大型商用車のFCV普及に照準
シドニー拠点のベンチャー「ピュア・ハイドロジェン」は27日、水素で走る燃料電池自動車(FCV)のゴミ収集車1台をオーストラリア東部ニューキャッスル市にリースすることで合意したと発表した。1年間の試験運用を経て、オプションで4年間の契約延長が可能だという。
ピュア・ハイドロジェンが国内の自治体からFCVゴミ収集車の注文を受けたのは、南部アデレード市や北東部ゴールドコースト市などに続いて5例目。今回の契約で同社は、ニューキャッスル市から7万3,739豪ドルの手付金と、1年目の車両リース費27万豪ドルを受け取る。これとは別に水素燃料も同社が販売する。
同社は、クリーン・エネルギーで精製した水素供給網の整備を図る新興企業で、2013年にオーストラリア証券取引所(ASX)に上場。国内と海外の市場でバスやトラック、収集車など大型商用FCVの供給などを目指している。自治体へのゴミ収集車納品のほか、米飲料大手ペプシコと共同で大型トラックの供給も進めているという。今年下期には、車両の納品や注文の台数の詳細を発表する予定だ。
FCVは、水素と酸素の化学反応を利用して発電し、モーターを駆動して走るため、走行時に温室効果ガスを排出しない。再生エネのみを使用して精製した「グリーン水素」などを使用すれば、サプライチェーン全体で炭素ゼロにできるというメリットがある。
反面、充電インフラの整備が進むバッテリー電気自動車(BEV)と比べ、FCVは水素ステーションの整備が遅れていて、車両価格も高いことなどから、乗用車での普及は限定的にとどまっている。しかし、大型商用車では、BEVは充電時間の長さと航続距離の短さに難があるため、水素の充填に時間がかからずエンジン車と同様の距離を走れるFCVが有望との見方がある。
■ソース