損失額7,000億円以上との試算も
米国のドナルド・トランプ前大統領の再選は、遠く離れたオーストラリアにも大きな影響を与えそうだ。最も懸念されるのは、トランプ氏が公約通り対中関税を大幅に引き上げた場合、中国に鉄鉱石や石炭など多くの資源・エネルギーを輸出しているオーストラリア経済も打撃を受けるというシナリオだ。
トランプ氏は選挙戦で中国からの輸入品に60%、その他の国に10%の関税をかけると公約している。
経済紙「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー」によると、連邦財務省のスティーブン・ケネディー事務次官は6日、連邦上院委員会で米国の高関税策についてこう証言した。
「非常におおまかに言えば、関税のような貿易障壁は、経済成長を減速させインフレを増進させる。関税の著しい引き上げは、米国経済だけではなくオーストラリアにも波及効果をもたらす。オーストラリア産品に対する中国の需要(縮小)が、オーストラリアの成長にも影響を与えるだろう」
同紙によると、オーストラリア国立大(ANU)のウォーウィック・マックキビン教授(経済学)の試算では、トランプ氏が実際に60%の関税を中国製品に課した場合、オーストラリアの経済生産高は2035年までに0.3%縮小する。損失額は70億豪ドル(約7,100億円)に達するという。
「(米国の)対中関税引き上げによってオーストラリアは大きな打撃を受ける。オーストラリアは非常に多くの資源・エネルギーを中国の生産活動のために輸出している。米国が60%の関税を中国製品に課せば、私たちが中国に輸出している商品の需要に大きな打撃を与える」(マックキビン教授)
公共放送ABC(電子版)によると、アーサー・シノディノス前駐米大使も、高関税の応酬による貿易戦争が勃発すれば、貿易立国であるオーストラリアへの影響は避けられないと見ている。シノディノス氏は「貿易戦争になれば世界の貿易と投資に影響を与える。トランプ氏が関税政策をフルに実行した場合、中国経済への打撃はオーストラリアにも波及する」と指摘した。
■ソース
Trump win means higher interest rates and weaker Australian economy(Australian Financial Review)
What a second Donald Trump presidency might mean for Australia(ABC News)