはインフレ圧力が収まってきていることと、実質賃金が予測より早く上昇に転じたことを歓迎している。しかし、低所得者層を中心にたくさんの国民が(生活コスト高騰に)苦しんでいる」と述べ、最低賃金の大幅な引き上げを要求する方針を示した。
インフレは足元で落ち着いてきたものの、直近23年10-12月期のCPI上昇率は前年同期比4.1%と中銀目標の2〜3%を上回る。仮に来年度の最低賃金を4%引き上げた場合、週給(5日間)は35豪ドル程度、月給(20日間)は140豪ドル程度、それぞれ増える計算になる。
一方、政府は否定しているものの、過度な賃上げはインフレが止まらなくなる「賃金物価スパイラル」を招く可能性がある。人件費の負担が増えれば、事業者は商品やサービスの価格に転嫁させざるを得ないためだ。最大野党の保守連合(自由党、国民党)はこれまで、FWCの独立した意思決定に政府が介入すべきではないと主張。財界も著しい賃上げはインフレに油を注ぐだけだと批判してきた。
■ソース
Government pushes for minimum wage increase to keep pace with inflation(ABC News)
Minimum wages(Fair Work Ombudsman)
Real minimum wages. In 2022 constant prices at 2022 USD PPPs(OECD.Stat)