再開禁止とデータ削除求める
ジョージ・オーウェルの未来小説「1984」を彷彿させるオーストラリアの監視社会に警鐘を鳴らした格好だ。プライバシー侵害を監視するオーストラリア情報管理局(OAIC)は19日、ハードウェア小売大手「バニングス」が防犯のために顔認証システムで個人情報を不正に取得していた事例について、プライバシーを侵害していたと認定した。
OAICのカーリー・カインド管理官(プライバシー問題担当)によると、バニングスは2018年11月〜21年11月の3年間、南部ビクトリア州と東部ニューサウスウェールズ州にある合計63店舗の入口に設置した防犯カメラで数十万人の顧客を撮影し、顔認証システムでブラックリストの不審者かどうかをチェックしていた。
顔認証システムの導入は、過去に店員に暴力を振るうなど違法行為を行い、「出入り禁止」となった顧客の入店を検知して排除するのが目的だ。しかし、OAICはバニングスが同意を得ずに固有の個人情報を入手したのは、連邦プライバシー保護法に違反すると指摘。プライバシーを侵害する行為を再開しないことと、顔認証システムで入手した個人のセンシティブな情報を削除することを命令した。
カインド管理官は、暴力や違法行為への対策として「顔認証技術は有益で便利だったかもしれないが、必ずしも擁護できない」と強調した。その上で同管理官は「私たちは顔を変えることはできない。連邦プライバシー保護法は、顔の映像と生体認証情報は細心の注意を持って取り扱い、取得する場合は同意を得るなどプライバシーを最大限に保護することを定めている」と違法行為を認定した理由を述べた。
この問題は22年、消費者団体「チョイス」の調査で明るみに出た。チョイスはバニングスだけではなく、ディスカウント小売大手「Kマート」、家電量販店「ザ・グッド・ガイズ」も顔認証システムを導入していたと告発した。これを受けて3社はシステムの稼働を停止した。公共放送ABC(電子版)によると、Kマートの事例については調査が継続中で認定はまだ出ていないという。
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